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第1章
044
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部屋を出るなり、少年は青年の進行方向へと飛び出す。
良い加減慣れたのか、それとも本格的に面倒になったのか、足を止めたままシグドは無言でクロノを見つめる。彼は次の言葉を待っていた。
「聞きたいことがあるんだ」
「だから、何かあれば――」
「真面目に聞けよ」
少年にしては珍しく、乱暴な物言いだった。
互いに相手の様子を窺うように、交差する深紅色と深紫色。
クロノは、シグドと言う人物の人となりを、実は意外なところで律義であることを理解していた。だから、このまま押し切れば青年の方が先に折れることは確信していた。……だが、それは裏を返せば青年もまた少年のことを知っていると言うことでもある。獲物を逃がさんとする気配を漂わせるクロノに、言い出したら聞かないのはどっちだ、とシグドが小さくぼやく。
そして、青年は諦めたように深く息を吐く。
「…………ひとつだけなら答えてやる」
これが最大の譲歩だと言わんばかりだったが、願ってもない返事だった。
クロノは内心ガッツポーズをした。
「じゃあ……」
言いかけて、はたと止まった。
本心で言えば何よりも知りたいのは『鍵』の情報だ。
だが、とクロノは冷静に考える。
鍵に関しての情報は、今、わざわざ彼に聞かずとも後々で手に入る可能性は高い。何しろ、今置かれている状況は鍵の争奪戦だ。もちろん、優位に立つためには少しでも多くの情報が欲しいのは事実だが、戦力や置かれた状況を考えれば持て余す可能性もある。
優先度は高いが、現状ではそこまで拘る理由もないだろう。
そうなれば、今聞くべきは別のこと、――『人体実験』のことではないだろうか。
「……?」
口を噤んだクロノを、シグドは怪訝そうに見つめた。
クロノ自身、グラールの人体実験については、話に聞いた程度でしか知らない。そして、ガンズの話によれば正直なところ関係ないのも事実だろう。
それでも知りたいと思う理由は、萌葱色の髪の少女。
不可解な点が多すぎるのだ、他人事では片付けられない。
少女が告げた精霊と言う存在や、ガンズが身をもって説明した意味不明な期限。実験の結果生まれた鍵の模造品と使い手。まだどこかに、クロノの知らない何かがある。そう思わせるのには十分な程、それら全ての現象が繋がらないのだ。
思えば、こうなった原因を作ったのは、この銀髪ではなかっただろうか。
本人にどんな意図があったか知らない。だが、旧友が告げた〝鍵の模造品〟がきっかけなのは確かだ。知ってしまったから、覗いてしまったから、クロノはこうしてグラールを追われカリバーンに居座っているのだ。何も知らないままだったら、元上司が殉職することはなかったのかもしれない。だけどそれは同時に、連れの少女や銀髪の幼馴染みの置かれている状況を知ることもなかったと言うことでもある。
どちらの方が良かったのかなど今更な話だ。
「聞きたいのは実験のことだ。……お前、言ってただろ。あいつは――ミントは鍵の模造品の、失敗作だって」
「ああ、言ったな」
「どういうことだ? お前が知ってることを、俺にも教えてほしい」
要は、情報の共有がしたいのだ。
話題になっている少女は、現在クロノがタッグを組んでいる相手だ。無関係ではない。
と、シグドが銀髪を揺らした。
「この前も言ったが、俺もそれ以上は知らねえよ。知ってそうな奴に聞けと言っただろ」
随分ぞんざいな言い方だった。
だが、言葉数の多さに青年なりに真面目に答えていることはわかった。
おそらく、彼もその情報は誰かから聞いたのだろう。そして、その詳細を調べるために、あの晩ミントが出現させた公園に姿を現したのかもしれない。
クロノはちらりと、青年の肩越しに薄金の髪を見やる。
「俺がさっき戦ったグラールの使い手は、実験で紋章術を無理に定着させたと言っていた」
「…………」
「それは、鍵の模造品と、何か関係あるのか?」
「……逆に聞くが、お前はどこまで情報を持っていて、何を知りたいんだ?」
「それは……」
思わずクロノは言いよどんだ。
元相棒の最期について、どう話すべきなのか迷ったのだ。
実験によって無理に定着させた紋章術を酷使した結果、彼は片腕が消えると言う現象を起こした。それが、彼限定のものではなく、実験によって紋章術を無理に定着させた代償であることは本人の発言が証明している。デキが違う、とガンズは言っていた。だが、魔道具を用いて鍵の模造品を作る実験は、紋章術を無理に定着させると言う実験と同様に、一般人を素材に強制的に紋章術の使い手を生み出すと言う結果をもたらしている。ならば、ミントも紋章術を使いすぎれば身体を消失させてしまう可能性があるのは事実だ。だからこそ、その関係性を知りたいクロノだったのだが。
そんな少年の思考を遮るように、シグドが呆れたため息を吐いた。
不思議そうに青年を見やったクロノの表情が微かに曇る。
僅かに表情を歪めたシグドが、困ったような微笑を浮かべていた。
「俺は良く知らない。……だから、今度にしてくれ」
突き放す物言いだった。
それは、遠回しに回答を拒否したことを意味している。
これ以上質問を重ねても薮蛇だろうし、下手に逆鱗に触れて金輪際この手の話題を拒絶されることだけは避けたい。何より、ひとつだけと言われている以上深追いは出来ない。
ここら辺が潮時だろう、とクロノはふと肩の力を抜いた。
「……そうだな、そうするよ」
――それに、シグドも本格的に帰りたい気分らしいし。
表情を曇らせたまま口を噤んだ旧友を見やり、小さくため息を零した少年はその銀色から目を逸らす。そして、近道でもある封印扉へ案内しようと一歩踏み出した時だ。
「…………クロノ」
「え?」
ぽつりと呼ばれた名前に、少年は旧友を振り返る。
「お前が知りたいのは、お前の連れが関わった実験だろ?」
「そうだけど」
「なら、関係結社に潜入してみろ。その方が手っ取り早く情報を集められる」
「潜入するったって、どこにだよ?」
「聖槍」
思わず、クロノは言葉を詰まらせた。
人体実験の噂が流れているグラールならともかく、別の結社の名が出たことに少年は驚きを隠せなかった。聖槍と言えば、鍵を開けたと言われる結社だ。
術師結社ガエブルグ――。
そこは、聖槍を刻印したエンブレムを象徴としている組織であり、『聖杯』グラールや、『聖剣』カリバーンと並ぶ三大結社のひとつだ。そもそも、三大結社とは『聖』を持つ魔道具を象徴とする結社のことを示しており、こちら側にいる人間ならば誰だって知っているくらい名実共に有名であり、強大な組織でもある。カリバーンのように都市伝説よろしく噂されている風前の灯火である方が珍しいくらいなのだ。
だから、グラールと同じく、人体実験を行う理由がないはずなのだが。
と、嫌に静かになった廊下に大声が響く。
「ちょっと待て青年!」
エイレンだった。
聞き耳でも立てていたのだろう。部屋から飛び出すなり、今にも掴み掛かりそうな勢いでシグドに話しかけたが、当の本人は当然のように無視である。
「もう話は終わりだ、クロノ。俺たちは帰らせてもらう」
クロノは苦笑いだけを返した。
こればかりは了承せざるを得なかった。それに、少年としても元々幼馴染みをそろそろ帰らせるつもりであった手前、これ以上引き止める理由もない。求めていたものとは随分違うものだったが、問いに答えをもらったのも事実だ。
エイレンには悪いが、幼馴染みとの約束を優先させてもらおう。
「そうだな、何かあれば電話する」
元々そういう話だった。
忘れるなと意味を込めて、クロノは釘を刺しておく。不機嫌そうな目が向けられた気がしたが、当然の行使だと言わんばかりにクロノはその視線を受け流した。
クロノと言う仲間を得られなかったエイレンは何か言いたそうにしていたが、先の発言があるだけに、これ以上口を挟んでくることはなかった。自身の発言に責任を持つ辺り、その肩書きを背負うだけの意識と自覚はあるようだ。
「じゃあ、出口まで案内してあげるよー」
そんなエイレンの代わりと言わんばかりに口を挟んできたのは、ナツメだった。
童顔術師は転がるように部屋から出て来ると、そのままシグドの隣に並ぶ。あからさまに嫌そうな表情をした青年を気にせずナツメが何かを囁く。
「珍しいこともあるものね」
面白いものを見た、と言いたげなビビアンの声が聞こえた。常ならば「何に対してだ」くらいは言及するクロノではあるが。今回ばかりはそれよりも気になることがあった。
開け放たれたままの扉から顔を覗かせた萌葱色の少女。彼女が、縋るような乞うような眼差しでその背中を見送っていたこと、何かの衝動を必死に抑えていることが見て取れた。
やがて、大袖振って歩き出したツインテールの後ろを、仕方なくと言った様子で諦めた銀髪が大人しく付いて行く。
立ち去る前、深紫色が見透かすようにクロノを見やった。
