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第1章
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「どうして半日も放置されたんです? ご自分でも、傷の程度ぐらいおわかりになるでしょう」
木造の洋館の一室。
落ち着いたココアブラウンの本棚を横目に眺めながら、クロノは頬を覆う絆創膏に僅かにしわを寄せた。
部屋の入り口では、ミントが痛々しげに彼を見つめている。
ベッド脇に置かれた椅子から、丈の長い白衣を垂らし、少年の腕の傷に針を通していく男性。
エイレンは、クロノの負傷を、単に自然治癒を待ったのでは危ないと見たらしい。どう言うパイプを用いたのか、一般の病院から医者を呼び込んだ。
ミントから持ち越しにしていた話を聞き出そうとしたら、「医者です」といきなり登場して、これだ。とはいえ、やはり本職だけあって、少年が自分で施した見よう見真似の応急処置とは手際が違った。
クロノが巻き付けていた包帯を、傷に障らないように迅速に取り去ると、まるでぬいぐるみの綿でも詰め直すように、手慣れた様子で糸を通していく。
銀縁の眼鏡を通した漆瞳は、真剣そのものだった。
チクチクと傷を縫い合わせながら、しかし口元のマスク越しに説教は続く。
「参りますね、これだから使い手さん方は。……先々代からの伝統とは言え、うちももう結社関係の非合法な患者さんは、お断りする体制を敷くべきでしょうか。それとも、今更お断りしたら病院を潰しに来られますか?」
「…………」
「当院は本来、派遣業務は行いません。治療をご希望でしたら、ちゃんと来院して頂いて、一般の患者さんと同じように診させて下さい。その方が設備も整っていますし衛生的でしょう」
「…………」
「大体、感染症にでもなったらどうされるおつもりですか。もちろん当院で治療の際は、他の患者さんの目には触れないように配慮致します。使い手さんも静かにしていて下されば、一般の方と変わりありませんから――」
「あの。治療しに来たんですよね」
説教しに来たんじゃないだろ、と言いたげなクロノの眼差しに、男性は肩を揺らしてため息を零した。
クロノは縫い合わされていく片腕から、黒い糸がピンと張られるのを見やる。痛みに慣れているからなのか、それとも少年の痛覚に異常でもあるのか、麻酔すらかかっていないと言うのに、その表情はさして動かない。
何しろ、治療費と時間がもったいない、とクロノ自身が局所麻酔の推奨を一蹴したのだ。「副作用で酔っ払う場合もあるって聞いたし。余計なこと喋ったら困るから」との少年の結社関係者としての言い分に、男性が頭を抱えたのは言うまでもない。
麻酔なしの縫合。
ちょっとした裂傷であればあり得ない話でもなかったが、クロノの場合は、ナイフが刺さった表面と突き破られた裏面、つまり腕の表裏を何針にも渡って縫い合わせることになる。
ミントは卒倒しそうに青褪めた顔をした。
部屋から出るように言ったクロノだったが、何か思うところがあったのか、彼女は椅子に腰掛けて動かなかった。
ところが、いざ治療を始めて痛みで騒がれては困ると彼を押さえ付ける役に、医者は派遣業務を押し付けてきた結社リーダーを抜擢したものの、いくら針を通そうが糸を張ろうが少年は眉をしかめるだけに止まっていた。何より、エイレンの方がその代役とばかりに騒ぎ立てるので、治療の邪魔でしかなかったようだ。
さっさと退散してもらって現在に至る。
「人間は一度に大量に出血すると死んでしまうものなんですよ、普通はね。ご存知ですか」
「……知ってます。紋章術の使い手だって人間だし」
「嘘でしょう。現代医学を無視してるじゃありませんか、使い手さん方は」
