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閑話 チャールズ=バリューという少年
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「クレア!」
「マリー!」
真っ白な髪に白い肌をして、凛と背筋の伸びた美しい女性はマリー=ホワイト様というらしい。
お母様と仲良しで、元々はお母様のお兄様に頼まれて、お母様とお友達になったんだけど、今では本当に親友と呼べる仲になったらしい。
マリー様には、僕と同じ年の男の子がいるんだって。
女性だけど侯爵として当主なんだって。
凄い人だなって思う。
夏の暑い日でも、マリー様は長袖で手袋だ。
肌を見せない。
怪我をしているわけではないけれど、自分以外のものに直に振れることができない、精神的な病なのだと自嘲するように笑っていた。
僕とお母様とマリー様がお庭でお茶をしていたら、ひょこっとレインのひよこ頭が顔を出した。
金髪に青い眼で、僕よりずっとお父様にそっくりのレイン。
僕より1か月だけ年下の男の子。
お父様と違うお母様との間に生まれた男の子。
レインはとっても可愛いお顔をしていて、絵本の王子さまみたいなの。
「おにいさま、おにいさま。さがしてもいないから、どこにいったかとおもった。クレアおかあさまとごいっしょだったの?」
「うん。ごめんね。」
「おにいさまと一緒にご本がよみたかったのに。」
レインは、お父様に買ってもらった絵本をもってきていた。
殆ど同い年のレインだけど、レインは人懐っこい性格をしていて可愛いんだ。
ほっぺをぷうと膨らませている。
僕は、嫡男だからという理由で厳しく育てられている。
まだ5歳だけど、学園で習う課題。
お母様が王族だから、ちゃんとしなきゃいけないって。
絵本を買ってもらえて、年相応に遊べる無邪気な弟がちょっとうらやましい。
「いらっしゃい、レイン。おてては綺麗かしら?」
「はい!まだ綺麗です!」
「そう、よかった。じゃあ、一緒にちょっとおやつを食べたら、チャールズと遊んでくれると嬉しいわ。チャールズも、私たちの目が届く範囲にいてくれるのなら大丈夫よ。」
「「はあい。」」
母親同士は微妙な関係だったけど、兄弟仲は悪いわけじゃなかった。
俺はその時、うっすらと聞こえる会話をきちんと理解できていなかったけど、後から理解した。
「ねえ、クレア。貴方のお兄様が心配なさっているわ。」
「そうね。いい加減、お花畑だった私も理解しているわ。この家では私とあの子は邪魔もので家族じゃないの。私が王女で人質だから表面上は大切にしてもらえているだけ。あの人、顔だけはいいでしょう?騙されたのよね。今にして思えば、わざわざ帝国に商談に来てパーティに入り込んで、最初から私のことを狙っていたのよね。まんまとだまされちゃったわ。駆け落ちみたいにこんなところまで来ちゃった。でもね、あの子がいるもの。」
「クレア。貴方が決心してくれるなら、私、いつだって力になれるのよ?だてに女侯爵をやっているわけじゃないんだから。」
「私があの人を信頼できなくなったとしても、私とあの人の子であることに変わりないの。父親がそんな人だなんて、あの子に思ってほしくないわ。嘘でも愛し合ってできた子だってつきとおして、私一人でもあの子を守っていくわ。」
それから5年経って、母はだんだん体が弱くなって、感染症かもしれないからって俺たちは隔離されて。
俺は、お母様の看病をした。
時々、レインが窓の外から俺を見て悲しそうな顔をしていたけど、「病気が移るかもしれないから!」と言われて連れていかれて。
さらに3年経って、母が死んで、俺は一人になった。
母は葬儀もなく、すぐに墓地に埋められた。
離れから本宅に戻されたけど、父は俺と目を合わさない。
そして、義理の母と父の会話を聞いてしまった。
レインの母が、俺の母を殺した。
俺と母は人質だった。物同然だった。
俺は、自分の部屋に軟禁された。
愛想の悪い侍女が、最低限の世話はしてくれたけど、食事はサラダとパンだけだった。
たまに部屋に突っ込まれているハムは、きっとレインだと思った。
野良猫にやったと嘘をついていたが、こんなことをしていたらレインが折檻されてしまうかもしれない。
だから、自分から弟を捨てた。
誰も来ない。
父は来ない。
俺はいない。いないも同然。
そんな時に、俺の部屋の窓に女侯爵が現れた。
まるで、月の女神のように。満月の晩に。
家出したと見せかけて、俺は侯爵の手をとった。
侯爵は仕事で月に一回、あちこちの領地を自ら巡回していた。
最初の数か月は知り合いの商家に預けられた。
あれは、俺がいなくなった時期を誤魔化すためだったんだろう。
そして、養子の手続きをして、ホワイト侯爵家に俺は来た。
「チャーリー大好き!かわいい!」
ぎゅっと抱き着いてくるリリー。
自分が捨てたレインの笑顔を思い出して、胸が苦しくなった。
そんな時に、いたいのいたい、とんでけーとおまじないをしてくれると、ちょっと楽になった。
ドジでおっちょこちょいのリリー。
