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クロス王国の血
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俺は景品のように玉座の上に拘束される。
「ブルック……。」
あんなにボロボロなのに、あいつに勝負を挑むなんて。
「勝負は伝統どおり、素手格闘だ。この身ひとつ。真に種族最強の男がリーダーとなる。」
俺に有利だ。とシリウスが笑う。
「ああ、構わない。」
「では、両者、始めッ!」
正直、勝算などない。
スピードもパワーも、あいつが上。
でも、負けられない。
シンやキィを守りたい。
せっかくの共存の道を閉ざしたくない。
シリウスは余裕だ。
本気でない彼の拳や蹴りを必死に避ける。
「ホラホラ、どうした!? もうバテてきたか?」
シリウスの蹴りの風圧で、シャンデリアがギシギシ揺れる。
「…くっ!!」
「…まずは、右腕。」
「アァァアアアアアアアッ!」
シリウスが簡単に右腕を千切る。
「ブルック……!!!」
シンの泣き叫ぶ声が聞こえる。
2人の戦いの激しさで、彼らの頭上のシャンデリアもぼろぼろで、かろうじて天井に引っかかっている。
「はぁはぁ…はぁ。しぶといヤツだが、もうさすがに立てないだろう。…俺の勝ちだ。」
ブルックの体はあちこち傷つけられ、肩で息を切らし、体力の限界が来たのか、歩き方もおかしい。
だが。
「あぁああ、……あぁっ、いやだ…そんな…ブルック…。」
シン王が悲しみに嗚咽を漏らす。
にやりと笑うシリウスの眼前に倒れている男は、右腕と左足、左目と右耳を失って大量に血を流し、床に倒れ。
かろうじて息はしているものの、助からない傷を負っている。
ーーーーーーーーああ、あんなに番を泣かせて。
大事な人もその人の大事なものも守れなかったなんて。
彼は、俺の本物の運命の番だったのに。
シリウスがあの人を大事にするわけがない。
シリウスはきっと、あいつがお母さまにしたように、扱うはずだ。
それなのにーーーーーー。
在りし日の、母を思い出す。
『おかあさま!おかあさま!!』
人間にしてはお母さまもかなり大柄な男だったけれど、それでも3メートル近い男にいいように嬲られれば、行為の後は悲惨だった。
受け入れさせられたその場所はもちろん、内臓に傷もつく。
衛兵に連れられて、部屋のベッドに投げ捨てられた母の世話をするのは、いつも俺だった。
母は、俺たち二人になると、魔法を使った。
『コンプリートキュア。』
母は腐っても宗教国クロス王国の王子だ。
回復魔法がなければ、もっと早く死んでいただろうし、俺を産むこともできなかっただろう。
『お母さまぁ…!!』
『…心配させてごめんな。いつもいつも…。大丈夫だよ。』
『でも、お母さま!そんなすごい回復魔法は、すごく疲れるんでしょう!?…どんどん、体力がなくなってるきがする。』
お母様は、俺を優しくなでで、笑った。
『本当はお前を連れて、ここから逃げられたらよかったんだけどな…。契約の力が強すぎて逃げられない。俺は多分、長く生きられない。』
『ぼくが、回復出来たらよかったのに…。』
『回復魔法は、大事な人を思う心がないと使えないから。まだ無理かな。』
『ぼく、お母さまが大事だよ!』
『ありがとうね。』
魔法は想いの力。
回復魔法は、死に瀕して目覚める。
愛する者を残して死ねない、そう思うこころ。
そのとき、ブルックの中で弾けた。
「…なっ、ばかなっ!!?」
ブルックの体が淡く光り輝き、失った体の組織が再生していく。
「コンプリート・キュア………!!!」
「ブルック…!!」
「シリウス、お前を倒してリーダーになるのは俺だ……!!!」
ブルックはシリウスに向かって突進し、拳を突き上げて天井へ飛ばす。
「ブヘッ……!!!!」
シャンデリアは揺れ、「ギャアアアアアアアアアアアアアアア!!!」――――シリウスに刺さる。
シリウスは絶命した。
「…ブルック!!」
シン王が涙に濡れた瞳でブルックを見る。
ブルックに触れたい。
早く抱きしめたい。
抱きしめてほしい。
「新しいリーダーだ!」
「リーダーはブルックに決まりだ!」
シルバーウルフの正式な王が決まった瞬間だった。
「……まったく、俺も早く誰か見つけよう…。」
