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閑話 王子様なんて待てない
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種田来栖。
種田グループの若き社長である種田一臣と医師一家である旧姓・白神マリアとの間に生まれた待望の男子には、生まれつき両方の性器があった。
性別不明な場合、産まれたときに「女性」として整えて、女性として出生届が出されることが多いらしいが、曾祖母が「どっちよりか今の段階では分からないんだから、ちょんぎって女の子にしたらかわいそうだろ!」と主張したので、とりあえず男の子として育てられた。
それが女の子寄りだと分かったのは、高校2年生の頃…。
「おかあさん……おれ、おなかいたい…。きょう、がっこうやすむ…。」
「ん?ちょっと来栖、あんたお尻から血が出てるの??ズボンにちょっと赤いのついてるんだけど。」
「え?」
姉の蝶子の一声で、そういえば下半身に違和感があるとトイレに駆け込むと、股が血で濡れている。
医療の心得がある母が確認すると、それは初潮で間違いなかった。
自分の体が普通と違うことは、小学校高学年に上がる前には母から聞いて知っていた。
男性器の裏に、女性器がある。
男なのに嫌だな、と思っていたけど、尊敬する曾祖母も同じだし、声高に言われていないだけで、意外とこの世の中にはこういう者もいるということは小さい頃に教えられてきた。
それでも、自分が言わなければ誰にも分らないものだし、今のところはどっちか分からないし、とりあえず周囲には気づかれないように注意しなさいと言われて、特に考えずに生きてきたのだが、ここにきて自分の性が女性寄りだと言われて戸惑いしかなかった。
曾祖母よりは男性器も(小さめであることはあっても)大きいとは言われていたし、男性寄りなのかな?と思っていたのに。
「……俺が女の子だったら姉さんが会社継ぐの?」
「女の子とか男の子とか考える必要ないんじゃない?会社なんて継ぎたい人が継げばいいのよ。それに、直系じゃなくたって従兄妹も又従兄弟もたくさんいるんだから、そのへんで継ぐ人いるかもしれないし。でも姉さんは性別関係なく来栖が一番向いてる気がするけどなぁ。」
種田の曾祖父母は子だくさんで有栖じいちゃん含めて5人の子どもがいたので、確かに候補はたくさんいることはいる。
「俺、こんな体で結婚なんてできるのかな。やっぱ俺が嫁になるのかな。ひいばあちゃんみたいに戸籍を変更してさ。でもさあ、こんなでもいいって言ってくれる人っている気しねー。」
「男で男好きな人だっているんじゃない?」
「俺、男じゃないし。どのセクシャリティでも需要なくない?ひいじいちゃんが特殊じゃない?」
「わかんないじゃない。いつか王子様が現れるかもよ。」
「うーん。ぴんとこないなあ。王子様なんて待つより、俺が王子様になりたい、なんて。」
誰かと連れ添う未来が想像できないのは、子どもの頃からだった。
女の子に恋愛感情をもてないのはそういうことか、とは納得したけど、だからといって男の子に恋心を抱いたことはない。
蝶よ花よと育てられた種田家は、力がある家だ。
いつか、権力で俺の夫を捕まえてプレゼントされるんだろうか。
そんなの迷惑だと思う。
それって、本当に愛してもらえないと思う。
うちは家族仲がよくて、俺がちっさい頃亡くなった曾祖父母もとても仲が良かった。
あんな風な家庭を築けたら幸せだと思ってるんだけど。
「姉ちゃん、俺って天才だよね。」
「天才だし可愛いし天使じゃない。何言ってるの。学生の身で何個うちの製薬にアイディア出したのよ。しかも仮説が大体当たってるし…。論文で共同研究者に名前入れるって言ってたわよ。」
「そ~だよね~!俺ってパーフェクトだからなー!!」
「ひいおじいちゃんとおじいちゃんに似て優秀だし、ひいおばあちゃん似で美人だし、最高の天使よ。」
「俺、大学院卒業したら家出るわ!」
「えっ。」
「俺くらいになれば家の力を借りなくても一旗あげられるって思うんだよね!種田の家関係なく、俺自身を好きになってくれる王子様を、自分で狩りに行くわ!俺が人間的に魅力があればいけるっしょ!」
「あはは……、無理だけはするんじゃないわよ。」
王子様はどんな人かなあ。
やっぱり優しい人がいいな。
俺だけをみてくれて。
俺のことを応援してくれて。
大切にしてくれる人がいいな。
結婚式を挙げて、神様の前で初めて唇にキスをして、初夜ではじめてをあげるんだ。
俺のことを本当に愛しているなら、
俺の体を見て、気持ち悪いなんて言わないよね。
