天才剣道少女は愛する姫を守る勇者になります

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護衛依頼②

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護衛依頼の予定は片道2日、滞在期間3日、計7日間で1週間の予定だ。

なおこの世界の歴も前世の日本と同じ太陽暦と似たようなものを使用している。

ただ少し違うのは、1年が360日であることと閏年がないことくらいであった。

前世と同じような日付計算は非常にとっつきやすい。



そして今日はクラボの村で宿を取る予定だ。

クラボの村は、ピナトスの町と目的地であるシリアルの町のちょうど中間地点に位置している。

アヤさんが少し危険だと言っていた森の近くにある町で、人口100人くらいの小規模の町であった。

暗くなった森の中を通るのは危険だ。

魔物は基本夜に活動することが多く、夜になるとその動きは活発になる。

また人間よりも夜目と鼻が利く為、思わぬ奇襲をしかけられる可能性が高かった。

その為、今日は村で宿を取り、朝になってからこの森を通る予定であったのだが、カシムさん達は村を前にしてとんでもないことを言い出した。



「思ったよりも早く着いたので、このまま先に進みます。申し訳ございませんが、睡眠は交代でお願いします」



「カシムさん、それは契約違反だ。森の中を通るのは危険だ。行商人の貴方ならわかっているだろう?今日は予定通りにこの村に泊まります」



カシムさんの言葉に、ゲンキさんは反論の言葉を述べる。

しかしカシムさんはその言葉に苛立ちを浮かべた。



「俺達は依頼者だ。依頼者の指示に従う、それが冒険者の役割だ。契約違反で訴えるぞ」



「ええ貴方の言う通りだ。しかしこちらもプロだ。依頼者をわざわざ危険に晒すことはできない。指示に従うのは基本だが、護衛に関してはこちらの指示に従う。そういう契約だった筈だ」



「うるさい!だが近年の森は魔物が少なく被害が少ない。だから夜を通っても安全だ。それにお前達はBランク冒険者だろ?森の魔物に恐れをなすほど、お前たちは雑魚なのか?」



「俺達が雑魚だと!ふざけるな!!ここら辺の冒険者で俺達の右に出る者はいない、毎日毎日剣を振っているんだ、俺が弱いわけがないだろうが」



その言葉にゲンキさんは怒りを浮かべる。今まで冷静だったのがウソのように、激しい怒りを見せ語気を強めた。

さらに掴みかからん勢いで、カシムさんに詰め寄る。



「まずいわね・・・」



そんな様子に隣に立っていたアヤさんが渋い顔を浮かべる。



「まずい?」



「ええ、ゲンキは普段は冷静なんだけど、弱いと言われることを何よりも嫌うのよ。ちょっと行ってくるわね」



そう言うと、アヤさんはカシムさんと話をするゲンキさんの方へと向かった。



「ちょっとゲンキ止めなさい。冷静になって・・・」



「煩いアヤ。こいつは俺達が雑魚だと侮った、許されるわけがないだろう」



「だからそういうのがいけないのよ」



「小僧、口ではなく実践で証明しろ」



「なんだと・・・!?」



「このまま進み森を突っ込きる。大口を叩く実力があるのなら、森の魔物にも後れをとらない、そうだろう?」



「ああ、目に物みせてやるぜ。俺達の実力をその目に焼き付けやがれ」



「まったくもう・・・」



ゲンキさんはどうやら煽り耐性がないようだ。はじめは反対していたのだが、カシムさんの口車に乗ってしまった。

仲間の3人はそんなゲンキさんの態度にため息をつく。

こうして、わたし達の護衛依頼は夜の森を突っ切り先を急ぐ方針に変更された。



◇◇◇◇

森を進んでから1時間を過ぎた。

日は完全に落ちて、辺りはまっ暗だ。

幸いにもこちらには魔法使いのセーラさんがいる。

セーラさんは炎属性と風属性が使える魔法使いだ。

炎魔法で火をおこし、それをライト代わりにしていた。

それでもうっそうと茂る森の中は、月が出ているとはいえかなり暗く、見通しが悪かった。



「まったくゲンキの旦那にも困ったものだぜ」



そう言うと、わたしの隣に座る弓使いのノークさんがため息をついた。

アヤさんは今、この場にはいない。ゲンキさんを一人にしておくと依頼主のカシムさんと喧嘩する懸念があったからだ。

彼を止めるために、今、アヤさんは前方の護衛に移っている。

その為、後方の護衛はわたしとノークさんの二人だけだ。

ノークさんは黒いブロンドヘアーと緑の目をしたスラリとした男性だ。

年齢は10代後半から20代前半くらい。

緑の帽子をかぶっており、おとぎ話にでてくるロビンフッドのような服装をしている。



「冷静だったのに急に怒り出して、少し驚きました」



「ああ、ゲンキは誰よりも弱いと言われることにコンプレックスがあるんだよ。気をつけるように注意はしているのだが、中々治らなくてな」



「そのゲンキさんのコンプレックスって結構有名なんですか?」



「ああ有名だよ。ベテランの冒険者ではみんな知っているかな。新人でも血の気の多そうな奴は、ギルド職員がそれとなく注意しているみたいだぜ」



(やっぱり・・・)



