天才剣道少女は愛する姫を守る勇者になります

メイ

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剣を継ぐもの

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アースドラゴンを討伐した後は、大変なお祭り騒ぎだった。

勝利を祝う宴会は3日間続き、町の人総出で盛り上がった。



「いやメイ。本当にすごかったよ。あれってどうやったんだ?」



「本当よ、死んでしまったと本気で心配したんだからね」



ちまちまオレンジジュースを飲んでいると、ビールを飲んでる向かいのテーブルに座る冒険者パーティーがわたしに話しかけてきた。

一人は銀色の軽鎧をつけた赤い髪の男性、もう一人は群所色のチャイナ服のような武道着を着た黒髪のおさげの女性だ。

たしか彼らはB級冒険者パーティー【元気で頑張ろう】のメンバーで、剣士がゲンキさん、武道家がアヤさんだ。



「あれは朱雀という技で、足運びと視線誘導で相手を幻影にはめる技ですよ」



わたしは朱雀の説明をする。

だが二人は大きく首を傾げた。



「よくわからないな、とりあえず魔法ではないんだな?」



「はい、魔力は使わないので完全な体術ですよ。お教えしましょうか?」



「うーん。俺は遠慮しておくよ。こういうチマチマしたものは苦手なんだ。やっぱり力でドカーンと圧倒したいんだよ」



「だねゲンキは脳筋だから、絶対無理だよ。それにしても凄いね、剣も昔から習っていたの?」



「はい、小さい時から実家で教わりました。毎日剣を振っていたんですよ。魔法も同じでずっと練習をしていました」



完全な嘘はついていない。

前世では剣を教わり、今世では魔法を教わっていたからだ。

ただ時系列が違うだけ。

転生のことを正直に言っても、信じてもらえないか変な子だと思われるかもしれない。

その為、少し嘘を交えてわたしは説明する。



「メイは頑張り屋さんだね凄いよ。ところでどう?わたし達のパーティーに来ない?貴女なら大歓迎だよ」



「おおそれはいいじゃないか。メイならぜひ歓迎だよ」



「うーん・・・」



B級冒険者者からのお誘い。嬉しい申し出だった。

しかし今、新しいパーティーに入ることは考えていなかった。

新しいメンバーとうまくやっていけるか不安なのと、星空の集いでの日々が忘れられなかったからだ。それに死んだとはいえ、すぐに鞍替えにするのには抵抗があった。

もったいないけど、断ろう。

そう判断して言葉を返そうとしたところ、ゲンキさんが言葉を付け加える。



「急に判断できないよな。どうだ、今度お試しでパーティーを組まないか?実は護衛依頼を受けるつもりなんだ。もちろん気にいらなかったら抜けていいし、気に入ったら正式なメンバーになるということで」



たしかにそれなら嬉しい申し出だ。

護衛依頼は今までやったことがないし、冒険者の経験にもなる。

なお、護衛依頼とは行商人や旅人の道中を護衛する任務だ。

この世界は治安が悪く、一歩、外にでると魔物に出くわす可能性があり、夜盗だって出る。

その為、力のない者は冒険者という傭兵を雇うのが普通だ。

道中ずっとついていくので長期間拘束されるものの、その分報酬が比較的良い依頼だ。



「それならぜひ参加させてください」



「おお、そうか!依頼は来週だ。詳細はまた連絡するよ。宜しくな!」



「はい、こちらこそ宜しくお願いします」



わたしは心よくその申し出を受けた。

それから暫く二人と話していると、突然後ろから声をかけられた。



「お話中すいません、メイちゃん。ギルドマスターがお呼びです。今すぐ執務室に来てくれませんか?」



その声はギルド職員のソフィアさんであった。



「ギルドマスターなら仕方ないな。じゃメイまた今度な!」



「メイ申し出を受けてくれてありがとうね。それじゃ」



わたしは会話をしていた二人の冒険者達にぺこりとお辞儀をすると、席を外した。

そしてソフィアさんにつれられて、冒険者ギルドの1F奥のギルドマスターの執務室へと向かう。



「人気者ですね。でも疲れたんじゃないですか?」



歩きながら、ソフィアさんが心配そうに話しかける。



「そうですね、3日間の宴会って疲れますよね。もうヘトヘトですよ」



そう言うと、わたしは大きなため息をついた。

3日間の宴会、わたしは勝利に貢献したとして毎日の参加を強制させられていた。

お酒は飲んでいないので、二日酔いではないものの流石に疲れた。

さらにカロリーも心配だ。

オレンジジュースやコーラをこの3日間でいったい何杯飲んだのであろうか?