夢の中の理想の人は、真面目そうで誠実そうな黒髪で、ちょっと尊敬する有栖じいちゃんに似てるんだ。
種田グループの若き社長である種田一臣と医師一家である旧姓・白神マリアとの間に生まれた待望の男子には、生まれつき両方の性器があった。
性別不明な場合、産まれたときに「女性」として整えて、女性として出生届が出されることが多いらしいが、曾祖母が「どっちよりか今の段階では分からないんだから、ちょんぎって女の子にしたらかわいそうだろ!」と主張したので、とりあえず男の子として育てられた。
それが女の子寄りだと分かったのは、高校2年生の頃…。
「おかあさん……おれ、おなかいたい…。きょう、がっこうやすむ…。」
「ん?ちょっと来栖、あんたお尻から血が出てるの??ズボンにちょっと赤いのついてるんだけど。」
「え?」
姉の蝶子の一声で、そういえば下半身に違和感があるとトイレに駆け込むと、股が血で濡れている。
医療の心得がある母が確認すると、それは初潮で間違いなかった。
自分の体が普通と違うことは、小学校高学年に上がる前には母から聞いて知っていた。
男性器の裏に、女性器がある。
男なのに嫌だな、と思っていたけど、尊敬する曾祖母も同じだし、声高に言われていないだけで、意外とこの世の中にはこういう者もいるということは小さい頃に教えられてきた。
それでも、自分が言わなければ誰にも分らないものだし、今のところはどっちか分からないし、とりあえず周囲には気づかれないように注意しなさいと言われて、特に考えずに生きてきたのだが、ここにきて自分の性が女性寄りだと言われて戸惑いしかなかった。
曾祖母よりは男性器も(小さめであることはあっても)大きいとは言われていたし、男性寄りなのかな?と思っていたのに。
「……俺が女の子だったら姉さんが会社継ぐの?」
「女の子とか男の子とか考える必要ないんじゃない?会社なんて継ぎたい人が継げばいいのよ。それに、直系じゃなくたって従兄妹も又従兄弟もたくさんいるんだから、そのへんで継ぐ人いるかもしれないし。でも姉さんは性別関係なく来栖が一番向いてる気がするけどなぁ。」
種田の曾祖父母は子だくさんで有栖じいちゃん含めて5人の子どもがいたので、確かに候補はたくさんいることはいる。
「俺、こんな体で結婚なんてできるのかな。やっぱ俺が嫁になるのかな。ひいばあちゃんみたいに戸籍を変更してさ。でもさあ、こんなでもいいって言ってくれる人っている気しねー。」
「男で男好きな人だっているんじゃない?」
「俺、男じゃないし。どのセクシャリティでも需要なくない?ひいじいちゃんが特殊じゃない?」
「わかんないじゃない。いつか王子様が現れるかもよ。」
「うーん。ぴんとこないなあ。王子様なんて待つより、俺が王子様になりたい、なんて。」
誰かと連れ添う未来が想像できないのは、子どもの頃からだった。
女の子に恋愛感情をもてないのはそういうことか、とは納得したけど、だからといって男の子に恋心を抱いたことはない。
蝶よ花よと育てられた種田家は、力がある家だ。
いつか、権力で俺の夫を捕まえてプレゼントされるんだろうか。
そんなの迷惑だと思う。
それって、本当に愛してもらえないと思う。
うちは家族仲がよくて、俺がちっさい頃亡くなった曾祖父母もとても仲が良かった。
あんな風な家庭を築けたら幸せだと思ってるんだけど。
「姉ちゃん、俺って天才だよね。」
「天才だし可愛いし天使じゃない。何言ってるの。学生の身で何個うちの製薬にアイディア出したのよ。しかも仮説が大体当たってるし…。論文で共同研究者に名前入れるって言ってたわよ。」
「そ~だよね~!俺ってパーフェクトだからなー!!」
「ひいおじいちゃんとおじいちゃんに似て優秀だし、ひいおばあちゃん似で美人だし、最高の天使よ。」
「俺、大学院卒業したら家出るわ!」
「えっ。」
「俺くらいになれば家の力を借りなくても一旗あげられるって思うんだよね!種田の家関係なく、俺自身を好きになってくれる王子様を、自分で狩りに行くわ!俺が人間的に魅力があればいけるっしょ!」
「あはは……、無理だけはするんじゃないわよ。」
王子様はどんな人かなあ。
やっぱり優しい人がいいな。
俺だけをみてくれて。
俺のことを応援してくれて。
大切にしてくれる人がいいな。
結婚式を挙げて、神様の前で初めて唇にキスをして、初夜ではじめてをあげるんだ。
俺のことを本当に愛しているなら、
俺の体を見て、気持ち悪いなんて言わないよね。
夢の中の理想の人は、真面目そうで誠実そうな黒髪で、ちょっと尊敬する有栖じいちゃんに似てるんだ。
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