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他愛ない日常

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授業が終わり自分の部屋に戻ると、開けっぱなしで出てきたはずが、鍵がかかっていた。


そのことに思わず口元が緩みそうなのを止めて、鍵を開けると、そこには彼がいた。


「先生!お邪魔しています!」



少し顔色がよくなった。


「うん。好きなときに好きなだけいていいからね。」


頭を撫でると、柔らかい髪が心地いい。



両親も側近も友も、全てを失った。
そんな私にとって、久しぶりに心が癒やされるのを感じる。

彼は何年生だったかな………


聞けば最終学年という。

もっと早く出会いたかった。
あと半年もない。

しかも、彼は既に有望な伯爵家の当主。
何者でもない私では釣り合わないだろう。


「紅茶でいいかな?」

「あっ」

立ち上がろうとするのを止める。

「はい、どうぞ。この茶器セットも自由に使っていいからね。クッキーくらいなら常備しているし。」

「ありがとうございます。」


それから私たちは、たわいも無い話をした。


甘いものは好き。

酸っぱいものは苦手。

コーヒーは苦いからミルクと砂糖を入れないと飲めない。

夜会もあまり好きじゃない。


採掘頼りの国政はよくないと思っている。



君との会話はなんて楽しいのだろう。



「じゃあ………もう行きますね。先生、また」






胸がどきどきする。

顔に出ていませんように。

アーサー先生といると、元気になれる。

今日もミントを撒いてきた。

アーサー先生とくらせたらいいのに。


「よう。やっと見つけたぜ。」



部屋から出ると、少し歩いた場所の柱の陰にミントがいた。


「!」


「ミントぉ?本当に伯爵様が相手してくれるのかよぉ。」

「ああ、こいつ男無しで生きていけない淫乱なんだよ。アーサー先生にもやらせたんだろ?」

違う。


違う!


なんでこんな時に僕は声がでない。


「場所変えようぜ。」


僕は、連れて行かれた。


ミントと、あと二人。


…………相手をさせられるのか。


視界が滲んだ。








「…………あっ。」

彼のいなくなった場所は、まだ温かい。

そこに、彼の手帳があった。

二人で国政について語り合っていたから、領地経営の参考にするのか、メモをとっていた。


これは無いと困るだろう。



彼に渡さなくては。

まだ近くにいるだろう。
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