【完結】美貌のオメガは正体を隠す

竜鳴躍

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近づくバレンタインデー

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世間はバレンタインデー。

演習帰りに街を歩くと、お店のポップ。

フラッと店内を見渡せば、色とりどりのチョコレートが華やいで。



今まではお客さん用にチョコレート買ってたなあ。

お世話になったし、今年も買おう。
お店に置いてもらって、ママから渡して貰おうかな。メッセージカードを添えて。

バレンタインデーはキラキラしてる。
この時期のチョコレートは美味しいから、自分用もいいよね。

今年は父さんにも送ってあげよう。
西野や、紀里谷先生にも。
あ、でも紀里谷先生には微妙かなあ。
でも、すっごくお世話になったんだし。
西野経由で渡してもらえば、思わせぶりじゃないよね。


ふと、手作りコーナーが目に入る。


やっぱり、拓海には………。


ドキドキしながら、買い物カゴに入れた。



今まで作ったことがないから、本屋に寄ってレシピ本を買おう。

特別、なんだからな!

ふふっ、びっくりするかなあ。


バレンタインデーは週末。

ウキウキしながらLINEする。


『バレンタインデー、会える?』

『もちろん!誘うつもりだったんだよ!』

『俺の家に来て?』

『いいの?』

『うん。』

『楽しみ。』


ふふっ。驚くかな。喜ぶかな。





「やった!」

「どうしたのよ。」

講義室で小さくガッツポーズをとる北村を、西野はニヤニヤ眺めた。

兄には残念だけど、順調そうね。


「バレンタインデー、蜜璃んちでお家デート。しかも蜜璃からのお誘い!」

「おめでとう。信頼されてるわねえ。」


「拓海。」

「花梨?」

久々の花梨に、目を丸くする。
最近、ようやく諦めたのか、自分の周りに来なかったのに。


「今週末、会えない?相談したいことがあるの。」

「今じゃだめなの?」

「………好きな人ができたの。それで。ここではちょっと。二人で話したいから、家に来てほしいの。いいでしょ、家には両親もお手伝いさんもいるんだから。」

「分かった。でも予定があるから、午前中なら。」

「ありがとう。じゃあ10時ね。待ってるから。」


なんかどことなく元気がない。
顔色が悪い。

幼なじみとして相談に乗るくらいいいか。


その時はそう思っていた。
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