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第1章
026
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「正直、俺が仕事を放棄してもグラールがまともに反応しないようだったら、君を自由にするつもりだった」
「自由に?」
「何に狙われようが関係ないって、元いた場所に帰してた」
ミントにとってはどちらが幸せだったのだろうか。
人を人とも思わない、とまではいかないかもしれないが、野良猫でも拾ったみたいなこっぴどい言い草。しかし、それはどうせなら正直に打ち明けようと言う彼なりの誠意の表れだった。
どこか捩くれた価値観であることは今更言うまでもない。
「けど、グラールは俺の失敗を取り締まったし、わざわざ俺に仕事を回したのも、従順さを期待した結果みたいだった。だから助けた。グラールがそこまで執着するターゲットがなんなのか、知る必要があったし」
「本当にそれだけですか」
「何で?」
「だって、クロノさんにはクロノさんの生活があったはずです。そんなに簡単に、捨てられるものじゃないと思うから……」
彼女は、クロノが元所属結社での生活を呆気なく手放したことに、不安感を隠せないらしい。
グラールを捨てた理由――とりあえず労働条件は悪かった、とクロノは改めて思い返す。
黙って仕事をこなせば、誰であろうと確実に出世出来る、ある種良心的なシステムではあったのだが、大抵の使い手は結社で生き延びることに必死だった。
地位や経験を問わず、凶報は特に珍しいことでもなかったのだ。
同僚や先輩、そして所属したばかりの後輩。昨日まで同じ食堂で昼食を共にしていた相手が、明日には動かなくなって帰ってくる。あるいは、仕事に向かった先で永遠に消息を絶つ。そして、まるでその穴を埋めるかのように、新たな紋章術の使い手が結社へと所属する。どの結社も似たようなものなのかもしれないが、規模の大きな組織程、そういった刹那的なサイクルが顕著に表れるのだろう。クロノが所属する直前には、まだ中学生の少年が殉職したと言う話だった。まだ新入りの立場だったクロノも、それでグラールの仕事の過酷さと冷酷さを何となく理解した。とはいえ、仲間の命と引き換えに敵組織に飼われることを選んだ彼だ。本当なら、グラールがどんな組織で何をしているかなんてことに、興味はなかったのだが。
「友だちがいたんだ」
筋違いな返答だった。
閉口するミント。首を動かせる体勢なら、ことりと傾けられたかもしれない。
クロノは彼女の視線と静かな時計の針の音を受けながら、ややあって、虚空に語りかけるように話し始めた。
親友を孤独にさせまいと、一緒に使い手としての道を選んだこと。
初めて所属した結社のこと。
彼らがグラールの傘下に置かれるのを拒んだこと。
仲間を守るために、囮になったこと。
そして、グラールへの所属理由。
まるで「今日は良い天気ですね」とでも言うみたいに、何でもないことを話す口調だ。あまりにもアンバランスで内容を伴わない言い草は、違和感すら煽ったかもしれない。
クロノの姿は、ミントにはどう映っただろうか。
「その友だちが、君のこと――鍵と人体実験について話したんだ。本当はグラール内部から探りを入れた方が確実だったかもしれないけど。俺みたいな下っ端は、どう足掻いても上層部の情報には行き着けない」
返答のない彼女に、眼差しを向ける。
「だからかな。グラールを捨てるのには、そんなに迷いがなかった」
まあ、俺を引き抜いた上司には悪いと思うけど。
クロノはセラの強面を思い出したのか、微苦笑とともに付け足した。
これまで黙って話を聞いていたミントが、不意に口を開いた。
「でも……それじゃあ、クロノさんが初めにいた結社は」
「どうだろうな。約束通り壊されてるかもしれない。けど、もしかしたら無事かもしれない。確立は低いけど、俺もどこまで内通者に取り入れたのかわからないんだ」
「え?」
怪訝そうに眉根を寄せたミント。
体さえ自由に動けば、クロノは金髪をわさわさと掻いていただろう。
――あんまりこういうこと話したくないんだけどなぁ。
「俺は、内通者を知ってたから」
ぽつりと呟きながら、彼は想起する。
とてもスパイには見えないような、実直な男だった。
クロノはグラールに所属する前までは、結社の仲間と言うものを少なくとも信じていた。
だから、偶然の産物だ。
男が仕事で負った怪我のせいでベッドに臥せっていた時だ。