ずっと、俺が、俺の手で守っていきたい。
「マリー!」
真っ白な髪に白い肌をして、凛と背筋の伸びた美しい女性はマリー=ホワイト様というらしい。
お母様と仲良しで、元々はお母様のお兄様に頼まれて、お母様とお友達になったんだけど、今では本当に親友と呼べる仲になったらしい。
マリー様には、僕と同じ年の男の子がいるんだって。
女性だけど侯爵として当主なんだって。
凄い人だなって思う。
夏の暑い日でも、マリー様は長袖で手袋だ。
肌を見せない。
怪我をしているわけではないけれど、自分以外のものに直に振れることができない、精神的な病なのだと自嘲するように笑っていた。
僕とお母様とマリー様がお庭でお茶をしていたら、ひょこっとレインのひよこ頭が顔を出した。
金髪に青い眼で、僕よりずっとお父様にそっくりのレイン。
僕より1か月だけ年下の男の子。
お父様と違うお母様との間に生まれた男の子。
レインはとっても可愛いお顔をしていて、絵本の王子さまみたいなの。
「おにいさま、おにいさま。さがしてもいないから、どこにいったかとおもった。クレアおかあさまとごいっしょだったの?」
「うん。ごめんね。」
「おにいさまと一緒にご本がよみたかったのに。」
レインは、お父様に買ってもらった絵本をもってきていた。
殆ど同い年のレインだけど、レインは人懐っこい性格をしていて可愛いんだ。
ほっぺをぷうと膨らませている。
僕は、嫡男だからという理由で厳しく育てられている。
まだ5歳だけど、学園で習う課題。
お母様が王族だから、ちゃんとしなきゃいけないって。
絵本を買ってもらえて、年相応に遊べる無邪気な弟がちょっとうらやましい。
「いらっしゃい、レイン。おてては綺麗かしら?」
「はい!まだ綺麗です!」
「そう、よかった。じゃあ、一緒にちょっとおやつを食べたら、チャールズと遊んでくれると嬉しいわ。チャールズも、私たちの目が届く範囲にいてくれるのなら大丈夫よ。」
「「はあい。」」
母親同士は微妙な関係だったけど、兄弟仲は悪いわけじゃなかった。
俺はその時、うっすらと聞こえる会話をきちんと理解できていなかったけど、後から理解した。
「ねえ、クレア。貴方のお兄様が心配なさっているわ。」
「そうね。いい加減、お花畑だった私も理解しているわ。この家では私とあの子は邪魔もので家族じゃないの。私が王女で人質だから表面上は大切にしてもらえているだけ。あの人、顔だけはいいでしょう?騙されたのよね。今にして思えば、わざわざ帝国に商談に来てパーティに入り込んで、最初から私のことを狙っていたのよね。まんまとだまされちゃったわ。駆け落ちみたいにこんなところまで来ちゃった。でもね、あの子がいるもの。」
「クレア。貴方が決心してくれるなら、私、いつだって力になれるのよ?だてに女侯爵をやっているわけじゃないんだから。」
「私があの人を信頼できなくなったとしても、私とあの人の子であることに変わりないの。父親がそんな人だなんて、あの子に思ってほしくないわ。嘘でも愛し合ってできた子だってつきとおして、私一人でもあの子を守っていくわ。」
それから5年経って、母はだんだん体が弱くなって、感染症かもしれないからって俺たちは隔離されて。
俺は、お母様の看病をした。
時々、レインが窓の外から俺を見て悲しそうな顔をしていたけど、「病気が移るかもしれないから!」と言われて連れていかれて。
さらに3年経って、母が死んで、俺は一人になった。
母は葬儀もなく、すぐに墓地に埋められた。
離れから本宅に戻されたけど、父は俺と目を合わさない。
そして、義理の母と父の会話を聞いてしまった。
レインの母が、俺の母を殺した。
俺と母は人質だった。物同然だった。
俺は、自分の部屋に軟禁された。
愛想の悪い侍女が、最低限の世話はしてくれたけど、食事はサラダとパンだけだった。
たまに部屋に突っ込まれているハムは、きっとレインだと思った。
野良猫にやったと嘘をついていたが、こんなことをしていたらレインが折檻されてしまうかもしれない。
だから、自分から弟を捨てた。
誰も来ない。
父は来ない。
俺はいない。いないも同然。
そんな時に、俺の部屋の窓に女侯爵が現れた。
まるで、月の女神のように。満月の晩に。
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侯爵は仕事で月に一回、あちこちの領地を自ら巡回していた。
最初の数か月は知り合いの商家に預けられた。
あれは、俺がいなくなった時期を誤魔化すためだったんだろう。
そして、養子の手続きをして、ホワイト侯爵家に俺は来た。
「チャーリー大好き!かわいい!」
ぎゅっと抱き着いてくるリリー。
自分が捨てたレインの笑顔を思い出して、胸が苦しくなった。
そんな時に、いたいのいたい、とんでけーとおまじないをしてくれると、ちょっと楽になった。
ドジでおっちょこちょいのリリー。
ずっと、俺が、俺の手で守っていきたい。
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