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【番外編】ロイの過去
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真っ暗で黒い世界。
誰もいない。ひとりぼっちだ。
暗い。怖い。叫んでも、何もない。
闇がどんどん濃くなる。
怖いよ。苦しいよ。嫌だ。嫌だ・・・!
ハッと目が覚める。
呪いにかかってから、毎日この夢を見る。
「もう、こんなの嫌だ。なんで僕だけ・・・。」
どれだけ調べても、呪いを解く方法は一つもなかった。
絶望した。
この呪いは僕が死ぬまで続くんだ。
もしかしたら今日呪い殺されるかもしれない。明日は生きていないかもしれない。
『 僕に、未来なんてない。 』
僕はロイ。10歳だ。
今日は父上に連れられ、王都魔法支部長の研究室に来ている。呪いを解く手がかりを得るためだって言われるけど、解く方法がないことは知っている。
定期的に研究室に来たり、聖女様に魔法をかけてもらったりするけど、効果が薄まるだけで、どうせちょっと時間が経てば辛くなる。正直、もういいんじゃないかな、なんて思う。
僕の魔力や呪いの魔法陣について確認された後、父上と支部長の2人で話があるらしく僕は追い出された。
目的もなく歩く。先程魔力を使ってしまったためか、少しふらふらする。
いつの間にか、目の前に小さい女の子がいる。
「はじめまして!!」
元気よくそう言って、僕の前でお辞儀をする。
踊るように揺れる小さな髪の毛の束。
上げた顔に浮かぶ満面の笑み。
ふわっと香る甘い魔法の香り。
僕は無意識に思った。かわいい、愛おしいと。
呪いにかけられてからは、辛い・苦しい・不安・嫌だ以外の感情は一切湧いてこなかった。可愛い、愛おしいなんてもってのほかだった。
それなのに、どうして。
「ねぇ、大丈夫?」
「なにが?」
「お腹のとこ、悪い方が勝っちゃいそう。」
僕は驚く。これがわかるのか。僕の魔力が下がって苦しいことも。
「うーん、そうだ!手出して。」
言われるがままに手を出す。
少女は小さな手で私の手を優しく握り、呪文を唱え始める。
「えっ」
急に始まった魔法に驚くが、悪い感じはしない。
それどころか、僕の体に彼女の優しい魔力が流れ込んでくる。
それはまるで温かいものに包まれていく感覚だ。
パッと彼女の手が離れる。
「よし、大丈夫そうだね!これ最近習ったの!」
そう言って嬉しそうに笑う。
「ありがとう」僕が呟くと、
「どういたしまして!」と元気に返事が返ってくる。
「あの、」
僕は名前を聞こうとした。が、
「ごめん、お父様が呼んでるわ。またね!」
そう言って駆け出してしまった。
後から聞いた話によると彼女はフランソワ。
先程、父上と話していた支部長の娘だそうだ。
学園のHonorになるために、魔法の勉強をしているらしい。
「学園、か。あの子と学園生活送るの楽しそうだな。」
口から出た言葉に驚いた。
明日、死んでしまうかもしれない。そんな不安に押しつぶされそうで、未来なんて考えてないようにしていたのに。不思議だ。
それに、彼女が「またね」と言っていた。また、会えるのだろうか。会いたい。
・
・
・
それから、月日は流れ16歳になった。
入学式で彼女を見つけた。
「なんで男装してるんだ」
予想外の姿に思わず笑う。
彼女に話しかけると、初めましての挨拶をされた。
覚えてないことに残念だと思ったが、ひとつだけ確信することができた。
『 彼女となら、楽しい未来になる。 』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
前回、「これを言い当てたのは2回目だ」と言って嬉しそうにしていたのは、以前もフランが当てたからだったんです。
ゲーム上のロイは、幼少期に呪いにかかったことはなく、ロイとフランは一度も会ったことがありません。こんな展開になったのはリンが話を変えたから?それとも・・・?
ちなみに16歳になるまで二人が会わなかったのは、フランが魔法の勉強に没頭していたり、シスコン気味のお兄様が会わせないようにしたり、とかいう理由です。
誰もいない。ひとりぼっちだ。
暗い。怖い。叫んでも、何もない。
闇がどんどん濃くなる。
怖いよ。苦しいよ。嫌だ。嫌だ・・・!