男性いわく、生来の紋章術の使い手は、元々自然治癒力が優れており、常人の三、四倍の早さで傷が完治してしまう場合もあるのだそうだ。古来から鍵と魔導器を巡って、魔法術や紋章術が用いられてきた所為なのだろうか。紋章術の使い手は、もはや戦うための人種と言っても過言ではないらしい。貴方方は遺伝子の事故です、と医者のレンズ越しの瞳が、宇宙人でも見るような目をクロノへと向けていた。
問題発言も良いところだが、一理あるのかもしれなかった。
グラールの人体実験のように人為的に植え付ける場合は別として、普通、紋章術の使い手は一般家庭からある日突然、誕生する。そのためか、自身の能力に気付く機会がなく、完全な一般人として一生を過ごす者もいると言われるくらいなのだ。
隔世遺伝なのか、根拠のない奇跡なのか。
遺伝子レベルで解析を行おう、と言う動きが医療界や研究学会の裏で見られるらしいが、未だ解明されていないと言うことは、結局、現代の科学でどうにかなる問題でもないのだろう。
とはいえ、結社に圧力をかけられている可能性も、無きにしも非ずだ。
「差し支えなければお答え下さい。結社の皆さんにとって、薬剤や輸血はタブーですか」
「……別にタブーなんてないと思いますよ。他の結社は知らないですけど」
「宗派があるわけですか。では、忌み数字が並んだ日に、死んだ仲間の臓器を食するのは?」
「やったことないな」
「敵対結社の人間を捕まえては、バラして裏社会に売り飛ばすそうですが」
「…………」
外部の人間が、結社に対してどういう偏見と知識を持っているのかがよくわかる。
タブーとされるのは、普通の会社と同じように結社内の規律に背くことだし、そもそも宗派なんてものはない。
無理もなかった。
どこの結社も、妙な吹聴をされるだけのことはやらかしている。実際、この日、白昼のビル街で行われた術戦は、メディアに大きく取り上げられていた。
焼け焦げた建物と、一般人の犠牲。
最も被害を被ったと見られるリアフェール本部だが、大量の血痕だけが残されていたらしい。
要するに、殉職者の遺体は、敵味方問わず回収済みだったという訳だ。グラールの仕事の早さに、クロノは毎度のごとく虫唾が走る思いだ。もはや結社間の抗争は、法が縛り切れる規模ではない。それどころか、近頃は術師結社と国政の癒着まで報じられる始末。
壁沿いの椅子で膝を揃えているミントは、元一般人として複雑な気持ちなのだろう。ひどく思い詰めたような顔をしていた。
伸ばされた黒糸が手早く結ばれて、ハサミで切られる。
縫合が終わった途端、無造作な手先だ。クロノの腕にぐるぐると包帯が巻かれた。
「……使い手さんのお体でも、壊死が起きるのどうかは存じませんが。患部はくれぐれも清潔に保って下さい」
包帯交換は二日に一度で結構です。
早口に言い切ると、医者はカバンへ医療用具をしまい込む。
ナイフが腕の裏側まで貫通した上に、無理やり引っこ抜いたのに、傷口を縫っただけで大丈夫なのかと、いやに他人事のように傷を見やるクロノだが、医者は紋章術の使い手とは先先代からの腐れ縁だそうだ。本人もさして意識したことのなかった使い手の治癒力を知っている辺り、恐らく、彼の治療は信用しても問題ないのだろう。
だが、さっさと立ち上がった白衣に、クロノは声をかけた。
「生来の使い手と、人工の使い手がいるのを知ってますか」
白衣の後ろで、ミントが不意に顔を上げるのが見えた。
どうしてそんなことをこの人に聞くのか、と言いたげに、視線が訴えている。
クロノの問いに、やはり男性は特に感慨もなさげに、眼鏡のブリッジを押し上げた。
「それを私に聞かれましても」
「じゃあ、ある結社で、七つの鍵を作るための人体実験が行なわれているのは知ってますか」
「……興味深いお話ですが。私はこの通り、ただの医者ですので。そちらの世界に関しては存じ上げません」
愛想笑いのような声音だった。
しかし、クロノは医療用具のしまわれたバッグへと、つと目を落とした。
「ただの医者が、そんなの持ち帰ってどうするんですか?」
無言で、ぱちぱち目をしばたかせるミント。