彼の所有物を整理していると、手当ての際に外したロケットを床に落としてしまった。男が肌身離さず身に付けていたものだった。落下した拍子に、蓋の開いたロケット。傷でも付いていないかと不安げに拾い上げると、はめ込まれた写真が僅かにずれていた。……そこに見覚えのない機器が内蔵されていた。
とっさに飛び起きた男の首筋へ、クロノはナイフを突き付けた。
機器の正体は、通信機だった。
目を凝らさないと見落とす程の微細なものだ。
そして何より、男の焦燥が全てを物語っていた。
「そいつがどこの命令で潜り込んだ奴なのかわかったら、他にやりようがあったんだけどな。吐くぐらいなら殺された方がマシだって言って聞かなかったんだ」
だから、ロケットの写真を見て、一言呟いた。
これはあんたの家族か、と。
ナイフ片手の詰問に、ぞっと血の気の引いた男の顔を、クロノは今でもよく覚えている。
ロケットの写真には、幼い少年が映っていた。
ついさっきまで彼の包帯を巻き直していたその手で、男の家族へと切っ先を突き付けたのだ。
男の立場が他のメンバーに知れれば、生易しい方法なら情報を吐くまで尋問されるか、早々に摘まみ出されるか。拷問を行なったり、問答無用で命を奪ったりするとは思えなかったが、仮にも鍵の争奪戦に参戦している結社だ。どういう手段を講じるかはわからなかった。
だから、クロノは、男を殺さないこと、結社のメンバーにも黙っておくことを告げた。
その代わり、本来の上司の命令には従わない。決定的な情報は漏らさない、と誓わせた。
それに背けばどうなるか。
そんなことは、男の妄想が勝手に補ってくれた。
何せ当時のクロノはそこまで結社と言う闇社会に通じた人間ではなかったのだ。写真一枚で男の家族をどうにか出来る程の情報力は、そもそも持ち合わせていなかった。
要するに、男を縛る枷になれば何でも良かったのだ。
クロノのハッタリは、十分に効力を発揮した。
君がわからない。男はクロノと二人きりになると、よくそんなことを漏らしていた。
通信機の一件以来、クロノは殊に彼を敵視するでもなく、普段と変わらず接していた。
その態度は、まるで同じ結社の〝仲間〟のようだった。諜報を担うような相手に、恐喝だけでは束縛が足りないと判断したのか、それとも、クロノ自身が単に男の家族を巻き込むことに、抵抗を感じていたのか。恐らく、両者とも当てはまっていたのだろう。
クロノは男を警戒することより、取り入ることに専念した。
家族の安全すら保障せずに、身一つで諜報をやらせるような結社じゃなく、クロノたちの結社へと揺らぐように仕向けたのだ。出来れば穏便に済ませたい、と言うのがクロノの本音だったのかもしれない。
そして、男のバックにいるのがグラールだと察したのは、奴らに合併申告を持ちかけられたからだった。まさか自分たちのような小さな結社に、有力組織が事を仕掛けてくるとは思わなかったのだ。それほどの組織が絡んでいるのなら、もっと確実な手段に出るべきだった。
男の正体に気付いた時点で、口封じする。
対応するには、遅すぎた。
「結局、俺が人を殺したくなかっただけかもしれないけどな」
詰めが甘かったんだ、と場違いに微笑んだクロノ。
ミントは傷が痛んだような、やりきれない表情を浮かべた。
「要するに、内通者は俺の要求に従うか、グラールの命令に従うか、天秤にかけたはずなんだ」
前者が沈んだなら、クロノの元祖所属結社は無事だろう。
しかし、後者が重んじられたら――。
「きっと大丈夫です」
「……まあ考えても仕方ないからな」
「違います。だって、仕事なんかより家族の方が大事ですから」
「ああ。だから、それを引っ張り出されたら終わりだ。グラールは俺より卑怯だし」
自嘲にしては苦味の多すぎる言葉だった。
何せ、クロノはグラールに所属してすぐ、男が大事にしていた写真の男の子とよく似た顔と出会っているのだ。
クロノの史上最悪のタッグ相手。そいつがまさに、その少年の面差しを残していた。
これ以上に皮肉な話はない。男は七つの鍵や結社などとは無縁の、平穏な世界にいる弟を守ろうとしていた。たった一人の家族なんだ、と必死になっていた。
だからこそ、クロノの恐喝に血相を変えて首を振ったのに。
彼が長い諜報活動に身を投じているうちに、弟が変わってしまったのだろうか。それとも、元からそういう素質があったのか。
写真の少年は、紋章術の使い手としてグラールに所属していた。
それも、あらん限りの殺気を振り撒きながら、鬼ごっこと称して凶器片手にターゲットを追いかけ回す使い手だ。奴は狂っている。
結社が男の思惑を汲んだ上で彼を引き入れたのなら、あまりにも残酷すぎた。
