生まれてすぐ劣等種と追放された俺が他国の王子の番として溺愛されて幸せになるまで

竜鳴躍

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許せない

「パレード?」


次の日の朝、冒険者ギルドに行くと受付嬢のサンドラから聞かされた。


「そうなの。この国の次の王を決める王子同士の選抜戦?みたいなものをするから、参加する王子たちが国民に向けて今からパレードがあるのよ。王子のお母様の国はそれはもう自分たちの力を鼓舞するために、ここぞとばかりに派手なパレードをするから、ちょっと見物。私たち庶民には関係ないから、できれば家に引きこもっていたけどね、不敬と言われたくないし。遠目からとりあえず手を振らなくちゃなのよ。まったく、腕が疲れるわ。」


王子達のパレード、か。

レオは王子の中でまともなのは獣人の王子だけだって言ってたっけ。


俺には関係ないけど、彼らが俺の兄だっていうのなら、一目だけでもどんな奴らか見てやってもいいかもしれない。


「レノも、こないだ大物しとめたから暫くゆっくりしてたんだろうけど、運がよかったわね。家で引きこもってたら不敬で憲兵に捕まってたんだから。だから、今日はクエストに行ってもいいけど、パレードが終わってからにしてね。」


……と、話している間に遠くからパレードの音が聞こえてきた気がする。


「大変!みんな、表に出て!!」


みんなでわさわさと表に出た。

人が多くて、ぎゅうぎゅうだ。


「……ん?お前、匂い…。獣人の番だったのか、お前。」

いつも馬鹿にして、俺を遊び相手に誘うトカゲに獣人が後ろにいた。


「あっ、本当だ。しかも凄い相手じゃん。運が良かったな、なかなか俺達でもお目にかかれないクラスだぞ。玉の輿じゃねえか。うまくやって、可愛がられろよ。ヒトがずっと冒険者やってて、碌なことにはならないんだからさ。」

今度はチーターの獣人。

獣人には匂いで分かるんだな。

「やっぱわかるんだ。なんか、マーキングしたから他のやつらに狙われることないって言ってたけど。」

「ああ。獣人じゃなくても分かるんじゃないかな。なんかバリアじゃないけど、そんな感じ、感じるらしいから。何にもわかんないのはヒトだけだろうけど、まあヒト相手だったらお前なら大丈夫だろ。」





「ハッハッハッ!私はペネ!魔族の王子である!次代も王位は魔族がいただくッ!」

淫魔の血を継ぐペネは周囲に魔族の従者を引き連れて、華美な装飾が施された漆黒のオープンカーの上から手を振る。黒い翼を広げ、紫色の髪の片眼鏡の男が眼鏡を外すと、老若男女が失神した。


「きゃあ!」


目の前の人たちがバタバタと倒れて、サンドラがぽつんとその場に残された。


「…ん?豹の獣人の娘か?私の魅了の射程内のはずなのだが、効かなかったとは。」

ペネが車を止めて、固まって立ち尽くすサンドラの前に来た。


「……あああ、あう…。」


くいっと顎を掴んで顔を見る。


「特異体質か。なかなか美人だ。おい、この娘を連れて行くぞ!」


助けたい、がどうしようか考えていると、集団の中から、ギルドマスターが飛び出した。


「お許しください、ペネ王子!娘の不始末はこの私が死によって償いますから!」


「何を勘違いしてるのかな?気に入ったから遊ぶだけだよ。飽きたら返すから。でも、死にたいなら殺してあげよう。」


叫び声をあげられず、抵抗できずにサンドラは泣いていたが、王子を振り切ってひれ伏す父の前に出た。


「どけ!邪魔だ!」


「きゃあ!」

振り払われてサンドラが尻もちをつく。


――――――――――――――その拍子に、彼女から耳と、尾が外れた。

皆もざわつく。

確かにギルマスは獣人だ。獣人の爪と牙で獣化して敵を倒すのを見たことがある。
だけど、サンドラは受付だけで。

ヒトの子を獣人が育てていたのか。獣人と偽って。

だから、ギルマスもサンドラも俺たちに優しかったんだ!



「なんだ、お前ヒトか。」

ペネ王子の目が冷たい。


「なんだなんだ、お前が前に行かぬから、後ろがつっかえているのだ!――――と。ヒトの娘ではないか。」

ストレートの金髪を肩で切りそろえたエルフの王子がやってきた。


「魅了が効かない特異体質だ。気に入ったがヒトだったから私の奴隷にしようと思ってな。」


「……ヒッ!」

「そんな!ヒトでも、血が繋がっていなくても。大切な娘なんです!ご容赦を!!………グハッ!」

ギルマスをエルフの王子が蹴とばした。


「お前は何を言ってるんだ。ヒトなどといった劣等種。奴隷で当たり前だろう?ペネ、さっさとそのヒトを連れて進め。邪魔だ。」


「ああ、……お前は帰ったら早速いただくとしようか。散々遊んで、子どもを孕んだら殺してあげよう。ヒトとの子などいらないからな。」


「いやあぁあ、いやああ!」

「サンドラ!!」


もう、黙ってみてられねぇ!後のことはどうでもいい、確かに俺の兄は下種だ!

飛び出そうとした俺を、黒ローブの男―――レオが掴んだ。


「離せっ!レオ!あの人たちは俺の大切な―――」

「待て。あの人が助けてくれる。」




「ペネ!クラリス!それが今から王になろうとする者のふるまいか!」


凛とした声。
獅子の耳に、獅子の尾。

騎士のような装束に、鍛えられた体躯。

あれが、獣人の王子。



「…くっ、ライオス…!」


「立てるか?」

「あ、ありがとうございますっ!」


ライオス王子は周りを一喝すると、ギルマスを立ち上がらせた。


「我が獣人の男をこのような目にあわせ、その男が愛する娘を理不尽に奪うとは。ヒトであれば何をしてもいいわけではないッ!そのような男を民が王と崇めると思うてか!」


ぐぐぐっ、と王子達は悔しそうな顔をする。


解放されたサンドラは、ライオス王子が保護し、そしてパレードは再開した。





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