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条件
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腹を空かせたハイエナが恐る恐る忍び寄る、闇に鋭い眼を煌らせた梟はその殺気を感じ取ったかのように夜の空に飛び発つ。忍び寄るハイエナの目先には小さな共同体を形成している鼬たちが眠る姿。自然界に情は存在しないし、存在していては生きて行けない。ムレイワガネグモが産まれた子供に自身の身体を提供するように、交尾中のカマキリのメスがオスを喰らうように、自然界に君臨するものの先にあるものは生命。生きとし生けるもの全てが他の生命を奪い、奪われていく。その鎖を追っていくと最後に辿り着く"もの"はなんだろうか。それは"最強の獣"だろう。それらを人々はシュティア呼ぶ。
第一章~与えられた条件~
「この通行券を使うとさっき言ったように自由に二つの世界を出入りできるわ。貸せる期間に限度はあって、1年しか貸せなくて更には世界を移動してる間時間は進んでしまうの。貴方はどちらの世界でも存在してしまうことになるし、存在してしまわないことにもなるの。それだけ気をつけて。」
赤い髪の少女ー管理者ーはもうそこにはいなかった。
消えた、と言うよりも元々いなかった感覚だ。時間も進んでいない。なんだか変な感じはするが、確かに通行券は持っている。
教室を出て、階段を駆け下りる。薄暗くなった廊下を進み玄関に向かう。部活終わりの時間ということで陽は沈みかけていた。帰り道、近くのコンビニに立ち寄り用を済ませ、あの世界のことを考える。バルドゥールとして"存在"するわけだから、"消滅"すなわち死が来るのだろうか。そうなれば俺は、武井了はどうなるのだろうか。どちらの世界でも存在し、また存在しないというのなら、きっと俺も消滅するのだろう。そうなればもう父さんや母さんに会うことが出来ないし、コンビニの美味しいおにぎりも、ハンバーガーも、面白い映画も見ることが出来ない。そんな考えが渡航の決心を鈍くさせる。きっと、またきっと戻って来る。俺はそう信じていた。
家に着くと誰かの靴が玄関に並べられていた。一人、訪問客がいるみたいだ。しかし父さんと母さんが話している声は聞こえない。誰だろうか。恐る恐るリビングのドアを開く。そこにはナイフを持った黒い服の男が立っていた。父さんと母さんはその男の下で赤くなっていた。正確にはもう青くなっていた。男はすぐに俺に気づきナイフを構えた。俺はすぐに戸を閉め、カバンを投げ捨て外に出る。大声で助けを叫ぼうとした。ガシッ。物凄い力で腕を掴まれる。まずい。殺される。
「こっち!!」
俺の腕を掴んでその人は走った。
「ゲート解放!通行券あり!転移!!」
身体が消えた、ように感じた。何次元だろうか。様々なゲートが行き交う不思議な空間だが、どこか懐かしみも感じる。喪失感の正体は恐らくこの浮遊感から来たものだろう。自分の意思とは相反対に身体が自由に浮遊している。だがその目的地は明確で、数多のゲートの中ただ一つのゲートに辿り着いた。その瞬間だった。俺は脳を直接掴まれるような感覚に陥った。"ケモノ"のことを思い出した。
「た、助けてくれたのかな...」
そのケモノは人のような形をしていたがあからさまに獣であった。太く長い脚に鋭利な爪を持った手に真っ黒な毛並み、更に顔は狼のような獅子のような、またハイエナのような鋭い顔つきであった。
ゲートを進んだ先はエーリカ遠征の準備のために宿泊していたホテルのロビーだった。
「おおおおおおおおー!!!」
特殊部隊が右腕を高らかに上げ士気を高めた。俺はバルドゥールになった。
「副隊長!いよいよ、出発を!」
「ああ、それではいくぞ!!!」
移動手段は徒歩しかないが、歩くことでスタミナが減ることはない。謂わば無限に歩き続けることはできる。ヴェートー市郊外のヴレード地方にあるホテルを出発し、バース市とは反対のアーバンベルクの方へ向かった。アーバンベルクはフューリファス県にあり、クーリー県はディーツ最南の県に対し、フューリファス県はディーツ最北の県だ。エーリカとディーツの間にはゼオドア海がある。ゼオドア海を渡ってエーリカに行こうとするのは神でもしない。と現地の人は常々口を揃えていう。というのもゼオドア海は死体の海と呼ばれるほど流れが強く、また凶暴な鮫が棲んでいる。しかし暗黒社はその海を渡る技術を持っており、簡単にエーリカに子供を連れて行くことが可能である。一度、暗黒社でスパイ活動をしていたディーツの諜報員Gはゼオドア海を渡る際に運悪く上からの連絡が来てしまい、それが発覚しその場で射殺された。