脳裏に、ガンズの歪み切った笑顔がよぎる。
クロノは僅かに口際を噛み締めた。
「自由に?」
「何に狙われようが関係ないって、元いた場所に帰してた」
ミントにとってはどちらが幸せだったのだろうか。
人を人とも思わない、とまではいかないかもしれないが、野良猫でも拾ったみたいなこっぴどい言い草。しかし、それはどうせなら正直に打ち明けようと言う彼なりの誠意の表れだった。
どこか捩くれた価値観であることは今更言うまでもない。
「けど、グラールは俺の失敗を取り締まったし、わざわざ俺に仕事を回したのも、従順さを期待した結果みたいだった。だから助けた。グラールがそこまで執着するターゲットがなんなのか、知る必要があったし」
「本当にそれだけですか」
「何で?」
「だって、クロノさんにはクロノさんの生活があったはずです。そんなに簡単に、捨てられるものじゃないと思うから……」
彼女は、クロノが元所属結社での生活を呆気なく手放したことに、不安感を隠せないらしい。
グラールを捨てた理由――とりあえず労働条件は悪かった、とクロノは改めて思い返す。
黙って仕事をこなせば、誰であろうと確実に出世出来る、ある種良心的なシステムではあったのだが、大抵の使い手は結社で生き延びることに必死だった。
地位や経験を問わず、凶報は特に珍しいことでもなかったのだ。
同僚や先輩、そして所属したばかりの後輩。昨日まで同じ食堂で昼食を共にしていた相手が、明日には動かなくなって帰ってくる。あるいは、仕事に向かった先で永遠に消息を絶つ。そして、まるでその穴を埋めるかのように、新たな紋章術の使い手が結社へと所属する。どの結社も似たようなものなのかもしれないが、規模の大きな組織程、そういった刹那的なサイクルが顕著に表れるのだろう。クロノが所属する直前には、まだ中学生の少年が殉職したと言う話だった。まだ新入りの立場だったクロノも、それでグラールの仕事の過酷さと冷酷さを何となく理解した。とはいえ、仲間の命と引き換えに敵組織に飼われることを選んだ彼だ。本当なら、グラールがどんな組織で何をしているかなんてことに、興味はなかったのだが。
「友だちがいたんだ」
筋違いな返答だった。
閉口するミント。首を動かせる体勢なら、ことりと傾けられたかもしれない。
クロノは彼女の視線と静かな時計の針の音を受けながら、ややあって、虚空に語りかけるように話し始めた。
親友を孤独にさせまいと、一緒に使い手としての道を選んだこと。
初めて所属した結社のこと。
彼らがグラールの傘下に置かれるのを拒んだこと。
仲間を守るために、囮になったこと。
そして、グラールへの所属理由。
まるで「今日は良い天気ですね」とでも言うみたいに、何でもないことを話す口調だ。あまりにもアンバランスで内容を伴わない言い草は、違和感すら煽ったかもしれない。
クロノの姿は、ミントにはどう映っただろうか。
「その友だちが、君のこと――鍵と人体実験について話したんだ。本当はグラール内部から探りを入れた方が確実だったかもしれないけど。俺みたいな下っ端は、どう足掻いても上層部の情報には行き着けない」
返答のない彼女に、眼差しを向ける。
「だからかな。グラールを捨てるのには、そんなに迷いがなかった」
まあ、俺を引き抜いた上司には悪いと思うけど。
クロノはセラの強面を思い出したのか、微苦笑とともに付け足した。
これまで黙って話を聞いていたミントが、不意に口を開いた。
「でも……それじゃあ、クロノさんが初めにいた結社は」
「どうだろうな。約束通り壊されてるかもしれない。けど、もしかしたら無事かもしれない。確立は低いけど、俺もどこまで内通者に取り入れたのかわからないんだ」
「え?」
怪訝そうに眉根を寄せたミント。
体さえ自由に動けば、クロノは金髪をわさわさと掻いていただろう。
――あんまりこういうこと話したくないんだけどなぁ。
「俺は、内通者を知ってたから」
ぽつりと呟きながら、彼は想起する。
とてもスパイには見えないような、実直な男だった。
クロノはグラールに所属する前までは、結社の仲間と言うものを少なくとも信じていた。
だから、偶然の産物だ。
男が仕事で負った怪我のせいでベッドに臥せっていた時だ。
彼の所有物を整理していると、手当ての際に外したロケットを床に落としてしまった。男が肌身離さず身に付けていたものだった。落下した拍子に、蓋の開いたロケット。傷でも付いていないかと不安げに拾い上げると、はめ込まれた写真が僅かにずれていた。……そこに見覚えのない機器が内蔵されていた。
とっさに飛び起きた男の首筋へ、クロノはナイフを突き付けた。
機器の正体は、通信機だった。
目を凝らさないと見落とす程の微細なものだ。
そして何より、男の焦燥が全てを物語っていた。
「そいつがどこの命令で潜り込んだ奴なのかわかったら、他にやりようがあったんだけどな。吐くぐらいなら殺された方がマシだって言って聞かなかったんだ」
だから、ロケットの写真を見て、一言呟いた。
これはあんたの家族か、と。
ナイフ片手の詰問に、ぞっと血の気の引いた男の顔を、クロノは今でもよく覚えている。
ロケットの写真には、幼い少年が映っていた。
ついさっきまで彼の包帯を巻き直していたその手で、男の家族へと切っ先を突き付けたのだ。
男の立場が他のメンバーに知れれば、生易しい方法なら情報を吐くまで尋問されるか、早々に摘まみ出されるか。拷問を行なったり、問答無用で命を奪ったりするとは思えなかったが、仮にも鍵の争奪戦に参戦している結社だ。どういう手段を講じるかはわからなかった。
だから、クロノは、男を殺さないこと、結社のメンバーにも黙っておくことを告げた。
その代わり、本来の上司の命令には従わない。決定的な情報は漏らさない、と誓わせた。
それに背けばどうなるか。
そんなことは、男の妄想が勝手に補ってくれた。
何せ当時のクロノはそこまで結社と言う闇社会に通じた人間ではなかったのだ。写真一枚で男の家族をどうにか出来る程の情報力は、そもそも持ち合わせていなかった。
要するに、男を縛る枷になれば何でも良かったのだ。
クロノのハッタリは、十分に効力を発揮した。
君がわからない。男はクロノと二人きりになると、よくそんなことを漏らしていた。
通信機の一件以来、クロノは殊に彼を敵視するでもなく、普段と変わらず接していた。
その態度は、まるで同じ結社の〝仲間〟のようだった。諜報を担うような相手に、恐喝だけでは束縛が足りないと判断したのか、それとも、クロノ自身が単に男の家族を巻き込むことに、抵抗を感じていたのか。恐らく、両者とも当てはまっていたのだろう。
クロノは男を警戒することより、取り入ることに専念した。
家族の安全すら保障せずに、身一つで諜報をやらせるような結社じゃなく、クロノたちの結社へと揺らぐように仕向けたのだ。出来れば穏便に済ませたい、と言うのがクロノの本音だったのかもしれない。
そして、男のバックにいるのがグラールだと察したのは、奴らに合併申告を持ちかけられたからだった。まさか自分たちのような小さな結社に、有力組織が事を仕掛けてくるとは思わなかったのだ。それほどの組織が絡んでいるのなら、もっと確実な手段に出るべきだった。
男の正体に気付いた時点で、口封じする。
対応するには、遅すぎた。
「結局、俺が人を殺したくなかっただけかもしれないけどな」
詰めが甘かったんだ、と場違いに微笑んだクロノ。
ミントは傷が痛んだような、やりきれない表情を浮かべた。
「要するに、内通者は俺の要求に従うか、グラールの命令に従うか、天秤にかけたはずなんだ」
前者が沈んだなら、クロノの元祖所属結社は無事だろう。
しかし、後者が重んじられたら――。
「きっと大丈夫です」
「……まあ考えても仕方ないからな」
「違います。だって、仕事なんかより家族の方が大事ですから」
「ああ。だから、それを引っ張り出されたら終わりだ。グラールは俺より卑怯だし」
自嘲にしては苦味の多すぎる言葉だった。
何せ、クロノはグラールに所属してすぐ、男が大事にしていた写真の男の子とよく似た顔と出会っているのだ。
クロノの史上最悪のタッグ相手。そいつがまさに、その少年の面差しを残していた。
これ以上に皮肉な話はない。男は七つの鍵や結社などとは無縁の、平穏な世界にいる弟を守ろうとしていた。たった一人の家族なんだ、と必死になっていた。
だからこそ、クロノの恐喝に血相を変えて首を振ったのに。
彼が長い諜報活動に身を投じているうちに、弟が変わってしまったのだろうか。それとも、元からそういう素質があったのか。
写真の少年は、紋章術の使い手としてグラールに所属していた。
それも、あらん限りの殺気を振り撒きながら、鬼ごっこと称して凶器片手にターゲットを追いかけ回す使い手だ。奴は狂っている。
結社が男の思惑を汲んだ上で彼を引き入れたのなら、あまりにも残酷すぎた。
脳裏に、ガンズの歪み切った笑顔がよぎる。
クロノは僅かに口際を噛み締めた。
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