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月明かりの祝福
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(エッ、あれがナス課長?…………かわいい。)
(あれが、ラジウム=キュウリー!? なんて美しいんだ! くそっ、文官室は美人ばかりの部署だったのか?)
(ロゼ家の次男はうまくやったなあ!)
(子どもができなくても大丈夫だから、うちの後妻に来てくれないかな。)
会場がザワつく中、キュウリ先輩はスパークリングと連れ立って、飲み物を取りに行った。
ナス課長は、適当にグラスとナッツを取って、壁際に陣取る。
(壁の花は慣れてるからねえ~。)
キュウリはうまくいっているみたいで、自分のことのように嬉しい。
自分は見た目は変わったのだろう。
自分に対する視線は感じる。
けれど、おじさんだし。
本当は、こういう場に海里を連れて来られたら良かったが、身重だし、誘うのは躊躇われた。
返事ももらえていないし。
でも、あの感じじゃ、結婚は断られるのかもしれないな。
だが、そうなったとしても、海里を助けていくことは変わらない。
「ナス子爵。私とお話しませんか。」
「いえ、私と。」
隅でダイエットにも優しいワインとナッツをいただいていたら、自分に話しかける者が集まってきた。
妻を亡くした、自分と同年代か年上の伯爵たちだ。
なるほど。
すでに子がいる家の後添えならむしろ子ができないほうがいい。
格上なら子爵家の領地を吸収してもおかしくないし、子爵家は豊かだし、自分の領地経営の腕もほしいのか。
そういう需要が自分にあることを自覚した課長は、あしらいに慣れていなくて、どうしたものか困ってしまった。
「すみません。ボウ様。お待たせいたしました。」
聞き覚えのある通る声が、響く。
そこにいたのは。
「海里、さん。」
トウホウの民族衣装だろうか。
鮮やかな着物を重ねて、海里は神秘的で美しかった。
お腹は目立たない。
「お、お待ちしていました!」
海里の気遣いに乗っかる。
ナス課長に相手がいるとわかると、伯爵たちは去っていった。
課長は、月明かりが優しく照らす窓際のソファに移動し、海里と一緒に腰掛ける。
「なぜ、ここに。お体、大丈夫ですか?」
「安定期ですし。……………それに、どうしても嫌だったのです。素敵になったあなたが夜会に出たら、自分以外の者があなたに触れる、そう……思って。一応、招待状もいただいていましたし。」
それって。
「私、いいのですか。腹の子はあなたの子ではありません。あなたにとっても禍になるのでは。」
「僕は天涯孤独でね。親類もいないから、爵位と領地は国に返上する予定だったんだ。だから、お腹の子に継いでもらったら嬉しい。禍になんか、ならないよ。」
健気な海里。
賢くて、思慮深く、穏やかで。
愛情深い。
そんな君が好き。
好きな君の子の父親になりたい。
そう言って、課長は月明かりの下、指輪ケースを開けた。
「結婚、してください。」
「はい……。宜しく、お願い致します。」
月明かりに照らされた海里は、嬉しくて涙を頬に伝わせ、微笑んだ。
差し出した細い指に、ナス課長は指輪を通した。
(あれが、ラジウム=キュウリー!? なんて美しいんだ! くそっ、文官室は美人ばかりの部署だったのか?)
(ロゼ家の次男はうまくやったなあ!)
(子どもができなくても大丈夫だから、うちの後妻に来てくれないかな。)
会場がザワつく中、キュウリ先輩はスパークリングと連れ立って、飲み物を取りに行った。
ナス課長は、適当にグラスとナッツを取って、壁際に陣取る。
(壁の花は慣れてるからねえ~。)
キュウリはうまくいっているみたいで、自分のことのように嬉しい。
自分は見た目は変わったのだろう。
自分に対する視線は感じる。
けれど、おじさんだし。
本当は、こういう場に海里を連れて来られたら良かったが、身重だし、誘うのは躊躇われた。
返事ももらえていないし。
でも、あの感じじゃ、結婚は断られるのかもしれないな。
だが、そうなったとしても、海里を助けていくことは変わらない。
「ナス子爵。私とお話しませんか。」
「いえ、私と。」
隅でダイエットにも優しいワインとナッツをいただいていたら、自分に話しかける者が集まってきた。
妻を亡くした、自分と同年代か年上の伯爵たちだ。
なるほど。
すでに子がいる家の後添えならむしろ子ができないほうがいい。
格上なら子爵家の領地を吸収してもおかしくないし、子爵家は豊かだし、自分の領地経営の腕もほしいのか。
そういう需要が自分にあることを自覚した課長は、あしらいに慣れていなくて、どうしたものか困ってしまった。
「すみません。ボウ様。お待たせいたしました。」
聞き覚えのある通る声が、響く。
そこにいたのは。
「海里、さん。」
トウホウの民族衣装だろうか。
鮮やかな着物を重ねて、海里は神秘的で美しかった。
お腹は目立たない。
「お、お待ちしていました!」
海里の気遣いに乗っかる。
ナス課長に相手がいるとわかると、伯爵たちは去っていった。
課長は、月明かりが優しく照らす窓際のソファに移動し、海里と一緒に腰掛ける。
「なぜ、ここに。お体、大丈夫ですか?」
「安定期ですし。……………それに、どうしても嫌だったのです。素敵になったあなたが夜会に出たら、自分以外の者があなたに触れる、そう……思って。一応、招待状もいただいていましたし。」
それって。
「私、いいのですか。腹の子はあなたの子ではありません。あなたにとっても禍になるのでは。」
「僕は天涯孤独でね。親類もいないから、爵位と領地は国に返上する予定だったんだ。だから、お腹の子に継いでもらったら嬉しい。禍になんか、ならないよ。」
健気な海里。
賢くて、思慮深く、穏やかで。
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そんな君が好き。
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「結婚、してください。」
「はい……。宜しく、お願い致します。」
月明かりに照らされた海里は、嬉しくて涙を頬に伝わせ、微笑んだ。
差し出した細い指に、ナス課長は指輪を通した。
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