14 / 49
あの隣に立ちたい
しおりを挟む
ファッション誌の撮影が終わったら、次は女性誌のグラビアだ。
同じスタジオで、着替えている間にカメラマンが交代する。
「夏目君良かったよ!夏目君とやると仕事が早いからたすかるよ!またよろしくね!」
「斎藤さん、ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします。」
「斎藤も抜け目ないなぁ。君の来年のカレンダーか写真集のカメラマン、狙ってるんじゃないかなぁ。というわけで、僕もよろしくね。」
「ふふふ。光栄です。赤塚さん、よろしくお願いします。」
***
「ふぅ、さすが僕の夏目太陽。カッコいいのも可愛いのもどっちも好きでしょ無双状態。むふふ。我が太陽はどの属性もイケる子やでぇ…。」
「だらしないカオしてんな、みっともな!」
「げっ、豊。」
「俺の天使が相方の仕事現場を見学したいっていうから来たんだ。」
「あ、冬木さん。」
暗いスタジオの中。
そこだけが明るかった。
いや、僕だって子役時代は色々やったから、こういう現場も知ってる。
だけど、ひときわキラキラと光ってたんだ。
「かっこいいでしょ、夏目さん。さっきファッション誌が終わって、今度は女性誌のグラビアだからね。ちょっとセクシーなのも撮るよ?読者サービスってやつね。うちの夏目は優秀だから、撮影もパって終わっちゃうの。だから見逃したら損するよぉ?」
セクシー…。
「夏目くん、今日は同居してる彼氏って設定ね!甘くて、ちょいセクシーな感じで。」
「オッケーです。少し肌見えてもいいですよね?」
「陰部が出てなければオッケーかな。あ、ムダ毛はない方が無難か。」
「ムダ毛はないですし陰部も出さないのでオッケーです。もう、赤塚さんは~。セクハラですよ?」
……あ。
たぶん、今、役に入った。
結婚を前提に同棲しているカップル。
一緒に料理してキッチンに立ったり、甘えた姿だったり、ベッドでごろごろしたり…。
相手役なんか見えないのに。
小柄で、可愛らしい女性が見える。
この人の隣に、たちたい。
『相手』になりたい。
かたっ。
あ。スタジオの中に無造作に組まれた櫓に足を引っかけてしまった。
シャッター音が止まる。
僕を見つけて、目をまあるく。綺麗な笑顔。
「香月!ごめんなさい、ちょっと休憩で!」
緩めにシャツを着崩した、『男』の色気が漂う彼。
「見学に来てくれたんだ。嬉しい。」
「………。」
何をどう話せばいいのかな?
「邪魔してごめんなさい。帰りますね。」
「あれ?その人って確か夏目君の今やっているアニメ映画の相手役の…………。もしよかったら、冬木さんも一緒にグラビア出ませんか?(出版社もOK出すに決まってる!逃がすもんか!よーし、速攻でLINEで確認だ!はぇぇえ、もうGOの返事キタァ!)そちらの方はマネージャーさんですよね?今出版社に聞いたら、もしよければ是非にと。いかがでしょう。」
「うちの天使をグラビアに、ですか…。」
「香月、無理ならいいけど、出たいなら俺がついてるから大丈夫だよ、任せて。」
「それなら………出たい。」
「香月は月。俺が太陽。ミステリアスな月に焦がれる。そんな感じでどうでしょう。」
「いいね。BLモノでしょ?じゃあちょっと妖しい感じで絡んでみようか。雰囲気出して。」
「香月…。」
「太陽…。」
シャッター音なんか気にならない。
兄さんも秋月さんも、カメラマンさんも。
誰もいない。
太陽の指が僕の頬に触れ、体が密着する。
僕を求めるような、しっとりとした熱いまなざしが、僕の視線を絡めとる。
ほしい。
僕も。
誰にも渡したくない。
同じスタジオで、着替えている間にカメラマンが交代する。
「夏目君良かったよ!夏目君とやると仕事が早いからたすかるよ!またよろしくね!」
「斎藤さん、ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします。」
「斎藤も抜け目ないなぁ。君の来年のカレンダーか写真集のカメラマン、狙ってるんじゃないかなぁ。というわけで、僕もよろしくね。」
「ふふふ。光栄です。赤塚さん、よろしくお願いします。」
***
「ふぅ、さすが僕の夏目太陽。カッコいいのも可愛いのもどっちも好きでしょ無双状態。むふふ。我が太陽はどの属性もイケる子やでぇ…。」
「だらしないカオしてんな、みっともな!」
「げっ、豊。」
「俺の天使が相方の仕事現場を見学したいっていうから来たんだ。」
「あ、冬木さん。」
暗いスタジオの中。
そこだけが明るかった。
いや、僕だって子役時代は色々やったから、こういう現場も知ってる。
だけど、ひときわキラキラと光ってたんだ。
「かっこいいでしょ、夏目さん。さっきファッション誌が終わって、今度は女性誌のグラビアだからね。ちょっとセクシーなのも撮るよ?読者サービスってやつね。うちの夏目は優秀だから、撮影もパって終わっちゃうの。だから見逃したら損するよぉ?」
セクシー…。
「夏目くん、今日は同居してる彼氏って設定ね!甘くて、ちょいセクシーな感じで。」
「オッケーです。少し肌見えてもいいですよね?」
「陰部が出てなければオッケーかな。あ、ムダ毛はない方が無難か。」
「ムダ毛はないですし陰部も出さないのでオッケーです。もう、赤塚さんは~。セクハラですよ?」
……あ。
たぶん、今、役に入った。
結婚を前提に同棲しているカップル。
一緒に料理してキッチンに立ったり、甘えた姿だったり、ベッドでごろごろしたり…。
相手役なんか見えないのに。
小柄で、可愛らしい女性が見える。
この人の隣に、たちたい。
『相手』になりたい。
かたっ。
あ。スタジオの中に無造作に組まれた櫓に足を引っかけてしまった。
シャッター音が止まる。
僕を見つけて、目をまあるく。綺麗な笑顔。
「香月!ごめんなさい、ちょっと休憩で!」
緩めにシャツを着崩した、『男』の色気が漂う彼。
「見学に来てくれたんだ。嬉しい。」
「………。」
何をどう話せばいいのかな?
「邪魔してごめんなさい。帰りますね。」
「あれ?その人って確か夏目君の今やっているアニメ映画の相手役の…………。もしよかったら、冬木さんも一緒にグラビア出ませんか?(出版社もOK出すに決まってる!逃がすもんか!よーし、速攻でLINEで確認だ!はぇぇえ、もうGOの返事キタァ!)そちらの方はマネージャーさんですよね?今出版社に聞いたら、もしよければ是非にと。いかがでしょう。」
「うちの天使をグラビアに、ですか…。」
「香月、無理ならいいけど、出たいなら俺がついてるから大丈夫だよ、任せて。」
「それなら………出たい。」
「香月は月。俺が太陽。ミステリアスな月に焦がれる。そんな感じでどうでしょう。」
「いいね。BLモノでしょ?じゃあちょっと妖しい感じで絡んでみようか。雰囲気出して。」
「香月…。」
「太陽…。」
シャッター音なんか気にならない。
兄さんも秋月さんも、カメラマンさんも。
誰もいない。
太陽の指が僕の頬に触れ、体が密着する。
僕を求めるような、しっとりとした熱いまなざしが、僕の視線を絡めとる。
ほしい。
僕も。
誰にも渡したくない。
応援ありがとうございます!
158
お気に入りに追加
356
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる