今更ながらダンジョンに潜る事になりまして

名嵐

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32話

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 懇親会も終わって園田さんや田部さんたちと別れて戻ったホテルで俺は今日貰った資料とかを整理していた。
 田部さんを紹介してもらった後もちょいちょい園田さんは自分の知り合いを見かけたらテーブルに連れてきたので最後は十人前後の人数で話す事になったが、その分だけ情報交換も営業もできた気がするから良かったと思う。

「さて、あとは名刺の確認と企業情報の確認すれば良いかな?」

 明日の講習の為に資料関係は早めに持っていく鞄に入れて交換した名刺とパソコンを用意する。

「まずは業種別に分けるか、それとも話した内容を覚えてたらメモ書きするか……」

 悩みながらも選んだのはメモ書きの方。
 正直、覚えている内に書いておかないと会う機会が有った場合に話を振られても困るし。
 名刺と向き合ってどんな事を話したかを思い出そうとするも流石に酒を飲んでいた事も有って空覚えの人もいた。
 まぁ、そういう人の大半は挨拶をした後はあまり会話をした記憶も無いから仕方ない気もする。

「まぁ、大体こんなものかな」

 仕分けとメモ書きを終わらせてパソコン内にもデータを残してカードホルダーに入れるころには良い時間になっていた。
 明日の講習の時間も今日と同じで寝るにはまだ時間が有った事からテレビの電源を入れて何か面白い番組がやっていないかと思ったが、残念ながら見たいと思うものは放送されていなかった。

「んー、まだ時間有るから風呂入った後はネットでも見るか」

 これでパソコンを持ってきて無ければ、視聴カードを買って映画を見たりするんだろうけど、今回はパソコンを持ってきてるから会員登録してるネット配信サイトを使える。
 そんな事を考えながら俺は風呂へと向かうのだった。



 講習の終わった翌日、俺は懇親会で約束した通りに都実地ダンジョンの協会へと向かった。
 電車に乗ってダンジョンに近づくに連れて乗車してくる人が明らかに探索者と分かる風貌の人が増えてくる。
 それでも場外で食料品を買う人や観光客が未だに多いようで探索者ばっかりというような事は無かったが、どちらも少し居心地が悪いような雰囲気を出していた。
 駅に着き、案内看板でダンジョンまでの道のりを再確認して歩き出すと周りには同じような探索者しか歩いていないのに気が付く。
 さっきはしっかりと見てなかったがどうやら観光客の訪れる場所とは離れた場所にダンジョンが出来たようだった。

「流石に近づくに連れてそれっぽい服装をした人しかいないか」

 既に武器丸出しで歩いている探索者やゴツゴツした厳つい防具を身に着けた探索者が増えてきたような気がする。
 たぶん、協会に着いてから身に着けたりするのが面倒くさいと思って近くに部屋を借りたり、会社自体がこの辺りの人たちだろう。
 俺を含めて全員が向かうのは同じ方向、同じ場所で迷う事無く協会に十鳥着いた。



 装備を身に着けて待ち合わせ場所のロビーに行くと既に二人は来ていたようで装備を身に着けた姿で話しているのが見えた。
 園田さんは両刃の長剣、田部さんは何も持ってない事から俺と同じようにアイテムボックスを持っていて仕舞っているのだろう。

「おはようございます。もしかして、遅かったですか?」

「おはよう。別に問題ないよ」

「おはようございます。大丈夫ですよ」

 時間的には大丈夫な筈だけどと思ってもちょっと焦りながら声を掛けた俺に気にした様子を見せずに二人が挨拶してくれる。
 どうやら出張で来ているので土地勘が無いだろうから遅刻するかもしれないと思っていたようだった。

「いやー、昨日の夜に調べて無ければ駅の乗り換えとかは焦ったかもしれないですね」

「ですよね。私も出張で他の県に行った時に調べて無くて意外と時間が掛かった時も有りましたし……」

 そう言った田部さんはその時を思い出しているようで遠い目をしていた。

「ハハハ、俺も分かるな。依頼が有って遠出する時は変に安く済まそうとすると痛い目見るとき有るしな」

「まぁ、今回はそこまで乗り換えで困る事も無かったんで良かったんですけど、学生時代に初めて一人で東京に来た時なんて事前に調べてたルートを変な覚え方してて全く違う路線に乗りそうになった経験が……」

「……大丈夫でした?」

「えぇ、駅員さんに聞いたりしましたし、途中の乗り換えとか同じ電車に乗ってたサラリーマンに聞いたりして間違えずに済みました」

 危うく東京から出る路線に乗りそうになったりしただけで間違えずに済んだから。
 あれから本当に不安な時は恥を忍んで駅員さんに聞いたりするようなったんだよな……。

「ふふふ、やっぱりそういう事って有りますよね」

「じゃ、そろそろ行くか」

「お願いします」

 俺を案内するように歩き始めた二人の後を追うが、チラチラと周りから向けられる視線が気になってくる。
 話していた時から感じていたものだが、それだけここでは二人が知られているって事なんだろう。

「結構、二人とも有名なんですね」

「ん、何でだ?」

 振り返った園田さんは不思議そうな顔をしていたが、田部さんは思い当たる事が有るようで照れ臭そうにしていた。

「いえ、周りから結構見られていたようだったので」

「あー、それは……」

 何か有るのか園田さんが田部さんの顔色を伺う。
 チラチラとこちらを見ながら困った顔を見せる田部さんの反応になんとなく理由を察した。
  周りの反応的にどちらかと言うと田部さんの方に視線が集まってるし、たぶん、田部さんがアイテムボックスに仕舞っている武器が凄いんだろうな。

「あははは、さっ早く行きましょ!」

「あっ、ちょっと待ってくださいよ」

 園田さんを引っ張って誤魔化すようにダンジョンの入り口に向かう田部さんの様子に俺は一瞬だけ唖然となるが、直ぐに我に返って置いてかれないように走るのだった。
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