だが、結局彼は何も言わなかった。
だからだったのかもしれない。クロノも、無言で旧友の背中を見送った。
良い加減慣れたのか、それとも本格的に面倒になったのか、足を止めたままシグドは無言でクロノを見つめる。彼は次の言葉を待っていた。
「聞きたいことがあるんだ」
「だから、何かあれば――」
「真面目に聞けよ」
少年にしては珍しく、乱暴な物言いだった。
互いに相手の様子を窺うように、交差する深紅色と深紫色。
クロノは、シグドと言う人物の人となりを、実は意外なところで律義であることを理解していた。だから、このまま押し切れば青年の方が先に折れることは確信していた。……だが、それは裏を返せば青年もまた少年のことを知っていると言うことでもある。獲物を逃がさんとする気配を漂わせるクロノに、言い出したら聞かないのはどっちだ、とシグドが小さくぼやく。
そして、青年は諦めたように深く息を吐く。
「…………ひとつだけなら答えてやる」
これが最大の譲歩だと言わんばかりだったが、願ってもない返事だった。
クロノは内心ガッツポーズをした。
「じゃあ……」
言いかけて、はたと止まった。
本心で言えば何よりも知りたいのは『鍵』の情報だ。
だが、とクロノは冷静に考える。
鍵に関しての情報は、今、わざわざ彼に聞かずとも後々で手に入る可能性は高い。何しろ、今置かれている状況は鍵の争奪戦だ。もちろん、優位に立つためには少しでも多くの情報が欲しいのは事実だが、戦力や置かれた状況を考えれば持て余す可能性もある。
優先度は高いが、現状ではそこまで拘る理由もないだろう。
そうなれば、今聞くべきは別のこと、――『人体実験』のことではないだろうか。
「……?」
口を噤んだクロノを、シグドは怪訝そうに見つめた。
クロノ自身、グラールの人体実験については、話に聞いた程度でしか知らない。そして、ガンズの話によれば正直なところ関係ないのも事実だろう。
それでも知りたいと思う理由は、萌葱色の髪の少女。
不可解な点が多すぎるのだ、他人事では片付けられない。
少女が告げた精霊と言う存在や、ガンズが身をもって説明した意味不明な期限。実験の結果生まれた鍵の模造品と使い手。まだどこかに、クロノの知らない何かがある。そう思わせるのには十分な程、それら全ての現象が繋がらないのだ。
思えば、こうなった原因を作ったのは、この銀髪ではなかっただろうか。
本人にどんな意図があったか知らない。だが、旧友が告げた〝鍵の模造品〟がきっかけなのは確かだ。知ってしまったから、覗いてしまったから、クロノはこうしてグラールを追われカリバーンに居座っているのだ。何も知らないままだったら、元上司が殉職することはなかったのかもしれない。だけどそれは同時に、連れの少女や銀髪の幼馴染みの置かれている状況を知ることもなかったと言うことでもある。
どちらの方が良かったのかなど今更な話だ。
「聞きたいのは実験のことだ。……お前、言ってただろ。あいつは――ミントは鍵の模造品の、失敗作だって」
「ああ、言ったな」
「どういうことだ? お前が知ってることを、俺にも教えてほしい」
要は、情報の共有がしたいのだ。
話題になっている少女は、現在クロノがタッグを組んでいる相手だ。無関係ではない。
と、シグドが銀髪を揺らした。
「この前も言ったが、俺もそれ以上は知らねえよ。知ってそうな奴に聞けと言っただろ」
随分ぞんざいな言い方だった。
だが、言葉数の多さに青年なりに真面目に答えていることはわかった。
おそらく、彼もその情報は誰かから聞いたのだろう。そして、その詳細を調べるために、あの晩ミントが出現させた公園に姿を現したのかもしれない。
クロノはちらりと、青年の肩越しに薄金の髪を見やる。
「俺がさっき戦ったグラールの使い手は、実験で紋章術を無理に定着させたと言っていた」
「…………」
「それは、鍵の模造品と、何か関係あるのか?」
「……逆に聞くが、お前はどこまで情報を持っていて、何を知りたいんだ?」
「それは……」
思わずクロノは言いよどんだ。
元相棒の最期について、どう話すべきなのか迷ったのだ。
実験によって無理に定着させた紋章術を酷使した結果、彼は片腕が消えると言う現象を起こした。それが、彼限定のものではなく、実験によって紋章術を無理に定着させた代償であることは本人の発言が証明している。デキが違う、とガンズは言っていた。だが、魔道具を用いて鍵の模造品を作る実験は、紋章術を無理に定着させると言う実験と同様に、一般人を素材に強制的に紋章術の使い手を生み出すと言う結果をもたらしている。ならば、ミントも紋章術を使いすぎれば身体を消失させてしまう可能性があるのは事実だ。だからこそ、その関係性を知りたいクロノだったのだが。