それは傍からしてみれば、不思議な詰問だっただろう。
医者が医療用具を持ち帰ってどうするんだ、と聞いているように見えるのだから。
しかし、男性は滑らかに繰り出していた丁寧口調を、ぴたりと止めていた。
木造の洋館の一室。
落ち着いたココアブラウンの本棚を横目に眺めながら、クロノは頬を覆う絆創膏に僅かにしわを寄せた。
部屋の入り口では、ミントが痛々しげに彼を見つめている。
ベッド脇に置かれた椅子から、丈の長い白衣を垂らし、少年の腕の傷に針を通していく男性。
エイレンは、クロノの負傷を、単に自然治癒を待ったのでは危ないと見たらしい。どう言うパイプを用いたのか、一般の病院から医者を呼び込んだ。
ミントから持ち越しにしていた話を聞き出そうとしたら、「医者です」といきなり登場して、これだ。とはいえ、やはり本職だけあって、少年が自分で施した見よう見真似の応急処置とは手際が違った。
クロノが巻き付けていた包帯を、傷に障らないように迅速に取り去ると、まるでぬいぐるみの綿でも詰め直すように、手慣れた様子で糸を通していく。
銀縁の眼鏡を通した漆瞳は、真剣そのものだった。
チクチクと傷を縫い合わせながら、しかし口元のマスク越しに説教は続く。
「参りますね、これだから使い手さん方は。……先々代からの伝統とは言え、うちももう結社関係の非合法な患者さんは、お断りする体制を敷くべきでしょうか。それとも、今更お断りしたら病院を潰しに来られますか?」
「…………」
「当院は本来、派遣業務は行いません。治療をご希望でしたら、ちゃんと来院して頂いて、一般の患者さんと同じように診させて下さい。その方が設備も整っていますし衛生的でしょう」
「…………」
「大体、感染症にでもなったらどうされるおつもりですか。もちろん当院で治療の際は、他の患者さんの目には触れないように配慮致します。使い手さんも静かにしていて下されば、一般の方と変わりありませんから――」
「あの。治療しに来たんですよね」
説教しに来たんじゃないだろ、と言いたげなクロノの眼差しに、男性は肩を揺らしてため息を零した。
クロノは縫い合わされていく片腕から、黒い糸がピンと張られるのを見やる。痛みに慣れているからなのか、それとも少年の痛覚に異常でもあるのか、麻酔すらかかっていないと言うのに、その表情はさして動かない。
何しろ、治療費と時間がもったいない、とクロノ自身が局所麻酔の推奨を一蹴したのだ。「副作用で酔っ払う場合もあるって聞いたし。余計なこと喋ったら困るから」との少年の結社関係者としての言い分に、男性が頭を抱えたのは言うまでもない。
麻酔なしの縫合。
ちょっとした裂傷であればあり得ない話でもなかったが、クロノの場合は、ナイフが刺さった表面と突き破られた裏面、つまり腕の表裏を何針にも渡って縫い合わせることになる。
ミントは卒倒しそうに青褪めた顔をした。
部屋から出るように言ったクロノだったが、何か思うところがあったのか、彼女は椅子に腰掛けて動かなかった。
ところが、いざ治療を始めて痛みで騒がれては困ると彼を押さえ付ける役に、医者は派遣業務を押し付けてきた結社リーダーを抜擢したものの、いくら針を通そうが糸を張ろうが少年は眉をしかめるだけに止まっていた。何より、エイレンの方がその代役とばかりに騒ぎ立てるので、治療の邪魔でしかなかったようだ。
さっさと退散してもらって現在に至る。
「人間は一度に大量に出血すると死んでしまうものなんですよ、普通はね。ご存知ですか」
「……知ってます。紋章術の使い手だって人間だし」
「嘘でしょう。現代医学を無視してるじゃありませんか、使い手さん方は」
男性いわく、生来の紋章術の使い手は、元々自然治癒力が優れており、常人の三、四倍の早さで傷が完治してしまう場合もあるのだそうだ。古来から鍵と魔導器を巡って、魔法術や紋章術が用いられてきた所為なのだろうか。紋章術の使い手は、もはや戦うための人種と言っても過言ではないらしい。貴方方は遺伝子の事故です、と医者のレンズ越しの瞳が、宇宙人でも見るような目をクロノへと向けていた。
問題発言も良いところだが、一理あるのかもしれなかった。
グラールの人体実験のように人為的に植え付ける場合は別として、普通、紋章術の使い手は一般家庭からある日突然、誕生する。そのためか、自身の能力に気付く機会がなく、完全な一般人として一生を過ごす者もいると言われるくらいなのだ。
隔世遺伝なのか、根拠のない奇跡なのか。
遺伝子レベルで解析を行おう、と言う動きが医療界や研究学会の裏で見られるらしいが、未だ解明されていないと言うことは、結局、現代の科学でどうにかなる問題でもないのだろう。
とはいえ、結社に圧力をかけられている可能性も、無きにしも非ずだ。
「差し支えなければお答え下さい。結社の皆さんにとって、薬剤や輸血はタブーですか」
「……別にタブーなんてないと思いますよ。他の結社は知らないですけど」
「宗派があるわけですか。では、忌み数字が並んだ日に、死んだ仲間の臓器を食するのは?」
「やったことないな」
「敵対結社の人間を捕まえては、バラして裏社会に売り飛ばすそうですが」
「…………」
外部の人間が、結社に対してどういう偏見と知識を持っているのかがよくわかる。
タブーとされるのは、普通の会社と同じように結社内の規律に背くことだし、そもそも宗派なんてものはない。
無理もなかった。
どこの結社も、妙な吹聴をされるだけのことはやらかしている。実際、この日、白昼のビル街で行われた術戦は、メディアに大きく取り上げられていた。
焼け焦げた建物と、一般人の犠牲。
最も被害を被ったと見られるリアフェール本部だが、大量の血痕だけが残されていたらしい。
要するに、殉職者の遺体は、敵味方問わず回収済みだったという訳だ。グラールの仕事の早さに、クロノは毎度のごとく虫唾が走る思いだ。もはや結社間の抗争は、法が縛り切れる規模ではない。それどころか、近頃は術師結社と国政の癒着まで報じられる始末。
壁沿いの椅子で膝を揃えているミントは、元一般人として複雑な気持ちなのだろう。ひどく思い詰めたような顔をしていた。
伸ばされた黒糸が手早く結ばれて、ハサミで切られる。
縫合が終わった途端、無造作な手先だ。クロノの腕にぐるぐると包帯が巻かれた。
「……使い手さんのお体でも、壊死が起きるのどうかは存じませんが。患部はくれぐれも清潔に保って下さい」
包帯交換は二日に一度で結構です。
早口に言い切ると、医者はカバンへ医療用具をしまい込む。
ナイフが腕の裏側まで貫通した上に、無理やり引っこ抜いたのに、傷口を縫っただけで大丈夫なのかと、いやに他人事のように傷を見やるクロノだが、医者は紋章術の使い手とは先先代からの腐れ縁だそうだ。本人もさして意識したことのなかった使い手の治癒力を知っている辺り、恐らく、彼の治療は信用しても問題ないのだろう。
だが、さっさと立ち上がった白衣に、クロノは声をかけた。
「生来の使い手と、人工の使い手がいるのを知ってますか」
白衣の後ろで、ミントが不意に顔を上げるのが見えた。
どうしてそんなことをこの人に聞くのか、と言いたげに、視線が訴えている。
クロノの問いに、やはり男性は特に感慨もなさげに、眼鏡のブリッジを押し上げた。
「それを私に聞かれましても」
「じゃあ、ある結社で、七つの鍵を作るための人体実験が行なわれているのは知ってますか」
「……興味深いお話ですが。私はこの通り、ただの医者ですので。そちらの世界に関しては存じ上げません」
愛想笑いのような声音だった。
しかし、クロノは医療用具のしまわれたバッグへと、つと目を落とした。
「ただの医者が、そんなの持ち帰ってどうするんですか?」
無言で、ぱちぱち目をしばたかせるミント。
それは傍からしてみれば、不思議な詰問だっただろう。
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