数えるだけで恐ろしく、その後に体重計に乗るのが怖い。

結果によるけど、ダイエットしないとな・・・。



そうこう話しているうちに執務室の入り口に辿り着く。

そしてソフィアさんがノックをして共に中に入った。



ギルドマスターのハルクさんは奥の机で事務仕事をしていた。

だがまだお酒が残っているのか、ほんのりと顔が赤い。

ハルクさんは1日目の宴会には、魔力切れで深い眠りについていた為、参加することができなかった。

だが2日目以降は目を覚ますと浴びるようにお酒を飲んでいた。いや、周りの冒険者達に飲まされた。

ハルクさんはアースドラゴンを討伐した中心人物だ。

冒険者の掟で主役は、絶対にお酒を断ってはいけない。

そんな鉄の掟があるそうだ。

そして今日も朝からお酒をずっと飲んでいた。

だがこうして普通に仕事をしているということは、よほどお酒に強いのだろう。



でも大人になんてなりたくないな・・・お酒なんて絶対に飲みたくない。

ハルクさんを見ながら、しみじみと思う。

わたしはお酒が嫌いだ。

嫌悪感を抱くまではいかないものの、飲む理由がわからない。

酔っぱらうと判断能力が低下して、酒の失敗もよく聞く話。

一説にはお酒を飲むと、脳細胞が壊れるという話も聞く。

個人的には、お酒を飲むと頭が悪くなるのでは?という考えだ。

さらに前世でよく見ていたドラマでは、若い女性が〇犯罪に遭う場合は、たいてい飲酒が絡んでいる印象だ。また、家庭崩壊や借金地獄も大体飲酒がらみである。

酒は危険な薬物の一種である、それがわたしの見解だ。



そもそもお酒を飲まないと楽しめないって、大人って悲しい存在だと思う。

前世のわたしなんてファミレスで友人とコーラを飲みながら、おしゃべりするだけで楽しかったのに・・・。



っとそんなこを思っていると、ハルクさんが入ってきたわたし達に言葉をかける。



「悪い、よく来てくれた。とりあえずそこに座ってくれ」



その言葉にコクリと頷くと、言われた通りにソファーに座った。

それから向いのソファーにハルクさんが座り、ハルクさんの後ろにソフィアさんが立つ。



「今日来てもらったのは、この前のアースドラゴンのことだ。メイ、本当によくやってくれた。もし君がいなかったら、俺は生きて帰れなかっただろう。本当にありがとう」



ハルクさんはそう言うと、深々と頭を下げた。

突然のことにわたしは驚き目を丸くする。

大人の男性に頭を下げられることに、今まで慣れていなかったのだ。

慌ててその場を取り繕う。



「そんなとんでもないです、顔を上げてください。ハルクさんがいなかったらそもそも勝てなかったですし、こちらこそライラさん達の仇を討ってくれてありがとうございます」



そう言うと、同じくわたしもぺこりと頭を下げる。

暫くわたし達は頭を下げ合った。

そして暫くたった後、ハルクさんは次の話題を切り出した。



「ところでだ・・・、メイ、君は何者なんだ?回復魔法を使える自体が珍しい、更にあの剣術と立ち回りも見事だった。どうか教えてくれないか?誰にも言わないと約束しよう」



わたしも顔をあげると、今度は気まずそうにハルクさんを見る。

そして暫く考えた後、正直に話した。

ただし転生のことだけは伏せて。



「わたしは隣国のウィシュタリア王国に属する貴族、マルチーズ侯爵家の次女です。回復魔法と剣術は幼少期から習っていました」



だが、その言葉にハルクさんとソフィアさんは特に驚かなかった。

納得した表情で、静かにわたしの言葉にウンウンと頷く。

実はその反応は予想していた。

この世界で回復魔法を使えるのは、特定の血統を持つものに限られるからだ。

魔王を倒した聖女の系譜であるマルチーズ家、代々教会の神官長を務めるレアチーズ家、そして東の大国を統べる王であるブルーチーズ家。

この3つの家系に限られ、回復魔法を使える者は何かしら血のつながりがある者だ。

