天才剣道少女は愛する姫を守る勇者になります

メイ

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帝都ゴルドバ

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ワイマール帝国の帝都ゴルドバ。

南大陸最大の国家であるワイマール帝国の首都であり、この世界最大の都市だ。

前世の東京や大阪と比べると、建物の数は少ないし高層ビルもないので建造物の数では劣っているだろう。

しかしその人の多さには驚かされた。

まるで渋谷のスクランブル交差点とそん色ない程の、人ごみにあふれていたからだ。

道の横には露店が並び、客を呼び込む店主の声が威勢よく響き渡る。

町行く人も慣れているのか、人ごみをものともせずスルスルと進んでいた。

なお街並みの雰囲気では、イタリアのベネチアに近い。

レンガ造りや石造りの家が多く、道路も全て石造りだ。

また各所には水路が流れ、小舟で移動する姿も目に映った。

そしてその町の後ろには、大きくそびえる建物がひと際目をひく。

それはこの国を統べる王が住む宮殿。

各所に金がちりばめられ、太陽の光を浴びて黄金色に輝く光を放つ。

ゴルドバという名前は、この金色に輝く宮殿からとられていた。



馬車はガタゴトと、市街地を通り抜け宮殿へと向かう。

わたしは馬車の中から身を乗り出しながら、その光景を眺めていた。



「うふふ、メイ。貴女は帝都に来るのは初めてですか?」



「はい!初めてです。ウィシュタリア王国の王都には行ったことがありますが、こちらの帝都の方が人が多くて活気があってビックリしました。後で町を散策してもいいですか?」



「ええ構いませんよ。ですが、先に貴女の話を聞かせてくださいね。諮問会が終わりましたが、後は自由にして構いません。終わったら、私が町を案内しましょう」



そう言うと、わたしの向いに座る女性はニッコリと微笑んだ。

銀色のつやつやした長い髪、サファイヤのように澄んだ瞳、すっきりと整った少し幼さの残る顔立ちは大人になればどんな男でも虜にするような魅力を秘めている。

女同士のわたしでさえもその顔に見惚れ、ポッと頬を赤く染める。



「セレナ様!誘拐されておいてまた王都に出るとはどういうことですか?駄目です。町に行くのは賛成しません」



そう言うと私の隣に座るスカーレットさんは、その言葉に苦言を呈した。

今、わたしはスカーレットさん、そしてこのワイマール帝国の王女セレナ様と馬車を同席して、やっと帝都まで帰ってきた。

なぜこんなことになってしまったのか?

話は3日前にさかのぼる・・・。



◇◇◇◇

(彼女はいったい・・・)



わたしはスカーレットとわたしを制止した女性を見る。

銀色の髪に青い瞳、彼女はかなりの美人であった。

年齢はわたしより少し上で15歳くらい、綺麗な銀色のドレスに身を包む。

しかしかなり衰弱しているようで立つこともままならず、隣に立つ侍女らしき女性が彼女を介抱していた。

馬車の中に乗っていた人物・・・。

おそらく彼女がカシム達が隠そうとしていた馬車の中身なのであろう。

どうやら奴らは人攫いをしていたようだ。



「お前、セレナ様の御前だ。頭をさげろ!」



すると剣を突き立てるわたしに、スカーレットは怒りの眼差しを向ける。

しかしわたしはその剣をすこし前に突き立てた。

剣は彼女の肌をきづつけ、スーッと血が流れる。



「くっ」



彼女の出方がわからない、その為、油断するつもりはない。

スカーレットの喉元に剣をつきたてた体制を崩さず、わたしは注意深く馬車から出てきた人物を注視した。



「スカーレット、彼女は私を攫った人物ではありません。あそこに倒れている族が犯人です。彼女はこの馬車を止める為に戦ってくれました。

だから敵対するのは止めなさい。

そして冒険者さん。お願いです。剣を納めてくれませんか?スカーレットはわが帝国の騎士団長なのです」



「え?帝国騎士の騎士団長?」



思わぬスカーレットの正体に、わたしは驚き彼女を見る。

そして慌てて喉元に突き立てていた剣を鞘に納めた。



「ありがとうございます。私の名前はセレナ=ワイマール。

このワイマール帝国の第1王女です。

族を打倒し、私を救ってくれたこと感謝します。どうか貴女様のお名前を教えて頂けませんか?」



「冒険者のメイです。知らなかったとはいえ、救出が遅れてしまい申し訳ございませんでした。またセレナ様がご無事であったこと、心よりお慶び申し上げます」



(うわー王族だよ・・・。)