第一章~与えられた条件~
「この通行券を使うとさっき言ったように自由に二つの世界を出入りできるわ。貸せる期間に限度はあって、1年しか貸せなくて更には世界を移動してる間時間は進んでしまうの。貴方はどちらの世界でも存在してしまうことになるし、存在してしまわないことにもなるの。それだけ気をつけて。」
赤い髪の少女ー管理者ーはもうそこにはいなかった。
消えた、と言うよりも元々いなかった感覚だ。時間も進んでいない。なんだか変な感じはするが、確かに通行券は持っている。
教室を出て、階段を駆け下りる。薄暗くなった廊下を進み玄関に向かう。部活終わりの時間ということで陽は沈みかけていた。帰り道、近くのコンビニに立ち寄り用を済ませ、あの世界のことを考える。バルドゥールとして"存在"するわけだから、"消滅"すなわち死が来るのだろうか。そうなれば俺は、武井了はどうなるのだろうか。どちらの世界でも存在し、また存在しないというのなら、きっと俺も消滅するのだろう。そうなればもう父さんや母さんに会うことが出来ないし、コンビニの美味しいおにぎりも、ハンバーガーも、面白い映画も見ることが出来ない。そんな考えが渡航の決心を鈍くさせる。きっと、またきっと戻って来る。俺はそう信じていた。
家に着くと誰かの靴が玄関に並べられていた。一人、訪問客がいるみたいだ。しかし父さんと母さんが話している声は聞こえない。誰だろうか。恐る恐るリビングのドアを開く。そこにはナイフを持った黒い服の男が立っていた。父さんと母さんはその男の下で赤くなっていた。正確にはもう青くなっていた。男はすぐに俺に気づきナイフを構えた。俺はすぐに戸を閉め、カバンを投げ捨て外に出る。大声で助けを叫ぼうとした。ガシッ。物凄い力で腕を掴まれる。まずい。殺される。
「こっち!!」
俺の腕を掴んでその人は走った。
「ゲート解放!通行券あり!転移!!」
身体が消えた、ように感じた。何次元だろうか。様々なゲートが行き交う不思議な空間だが、どこか懐かしみも感じる。喪失感の正体は恐らくこの浮遊感から来たものだろう。自分の意思とは相反対に身体が自由に浮遊している。だがその目的地は明確で、数多のゲートの中ただ一つのゲートに辿り着いた。その瞬間だった。俺は脳を直接掴まれるような感覚に陥った。"ケモノ"のことを思い出した。
「た、助けてくれたのかな...」
そのケモノは人のような形をしていたがあからさまに獣であった。太く長い脚に鋭利な爪を持った手に真っ黒な毛並み、更に顔は狼のような獅子のような、またハイエナのような鋭い顔つきであった。
ゲートを進んだ先はエーリカ遠征の準備のために宿泊していたホテルのロビーだった。
「おおおおおおおおー!!!」
特殊部隊が右腕を高らかに上げ士気を高めた。俺はバルドゥールになった。
「副隊長!いよいよ、出発を!」
「ああ、それではいくぞ!!!」
移動手段は徒歩しかないが、歩くことでスタミナが減ることはない。謂わば無限に歩き続けることはできる。ヴェートー市郊外のヴレード地方にあるホテルを出発し、バース市とは反対のアーバンベルクの方へ向かった。アーバンベルクはフューリファス県にあり、クーリー県はディーツ最南の県に対し、フューリファス県はディーツ最北の県だ。エーリカとディーツの間にはゼオドア海がある。ゼオドア海を渡ってエーリカに行こうとするのは神でもしない。と現地の人は常々口を揃えていう。というのもゼオドア海は死体の海と呼ばれるほど流れが強く、また凶暴な鮫が棲んでいる。しかし暗黒社はその海を渡る技術を持っており、簡単にエーリカに子供を連れて行くことが可能である。一度、暗黒社でスパイ活動をしていたディーツの諜報員Gはゼオドア海を渡る際に運悪く上からの連絡が来てしまい、それが発覚しその場で射殺された。
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