そんな少年の思考を遮るように、シグドが呆れたため息を吐いた。
不思議そうに青年を見やったクロノの表情が微かに曇る。
僅かに表情を歪めたシグドが、困ったような微笑を浮かべていた。
「俺は良く知らない。……だから、今度にしてくれ」
突き放す物言いだった。
それは、遠回しに回答を拒否したことを意味している。
これ以上質問を重ねても薮蛇だろうし、下手に逆鱗に触れて金輪際この手の話題を拒絶されることだけは避けたい。何より、ひとつだけと言われている以上深追いは出来ない。
ここら辺が潮時だろう、とクロノはふと肩の力を抜いた。
「……そうだな、そうするよ」
――それに、シグドも本格的に帰りたい気分らしいし。
表情を曇らせたまま口を噤んだ旧友を見やり、小さくため息を零した少年はその銀色から目を逸らす。そして、近道でもある封印扉へ案内しようと一歩踏み出した時だ。
「…………クロノ」
「え?」
ぽつりと呼ばれた名前に、少年は旧友を振り返る。
「お前が知りたいのは、お前の連れが関わった実験だろ?」
「そうだけど」
「なら、関係結社に潜入してみろ。その方が手っ取り早く情報を集められる」
「潜入するったって、どこにだよ?」
「聖槍」
思わず、クロノは言葉を詰まらせた。
人体実験の噂が流れているグラールならともかく、別の結社の名が出たことに少年は驚きを隠せなかった。聖槍と言えば、鍵を開けたと言われる結社だ。
術師結社ガエブルグ――。
そこは、聖槍を刻印したエンブレムを象徴としている組織であり、『聖杯』グラールや、『聖剣』カリバーンと並ぶ三大結社のひとつだ。そもそも、三大結社とは『聖』を持つ魔道具を象徴とする結社のことを示しており、こちら側にいる人間ならば誰だって知っているくらい名実共に有名であり、強大な組織でもある。カリバーンのように都市伝説よろしく噂されている風前の灯火である方が珍しいくらいなのだ。
だから、グラールと同じく、人体実験を行う理由がないはずなのだが。
と、嫌に静かになった廊下に大声が響く。
「ちょっと待て青年!」
エイレンだった。
聞き耳でも立てていたのだろう。部屋から飛び出すなり、今にも掴み掛かりそうな勢いでシグドに話しかけたが、当の本人は当然のように無視である。
「もう話は終わりだ、クロノ。俺たちは帰らせてもらう」
クロノは苦笑いだけを返した。
こればかりは了承せざるを得なかった。それに、少年としても元々幼馴染みをそろそろ帰らせるつもりであった手前、これ以上引き止める理由もない。求めていたものとは随分違うものだったが、問いに答えをもらったのも事実だ。
エイレンには悪いが、幼馴染みとの約束を優先させてもらおう。
「そうだな、何かあれば電話する」
元々そういう話だった。
忘れるなと意味を込めて、クロノは釘を刺しておく。不機嫌そうな目が向けられた気がしたが、当然の行使だと言わんばかりにクロノはその視線を受け流した。
クロノと言う仲間を得られなかったエイレンは何か言いたそうにしていたが、先の発言があるだけに、これ以上口を挟んでくることはなかった。自身の発言に責任を持つ辺り、その肩書きを背負うだけの意識と自覚はあるようだ。
「じゃあ、出口まで案内してあげるよー」
そんなエイレンの代わりと言わんばかりに口を挟んできたのは、ナツメだった。
童顔術師は転がるように部屋から出て来ると、そのままシグドの隣に並ぶ。あからさまに嫌そうな表情をした青年を気にせずナツメが何かを囁く。
「珍しいこともあるものね」
面白いものを見た、と言いたげなビビアンの声が聞こえた。常ならば「何に対してだ」くらいは言及するクロノではあるが。今回ばかりはそれよりも気になることがあった。
開け放たれたままの扉から顔を覗かせた萌葱色の少女。彼女が、縋るような乞うような眼差しでその背中を見送っていたこと、何かの衝動を必死に抑えていることが見て取れた。
やがて、大袖振って歩き出したツインテールの後ろを、仕方なくと言った様子で諦めた銀髪が大人しく付いて行く。
立ち去る前、深紫色が見透かすようにクロノを見やった。
だが、結局彼は何も言わなかった。
だからだったのかもしれない。クロノも、無言で旧友の背中を見送った。
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