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出産のとき
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「ローゼ。もう産み月なんだからゆっくりして。公務は私が出来るから。」
普段は一人称が『僕』なのに、外では『私』というのにも、すっかり慣れた愛しの夫は、俺が心配でならないらしい。
「大丈夫ですよ、アーサー陛下。私もついてるのですから。シュヴァイツァー王国から腕利きの医師も連れてきたのですし。」
セーラお母さまは腕まくりして息巻いている。
「俺、途中で放り出すのは嫌だし、引継ぎがてら丁度いいところまでだから。医師が同伴なら大丈夫でしょ、アーサー。」
そういうと、アーサーは渋いながらも承諾をした。
「仕事を急いで終わらせてくるから。だから無理しないでね。」
「分かってるよ。」
額にキス。
じゃあ、少し頑張るかな。
柔らかいソファベッドにクッションを敷いて、ぱんぱんになったお腹を抱えながら座る。
切りの良いところまで終わらせると、うとうとと眠たくなってきた。
トントン、ノックがして眼鏡をかけた侍女や侍従たちが入ってくる。
「王妃殿下を寝室へ運びます。」
「そうね、休ませてあげて………。あなたたちもついていってね。」
セーラは医師たちに指示をした。
「ところで、貴方たちは誰かしら?ピンクゴールドの髪が帽子からはみ出ていてよ?」
その声は冷たく、表情は勇者として厳しい顔をしているときのローゼにそっくりで。
侍女侍従に化けた者たちは身を縮こませながらも、もう先はなく、やけくそに隠し持っていた武器を出す。
「この城は使用人の出入りが多いようね。気づかなかったようで笑えるわ。まあ、城の造りなんてどこも似たようなものよね。我が国を模倣しているのだし、私には潜り込むくらい簡単だったわ!」
彼女の名はアンジュ。
小国になってしまったフローラ王国の王女。
そして、【運命の番】を絶対視する新興宗教団体の偶像である。
普段は一人称が『僕』なのに、外では『私』というのにも、すっかり慣れた愛しの夫は、俺が心配でならないらしい。
「大丈夫ですよ、アーサー陛下。私もついてるのですから。シュヴァイツァー王国から腕利きの医師も連れてきたのですし。」
セーラお母さまは腕まくりして息巻いている。
「俺、途中で放り出すのは嫌だし、引継ぎがてら丁度いいところまでだから。医師が同伴なら大丈夫でしょ、アーサー。」
そういうと、アーサーは渋いながらも承諾をした。
「仕事を急いで終わらせてくるから。だから無理しないでね。」
「分かってるよ。」
額にキス。
じゃあ、少し頑張るかな。
柔らかいソファベッドにクッションを敷いて、ぱんぱんになったお腹を抱えながら座る。
切りの良いところまで終わらせると、うとうとと眠たくなってきた。
トントン、ノックがして眼鏡をかけた侍女や侍従たちが入ってくる。
「王妃殿下を寝室へ運びます。」
「そうね、休ませてあげて………。あなたたちもついていってね。」
セーラは医師たちに指示をした。
「ところで、貴方たちは誰かしら?ピンクゴールドの髪が帽子からはみ出ていてよ?」
その声は冷たく、表情は勇者として厳しい顔をしているときのローゼにそっくりで。
侍女侍従に化けた者たちは身を縮こませながらも、もう先はなく、やけくそに隠し持っていた武器を出す。
「この城は使用人の出入りが多いようね。気づかなかったようで笑えるわ。まあ、城の造りなんてどこも似たようなものよね。我が国を模倣しているのだし、私には潜り込むくらい簡単だったわ!」
彼女の名はアンジュ。
小国になってしまったフローラ王国の王女。
そして、【運命の番】を絶対視する新興宗教団体の偶像である。
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