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第0章
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『はい、こちら良い子の相談窓口。ご用件をどうぞ』
数回のコール音の後に聞こえてきた、機械的に告げられた何とも言えない台詞。
だけどそれが、敵を欺き、また悪戯電話を防ぐためのやり方だった。
それを理解しているからこそ、少年は気にすることなく言葉を続ける。
「こちら〝黒羽〟。〝赤星〟はいるか?」
『あら、クロノくん。お疲れさま』
目的の相手はすぐに出た。
「名前で呼ばないでくださいよ。何のための暗号なんですか」
クロノと呼ばれた少年は、呆れ混じりにそう告げた。
クロノの〝黒羽〟や電話先の女性の〝赤星〟は、敵の使い手から自身の情報を守るための二つ名だ。こうも簡単に名前を呼ばれては、暗号の意味がない。
『大丈夫よ。ダミーの電波をたくさん作ったから、すぐに解析されないわ』
「…………」
電話の向こうで、「ヒマなら仕事を手伝ってくださいよ」と小さく聞こえた。
クロノは何か言いたいのをぐっとこらえ、言葉を続ける。
「こっちは片付きました。言われたものも回収しました」
『それじゃあ黒羽くん。戻って来るついでにもう一つ、仕事を頼んでも良いかしら?』
良くない、と出かかった文句を飲み込む。
断っても無理矢理させられるのは目に見えている。無用な問答は時間の無駄だ。
とはいえ、腑に落ちない部分はある。この結社には、他の組織と比べるとたくさんの紋章術の使い手がいる。新人ではないがそれほど古株でもないクロノよりも、腕の立つ術師はたくさんいる。ついでに言うなら、探せば暇している使い手もいるはずだろう。
「別に構わないですけど……何で俺が?」
『一刻を争う状況で、最も近くにいるのが貴方だからよ』
この上ない、正当な理由だった。
『それじゃあ、詳細はメールしておくわ。よろしくね』
その言葉と共に、一方的に通話が切れた。
ため息混じりでケータイをしまうクロノを、疲労とは違う怠さが襲う。
――やっぱりあの人は苦手だ……。
そして、回収したアタッシュケースを掴むと、取引先が姿を現す前にこの場を去る。倒れたままの、元男たちはそのまま放置して。
ポケットの中で、受信を告げるようにケータイが震えた。
数回のコール音の後に聞こえてきた、機械的に告げられた何とも言えない台詞。
だけどそれが、敵を欺き、また悪戯電話を防ぐためのやり方だった。
それを理解しているからこそ、少年は気にすることなく言葉を続ける。
「こちら〝黒羽〟。〝赤星〟はいるか?」
『あら、クロノくん。お疲れさま』
目的の相手はすぐに出た。
「名前で呼ばないでくださいよ。何のための暗号なんですか」
クロノと呼ばれた少年は、呆れ混じりにそう告げた。
クロノの〝黒羽〟や電話先の女性の〝赤星〟は、敵の使い手から自身の情報を守るための二つ名だ。こうも簡単に名前を呼ばれては、暗号の意味がない。
『大丈夫よ。ダミーの電波をたくさん作ったから、すぐに解析されないわ』
「…………」
電話の向こうで、「ヒマなら仕事を手伝ってくださいよ」と小さく聞こえた。
クロノは何か言いたいのをぐっとこらえ、言葉を続ける。
「こっちは片付きました。言われたものも回収しました」
『それじゃあ黒羽くん。戻って来るついでにもう一つ、仕事を頼んでも良いかしら?』
良くない、と出かかった文句を飲み込む。
断っても無理矢理させられるのは目に見えている。無用な問答は時間の無駄だ。
とはいえ、腑に落ちない部分はある。この結社には、他の組織と比べるとたくさんの紋章術の使い手がいる。新人ではないがそれほど古株でもないクロノよりも、腕の立つ術師はたくさんいる。ついでに言うなら、探せば暇している使い手もいるはずだろう。
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『それじゃあ、詳細はメールしておくわ。よろしくね』
その言葉と共に、一方的に通話が切れた。
ため息混じりでケータイをしまうクロノを、疲労とは違う怠さが襲う。
――やっぱりあの人は苦手だ……。
そして、回収したアタッシュケースを掴むと、取引先が姿を現す前にこの場を去る。倒れたままの、元男たちはそのまま放置して。
ポケットの中で、受信を告げるようにケータイが震えた。
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