わたしは思わぬ大物の登場に内心慌てながらも、貴族令嬢の知識に習い臣下の礼をとった。

ウィシュタリア王国にいた時は、わたしは貴族であったもののまだ未成年であったことから王族とは会ったことがない。その為、このセレナ様がわたしの人生で初めて出会う王族だ。

あまりの緊張にドキドキと心臓が高鳴った。



「では、メイ顔を上げなさい。貴女には是非事の経緯を話して頂かなくてはなりません。帝都の王宮までご同行頂けませんか?」



「承知しました。ですがお願いがあります」



「わかりました、私にできることであればできる限り配慮しましょう」



「ありがとうございます。あそこに倒れている4人は仲間の冒険者で、魔力を全て使い果たし暫く目を冷ましません。

彼らを休ませたいので、ピナトスの町まで彼らを送って頂けないでしょうか?説明はわたしだけが同行します。」



「わかりました。貴女に同行頂けるのなら彼らにご足労頂かなくても大丈夫でしょう。

兵士の一部に彼らをピナトスの町へ送り届けるよう指示しましょう」



「あともう1点。倒れている族を打倒したのは、今倒れている冒険者パーティー『元気で頑張ろう』の功績です。もし褒美等をお考えの場合は彼らを優先してあげてください。あくまでもわたしは臨時の見習いですので・・・」



「うふふ。貴女は仲間思いなのですね・・・。わかりました、配慮いたしましょう」



こうしてわたしはゲンキさん達と別れ、首都ゴルドバへとやってきたのだ。



◇◇◇◇

メイ達がカシム達を倒した同時刻。

真っ黒な部屋では5人の男女が言葉を交わしていた。

全員が黒いマントに身を包み、姿形はわからない。

だがマントからはみ出る額に光る1本の大きな角が、彼らがただの人間ではないことを示していた。



「あーあ。どうやらカシム達は失敗したみたいだよ。やっぱり使えない奴等だったね」



5人のうち1番背の低いマントに包まれた者は、ケラケラとあざ笑うように言葉を発っす。

それはまだ声変わりのしていない少年のような声であった。



「だから言っただろう。人間は役に立たないと、自分でいかないから失敗するんだ」



一番体の大きなマントの男が、その言葉に怒りを滲ませて叱責する。

その声は低くまるで地獄から響くような、低くドスの聴いた声だ。



「で?どうするの?このまま尻尾をまいて諦める?貴方がいかないなら、私が代わりにいってもよろしくてよ」



今度はマントの一人が、妖艶な女性の声で挑発するように最初に言葉を発したマントの男を煽り立てた。



「何言ってるんだよ?今度はもちろん僕が直々に出向いてあげるよ。どうやら彼女は帝都に戻ろうとしているみたいだ。それなら帝都にいる兵士を皆殺しにして、力づくで連れて行くよ」



「まあ手段は問わないが、王女は絶対に殺すなよ。殺したら封印のカギは他の者に渡ってしまう。王女は絶対に生け捕りにするんだ」



「わかってるよ、僕を誰だと思っているんだ」



「よし、ではワイマール帝国の封印は『リブラ』に任せよう。俺達は手分けして他の封印のカギを探そうではないか」



「まったく5つに分割するなんて本当に面倒よね。人間って弱いくせにほんとめんどくさい」



「まあそれ程までに我が王を恐れているのであろう。だが只の時間稼ぎだ。勇者がいない今、我らを止める術は人間にはない」



「うふふ。勇者の血筋は途絶えたみたいだけど、聖女の血は脈々と受け継がれているわ。

聖女ははっきり言って脅威ではないんだけど、守られると面倒だし先に聖女を落とすわね」



「ああ、『アリエス』よろしく頼む。ではリブラとアリエス以外は、他の封印を探す、それでいいな?」



「御意!」



「我ら魔王様に栄光あれ!」



そう言うと、4人のマントの姿は闇に溶けるように消え去った。

そして後にはリブラと呼ばれた人物が残される。



「うふふ。どう攻めてやろうか。カシムが失敗して結果的によかったね。なにせ僕の楽しみが増えるんだから」



リブラはそう言うと、闇に溶けるように消えていくのであった。
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