そしてこの3つの家系は合わせて、3代チーズ家として称されている。



「なるほど、それなら納得だ。だがそんな家系に生まれながら、なぜ冒険者になったんだ?」



「それはわたしに聖女になる程の力がなかったからです。ご存じの通り、わたしの回復魔法の力は軽い傷や止血をするのがやっとの力なので・・・」



その言葉にハルクさんとソフィアさんは、ばつの悪そうな顔をする。



「そっそうだな・・・。確かにそうだ。すまない、配慮のない質問をしてしまって」



「大丈夫です気にしないでください。聖女になることはもう諦めましたし、逆にマルチーズ家に縛られず自由な生活ができてよかったとも思っています」



「そうか、なら、このまま冒険者を続けるか?」



「はい、このまま続けるつもりです。パーティーをどうするかはまだ決めていませんが、来週、元気で頑張ろうの皆さんと共同で護衛依頼を受ける予定です。」



前世の記憶を思い出す前、メイは何も目的がなかった。

ただ自由になりたい、そんな軽い気持ちで冒険者になったのだ。

だが前世のヒカリとしての記憶を取り戻したことで、わたしには新たな気持ちが芽生えた。

それは剣の道を極めること。

ヒカリは高校2年生でその命はついえた、ある程度の実力はあったが、それでも極めるには程遠い、本人はそう思っていたのだ。

だが幸いにも転生という形で、新たな生を手に入れた。

それならば剣の道を歩みたい。前世の技がどこまで通用するのか試してみたい、さらに練習して強くなり、ハルクさんのように、アースドラゴンいやそれ以上の魔物とも渡り合えるようになりたい。

あの戦いでそう感じたのだ。

高ランク冒険者となり剣の道を極める。それが今のわたしの目標だ。



「そうか、ならこれを持っててやってくれないか?」



ハルクさんはそう言うと、わたしに剣を差し出した。

青銅色に輝く細身の剣。

これはミスリルの剣だ。

ミスリルとはこの世界にある不思議な鉱物で、その強度は鉄よりも頑丈で絶対に錆びない。

さらに魔力を帯びており、少しの傷くらいなら再生して元に戻る。

色は青銅色で、重さも軽くアルミくらいの軽さだ。

だがミスリルの真骨頂はそれではない。

それは魔力伝達性だ。

剣に魔力をこめることで、切断力と頑丈さを強化することできる。

そして普通の素材と比べると、ミスリルの方がその強化倍率が高いのだ。

同じ魔力でも、ミスリルを使用するだけで約1.5倍の強化が見込まれるのである。

ミスリルはかなり有用な物質だ。

だがその分貴重で、お値段もかなり高い。

そしてこの剣にわたしは見覚えがあった。



「これはライラさんの剣!」



「ああ、そうだ。アースドラゴンの右の目に深々と刺さってあった。冒険者の剣は、本人のお墓に一緒に入れる場合もあるが、貴重な武器はその意思を継ぐ者に継承するのが習わしなんだ。ライラの意思を継ぐのは同じパーティーであった君だと思う」



「メイちゃん。持っててあげて。ライラは貴女のことを妹のように愛していたわ。きっと貴女がもっていた方がライラも喜ぶと思うの・・・」



ソフィアさんとライラさんはかなり仲が良く、二人で飲みに行くこともあったという。

ライラさんがわたしのことをそんな風に思っていてくれたと思うと、胸が熱くなる。

わたしに断る理由などなかった。



「わかりました。ではわたしがこの剣を受け取ります。」



そう言うと、わたしはミスリルの剣を受け取り、がっしりとその剣を抱きしめた。

ライラさん、そして星空の集いとの思い出。

たった1か月しか付き合いはなかったが、3人との思い出はかけがいのない者だった。

アースドラゴンに果敢に挑んだ姿を忘れない、3人の笑顔を忘れない、そして3人の思いをつぐんだ。



ライラさんの剣を抱きしめながら、ぐっと心に誓うのであった。
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