その言葉に確信を強める。

カシムさんは怒ったように見せかけて、実は冷静だった。

的確にゲンキさんが怒るワードを述べて、彼を怒らせ自分の意見を通したのだ。

きっと夜にこの森をつっきると言うのは、カシムさん達にとっては最初から決めていたのであろう。

そしてわたし達はまんまと乗せられてしまったというわけだ。



この森を抜けると、目的地は目と鼻の先だ。

彼らはかなり急いでいる、そしてその秘密は厳重に閉められた馬車の中だ。

あれから行商人の1人は、馬車の中から一歩も出てきていない。

あの中には何かある、そして彼らが急いでいる以上、一刻も早く止めるべきだ。

もう、相手が聞いているかとかは関係ない。



「あの、ノームさん実は・・・」



わたしがノームさんに相談しようとしたその時、前方から大声が響き渡った。



「魔物だ、魔物が攻めて来たぞ、全員注意しろ」



声を上げたのは、ゲンキさんだった。

同時に、狼のような遠吠えが辺りに山彦のように木霊する。

言葉を中断し周りを確認すると、周りの草むらからギロリと無数の赤く光る眼が覗く。

わたしは腰にさしてある剣を抜き、ノームさんは背負ったいた弓を構えて戦闘態勢に入った。



そしてすぐに草むら数匹の魔物が飛びかかった。



「貰った!」



しかしノームさんは冷静に弓を引き絞ると、飛び掛かる魔物を矢で射貫く。

ビューン

風を切るような音と共に、夜の闇に紛れ飛び掛かる魔物を正確に射貫く。

矢は全て魔物に命中し、馬車に飛び掛かのを防いだ。

そしてゴロゴロと地面に倒れ伏し、遠ざかっていく魔物を確認すると、体長1メートル半以上はあろう黒い狼のような魔物であった。



こいつの名前はウルフ。

Dランクの狼型の魔物でそれほど戦闘力は高くない。

しかしそれは昼間に単体で戦った時の話だ。

群れで襲われた場合の奴らの戦闘力は決して侮れない。

さらに狼型が本領発揮するのは、昼よりも夜だ。

夜の暗闇に紛れ集団で襲い掛かるウルフは、Bランクの冒険者であろうと油断できない力を秘めていた。

そして周りを確認すると、どうやらわたし達は数100体以上のウルフの群に囲まれているようであった。



「来る!?」



先程飛び掛かった魔物は、どうやら様子見の先発隊だったようだ。

今度は数十匹のウルフが、後方のわたし達目掛けて飛び掛かる。

しかし今度はわたしの番だ。

右手を前に掲げると、防御魔法を唱えた。



「光の盾よわたし達を守って!プロテクション!」



するとキラキラと光りが辺りを包むと、銀色に輝く透明な壁が現れた。

この魔法はプロテクション。

物理攻撃と魔法攻撃を防ぐ、魔法で実体化した光の盾だ。

防御力はいまいちで強力な攻撃ではすぐに破壊されてしまうものの、その範囲と発動の速さはかなり使いやすい。

光属性は回復魔法だけではない。

防御魔法と威力は弱いが攻撃魔法もあるのだ。

そしてどちかといえば、わたしは回復魔法よりも防御魔法が得意であった。



あの数だ。

プロテクションの強度なら、簡単に相手に破壊されてしまうであろう。

しかしわたしは、相手の攻撃を防ぐ目的でこの魔法を使ったのではない。

相手が馬車に飛び移るのを防ぐためだ。

突然現れた壁は、ウルフのジャンプを妨害する。

キャフン

ウルフたちは壁に鼻から激突すると、そのまま地面に落下した。



「ナイス!」



そしてその隙をつきノームさんが弓矢で丁寧に射る。

地面に着地しようとしたウルフの足を正確に射貫き、その機動性を殺した。

しかし安心するのはまだまだ速い。

ウルフはまだまだ入る。

わたしが魔法で相手が飛び移るのを阻害し、ノームさんが追撃。

壁を抜けてきた奴が居れば、剣で叩き落とす。

馬車は暗い森を駆け抜けながら、わたし達は一進一退の攻防を展開するのであった。
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