ハッと目が覚める。
呪いにかかってから、毎日この夢を見る。
「もう、こんなの嫌だ。なんで僕だけ・・・。」
どれだけ調べても、呪いを解く方法は一つもなかった。
絶望した。
この呪いは僕が死ぬまで続くんだ。
もしかしたら今日呪い殺されるかもしれない。明日は生きていないかもしれない。
『 僕に、未来なんてない。 』
僕はロイ。10歳だ。
今日は父上に連れられ、王都魔法支部長の研究室に来ている。呪いを解く手がかりを得るためだって言われるけど、解く方法がないことは知っている。
定期的に研究室に来たり、聖女様に魔法をかけてもらったりするけど、効果が薄まるだけで、どうせちょっと時間が経てば辛くなる。正直、もういいんじゃないかな、なんて思う。
僕の魔力や呪いの魔法陣について確認された後、父上と支部長の2人で話があるらしく僕は追い出された。
目的もなく歩く。先程魔力を使ってしまったためか、少しふらふらする。
いつの間にか、目の前に小さい女の子がいる。
「はじめまして!!」
元気よくそう言って、僕の前でお辞儀をする。
踊るように揺れる小さな髪の毛の束。
上げた顔に浮かぶ満面の笑み。
ふわっと香る甘い魔法の香り。
僕は無意識に思った。かわいい、愛おしいと。
呪いにかけられてからは、辛い・苦しい・不安・嫌だ以外の感情は一切湧いてこなかった。可愛い、愛おしいなんてもってのほかだった。
それなのに、どうして。
「ねぇ、大丈夫?」
「なにが?」
「お腹のとこ、悪い方が勝っちゃいそう。」
僕は驚く。これがわかるのか。僕の魔力が下がって苦しいことも。
「うーん、そうだ!手出して。」
言われるがままに手を出す。
少女は小さな手で私の手を優しく握り、呪文を唱え始める。
「えっ」
急に始まった魔法に驚くが、悪い感じはしない。
それどころか、僕の体に彼女の優しい魔力が流れ込んでくる。
それはまるで温かいものに包まれていく感覚だ。
パッと彼女の手が離れる。
「よし、大丈夫そうだね!これ最近習ったの!」
そう言って嬉しそうに笑う。
「ありがとう」僕が呟くと、
「どういたしまして!」と元気に返事が返ってくる。
「あの、」
僕は名前を聞こうとした。が、
「ごめん、お父様が呼んでるわ。またね!」
そう言って駆け出してしまった。
後から聞いた話によると彼女はフランソワ。
先程、父上と話していた支部長の娘だそうだ。
学園のHonorになるために、魔法の勉強をしているらしい。
「学園、か。あの子と学園生活送るの楽しそうだな。」
口から出た言葉に驚いた。
明日、死んでしまうかもしれない。そんな不安に押しつぶされそうで、未来なんて考えてないようにしていたのに。不思議だ。
それに、彼女が「またね」と言っていた。また、会えるのだろうか。会いたい。
・
・
・
それから、月日は流れ16歳になった。
入学式で彼女を見つけた。
「なんで男装してるんだ」
予想外の姿に思わず笑う。
彼女に話しかけると、初めましての挨拶をされた。
覚えてないことに残念だと思ったが、ひとつだけ確信することができた。
『 彼女となら、楽しい未来になる。 』
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前回、「これを言い当てたのは2回目だ」と言って嬉しそうにしていたのは、以前もフランが当てたからだったんです。
ゲーム上のロイは、幼少期に呪いにかかったことはなく、ロイとフランは一度も会ったことがありません。こんな展開になったのはリンが話を変えたから?それとも・・・?
ちなみに16歳になるまで二人が会わなかったのは、フランが魔法の勉強に没頭していたり、シスコン気味のお兄様が会わせないようにしたり、とかいう理由です。
応援ありがとうございます!
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女の子だったはずのフランが男装している事に突っ込む王子が良いですね(笑)
そりゃびっくりするよね。
ところで「フランソワ」は元から男性ネームみたいです。
女の子だとフランソワーズとか?
なので男装しててもフランソワのままでも大丈夫かも?
なんとなくフランちゃんの方が女の子っぽい?
続き楽しみにしています!
月空様、続きが気になりますね。本編?の死亡フラグ~の方はまだ読んでませんが、また、読ませていただきます。