貧乏伯爵の三男（勇者？）は潜伏魔王に嫁ぐ

なにしてるんですかアンタ

「旦那様！？何をなさっているのですか？旦那様は『マテ』ができないのですか？仕事はどうしたんですか？！」

ここは３階のだというのに魔法で空飛んで窓の外に張り付いてたら恐怖だろう。
たとえイケメンでも、だ！


「うぅ…。ジルが心配で心配で心配で…急ぎのものだけ終わらせてきた…。あとはセバスティアンたちに任せておけば大丈夫だから…。」

「まぁ、大公様ってお茶目な方ですのね。愛されてますわね、ジル！」

「愛されて素敵って言ってるんだろうけど、それとこれとは別。ずーっとスキスキって貼りつかれてたらしんどいの、学園に通う間くらい自由にさせてほしい。」

「ジルに捨てられる…！」

「捨てないから。愛してはいるから。どうどう。」


「ジル…♡やさしい♡」


「旦那様、旦那様はお義母様マーガレットをエスコートしてきてくださることになっていたでしょう？お義母様はどうしたんです？」

「母は、パール侯爵にエスコートをお願いしました。」


「お父様に？」

「私は邪魔者だそうですよ？」


ふーん。お兄様たちは恋愛に無関心だけど、お父様はもしかしてもしかするのか。
マーガレット様が押してるのか？

かなり頼りないところがあるお父様だけど、やるときゃやるし、前の夫と比べたらまだ頼もしく見えるのかもな…。
いやでも、マーガレット様は頼りないところがある男性が好みなのかもしれないし。
亡くなったお母さまもしっかり者だったってツァイ兄が言ってたし、互いにかけたところを補うくらいがちょうどいいのかな。


「ねえジル。お店の準備は私たちに任せていいから、開店まで大公様と回ってきたら？」

「そうしようかしら。ありがとう。」


何気にデートっぽい。

俺、青春してる？


旦那様の手がそこにあったから、指を絡めて繋いでみる。