【完結】美貌のオメガは正体を隠す

竜鳴躍

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クリスマス

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司法試験合格後のスケジュールはこうだ。

9月頭に合格発表、司法修習生の申し込み、事前課題の出題、11月に司法修習生の採用通知、課題の提出。
11月中旬~12月上旬に導入修習が終わって、12月中旬から7月下旬まで1ヶ月半くらいずつ民事裁判,刑事裁判,検察,弁護について学ぶ『分野別実務演習』。俺の場合は、7月下旬から1か月半くらい集合修習がまたあって、9月中旬から11月頭まで『選択型実務修習』といって、自分が希望する職での実務修習がある。

それが終われば、11月に二回目の試験があり、それで合格すれば、晴れて弁護士。

弁護士資格を得て、どこかの事務所にお勤めすることになるのだ。


だから、今は民事裁判について裁判所で演習中!


「…あっ、あのっ。今日はもう帰ります…っ。お疲れ様でした…!」

みんな働いているのに、帰るの…っ、帰りにくい!


「ああ、いいよ。蜂谷君はいつも頑張っているからね。お疲れ様。クリスマスくらいは早く帰るといいよ。」

「ありがとうございますっ!」


コートを着て、カバンを持って。

電車に乗ってスカイツリーまで向かう。

押上駅で待っててくれるって。


髪、へんじゃないかな?

窓に映った自分の顔と髪を確かめる。うん、よし。






蜜瑠はとても忙しい。

司法修習中なので当たり前だ。

押上駅の改札前で待っていたら、たったったと、息を切らしてやってきた。

「ま、待った?ごめん。」


「ううん、時間通りだよ。」

もこもこのダッフルコートに、スラックス。

中は、スーツなんだろう。


「本当はもうちょっとおしゃれしたかったんだけど…。北村と歩いてると浮いちゃうかな…。」

「蜜瑠はきれいだよ。今度は俺もスーツにしようかな。大人っぽくていいじゃん。」

真っ赤になる蜜瑠の手を引いて、スカイツリーに上った。


蜜瑠は子どもの頃からあまり外に出たことがないんだろう。
展望台に上る綺麗なエレベーターも、あっという間につくことも、興味津々で、目がキラキラしていた。

せっかくだから上の方までのぼって、夜景を見るその顔はものすごくかわいくて。


思わず、頬にキスを。


「ひゃ!」


「ご、ごめん。つい。もう、しないから…。」


「………。ううん、して、いい。」


「え…っ。」


「キス、していい。今度は、口にして。」



それって。


「俺と、付き合ってくれるの?」



こくっと、頷いて、かわいいつむじが見えた。


「付き合うけど、ちゃんと結婚して、番になるまではエッチなことはしないから!」

蜜瑠の中では、結婚が先なんだな。蜜瑠らしい。


「わかったよ。ありがとう。今日は二人の記念日だね。」







頬にキスされて、びっくりしたけど。でも、全然嫌じゃなくって。
できれば……ちゃんと唇にしてもらいたかった。

お付き合い、することになって。


他のお客さんに見えないように、こっそり柱の影で今度は唇に軽いキスをした。


触れ合うようなキスだったけど、すごくドキドキして。

北村………拓海は、嬉しそうだった。

2人の記念日だって言って、手を繋いでショップに入ってメダルを購入するから、どうするのかと思ってたら、外の刻印機で『TAKUMI♡MITURU』って刻印したものを2つ作って。1個、くれた。


恥ずかしい…。けど、嬉しい!




展望台の後は、ソラマチの31階のレストランが予約されてて。

景色を見ながらディナーをした。

2人で過ごす初めてのクリスマス。

初めての恋人とのクリスマス。


「………あ!」

外は、ちらちらと雪が降り始めた。












外は雪。クリスマスなのに。せっかくのホワイトクリスマスなのに。

最近、氷室さんは会ってくれない。

仕事が忙しいだけだよね?そうだよね?

芸能人だから、私、ちゃんと匂わせもしないで我慢してるんだよ?

私って、いい彼女でしょ?


私に飽きた?

そんなことないよね。


暗い部屋で、ひたすら氷室さんからのメールや電話やLINEを待って蹲る。

「氷室さん、氷室さん、氷室さん……っ!!」


やって来たヒートは、終わってしまった。


次のヒートの時期は言わないで、私から誘ってしまおう。

そして………。ふふふ……。


「氷室さんも私とのかわいい赤ちゃん、欲しいよね?」

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