貧乏伯爵の三男(勇者?)は潜伏魔王に嫁ぐ

竜鳴躍

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止まない雨

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「雨、やまないなぁ。」


「この辺りは山が多いが、辺境では地滑りの心配は要らない。治水対策で事前に放流もしてるから洪水もなんとかなるだろう。災害とは未然に防ぐものだ。」

窓辺で雨を見ていたら、旦那様が近づいてきた。
スッと腰に手を置くから、聖剣が飛んできてペチペチしてる。


「ああっ!痛い!痛気持ちいい!浄化される!でも片目はまだ赤い目でいたい!」


セクハラしてはペチペチされてるからか、肌色はもう全然普通だし、髪の色もプラチナブロンド。


「なあ、ペチペチすりゃ浄化されるなら、なんで最初からやらなかったの?」

『愛する者をその手にかけたいなんて誰も思わないだろう?だが、あの頃なら魔王が消えたとしても容れ物となった者もともに消えただろう。何年もかけて魔王が弱体化したのと、アンリ殿の力が歴代一だからだ。根性で魔王を体内で抑え込んで、中では分離している状態だから、魔王だけ削れている、と思う。』


「ふうん。すごいんだね。」


「そう、私はすごいんだ。勇者のための勇者になって、ジルを一生守って幸せにするからね。」

不意打ちの額にキス。


「なにするんだっ」

「ふふふ、真っ赤。少しは意識してくれてるのかな?」


くそう、大人の余裕か!


かっこいいのに可愛くて、イケメンなんだから!


「そんなジルに報告です。来月の夜会への参加が認められました。」

「えっ。魔王関係で参加を認められていないんじゃなかった?」

「ちょっととあるルートを使ってね。陛下に魔王を浄化したことを報告したら許してもらえた。浄化ができるって分かるまでは、無理やり夜会に乗り込むつもりだったんだけどね。やっぱり正攻法がだろうしね。」


あー。

国一番の美女を婚約者にしたってイキってる王太子に目に物見せるために俺を娶ったんだったな。
そういや。

初めは俺連れて無理やり乗り込むつもりだったんかい。

「ほほほほ。」

レドモンド、レモネ、ブルースを背後に引き攣れ、セバスティアンと侍女のマリアさんを引き連れたマーガレットお義母様が颯爽と登場だ。


「ジルコニアさん。夜会は戦争よ。なので、みんなで王都に行きましょう。私が懇意にしているお店があるの。王家に嫁ぐまで実家で私の侍女をしてくれていた親友が嫁いだお店で、国一番の仕立て屋なのよ。今でも私を慕ってくれているのよ。こんなこともあろうかと先触れを出しておいたわ!みんなで王都に行きますよ!」

「丁度いい。ブリッジ伯爵家は陛下にお目通りしたことがないだろうから、伯爵家も連れて行こう。その間の管理はレドモンド、できるだろう?」

「お任せください。」

「まぁ!それじゃあ伯爵家の皆さんの衣装も整えないとね!」


「あの、お話はありがたいのですが、うちは貧乏で…。」


「大丈夫よ!ずっと夜会に出なかったのよ!お金はいっぱいあるから!それに、美しい殿方を着飾らせるのは楽しいわ。私に貢がせてちょうだい?」


……それならいいんですけど。






夜会かぁ。

やっぱ俺はドレスなんだろうな。




また旦那様の腕が腰にのびた。

ぺちぺち。


本当はそこまで嫌じゃないんだけど…。

ぺちぺちしたときのシュンとした表情が子犬みたいで…、つい厳しくしちゃう。

俺って鬼嫁?かなぁ。
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