ブルックとシンが抱擁し、エンは片隅で見守っていた。
「ブルック……。」
あんなにボロボロなのに、あいつに勝負を挑むなんて。
「勝負は伝統どおり、素手格闘だ。この身ひとつ。真に種族最強の男がリーダーとなる。」
俺に有利だ。とシリウスが笑う。
「ああ、構わない。」
「では、両者、始めッ!」
正直、勝算などない。
スピードもパワーも、あいつが上。
でも、負けられない。
シンやキィを守りたい。
せっかくの共存の道を閉ざしたくない。
シリウスは余裕だ。
本気でない彼の拳や蹴りを必死に避ける。
「ホラホラ、どうした!? もうバテてきたか?」
シリウスの蹴りの風圧で、シャンデリアがギシギシ揺れる。
「…くっ!!」
「…まずは、右腕。」
「アァァアアアアアアアッ!」
シリウスが簡単に右腕を千切る。
「ブルック……!!!」
シンの泣き叫ぶ声が聞こえる。
2人の戦いの激しさで、彼らの頭上のシャンデリアもぼろぼろで、かろうじて天井に引っかかっている。
「はぁはぁ…はぁ。しぶといヤツだが、もうさすがに立てないだろう。…俺の勝ちだ。」
ブルックの体はあちこち傷つけられ、肩で息を切らし、体力の限界が来たのか、歩き方もおかしい。
だが。
「あぁああ、……あぁっ、いやだ…そんな…ブルック…。」
シン王が悲しみに嗚咽を漏らす。
にやりと笑うシリウスの眼前に倒れている男は、右腕と左足、左目と右耳を失って大量に血を流し、床に倒れ。
かろうじて息はしているものの、助からない傷を負っている。
ーーーーーーーーああ、あんなに番を泣かせて。
大事な人もその人の大事なものも守れなかったなんて。
彼は、俺の本物の運命の番だったのに。
シリウスがあの人を大事にするわけがない。
シリウスはきっと、あいつがお母さまにしたように、扱うはずだ。
それなのにーーーーーー。
在りし日の、母を思い出す。
『おかあさま!おかあさま!!』
人間にしてはお母さまもかなり大柄な男だったけれど、それでも3メートル近い男にいいように嬲られれば、行為の後は悲惨だった。
受け入れさせられたその場所はもちろん、内臓に傷もつく。
衛兵に連れられて、部屋のベッドに投げ捨てられた母の世話をするのは、いつも俺だった。
母は、俺たち二人になると、魔法を使った。
『コンプリートキュア。』
母は腐っても宗教国クロス王国の王子だ。
回復魔法がなければ、もっと早く死んでいただろうし、俺を産むこともできなかっただろう。
『お母さまぁ…!!』
『…心配させてごめんな。いつもいつも…。大丈夫だよ。』
『でも、お母さま!そんなすごい回復魔法は、すごく疲れるんでしょう!?…どんどん、体力がなくなってるきがする。』
お母様は、俺を優しくなでで、笑った。
『本当はお前を連れて、ここから逃げられたらよかったんだけどな…。契約の力が強すぎて逃げられない。俺は多分、長く生きられない。』
『ぼくが、回復出来たらよかったのに…。』
『回復魔法は、大事な人を思う心がないと使えないから。まだ無理かな。』
『ぼく、お母さまが大事だよ!』
『ありがとうね。』
魔法は想いの力。
回復魔法は、死に瀕して目覚める。
愛する者を残して死ねない、そう思うこころ。
そのとき、ブルックの中で弾けた。
「…なっ、ばかなっ!!?」
ブルックの体が淡く光り輝き、失った体の組織が再生していく。
「コンプリート・キュア………!!!」
「ブルック…!!」
「シリウス、お前を倒してリーダーになるのは俺だ……!!!」
ブルックはシリウスに向かって突進し、拳を突き上げて天井へ飛ばす。
「ブヘッ……!!!!」
シャンデリアは揺れ、「ギャアアアアアアアアアアアアアアア!!!」――――シリウスに刺さる。
シリウスは絶命した。
「…ブルック!!」
シン王が涙に濡れた瞳でブルックを見る。
ブルックに触れたい。
早く抱きしめたい。
抱きしめてほしい。
「新しいリーダーだ!」
「リーダーはブルックに決まりだ!」
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「……まったく、俺も早く誰か見つけよう…。」
ブルックとシンが抱擁し、エンは片隅で見守っていた。
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