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お風呂とご飯をいただきました
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身体が冷えないようにリナは手際よく洗ってくれた。
石鹸を泡立ててタライの水を何度か換えて、頑固な汚れの下から出てきたのは水色がかった白髪……ではなく銀髪だった。
あれ、洗う前って薄汚れて黒に近い灰色だったんだけど……てっきり日本人的な黒髪かと思ってたら違かった。
この分だと目の色も違うかもしれないな。
「リナさん。キレイにしてくれて、ありがとう」
見違えるように艶やかになった髪に感動しながら笑顔でお礼を言うと、リナが口元を押さえながら肩を震わせている。
「…………び、美少女っ」
「えっ?」
「えっ、あっ、ううん。見違えるように綺麗になったから驚いちゃった!」
まじまじと顔を覗き込んで、顔を赤くした。
美少女……なの? 前世は平凡な顔立ちだったけど容姿がかなり変化したのかな?
あとで鏡を貸してもらって確認してみよう。
「あっと、お腹空いたよね? 着替えて食堂に行こうか」
「うん」
はいと返事をするのではなく反射的に子供のように頷いてしまった。身体が温まったせいか頭の中がふわふわしてるんだけど、なんだか中身も外見の年齢に引きずられてるような気がするなぁ。
まぁ子供らしくしていた方が不審に思われないから良しとしよう。
リナに手を引かれて食堂へと移動する。
孤児院というからにはテーブルと椅子がずらっと並んでいるかと思ったけど、6人掛けのテーブルが2台くっついているだけだった。
先ほど会った綺麗な女性の姿はなく、院長先生と赤い髪の男の子の2人だけがいる。私と同じくらいの背丈の男の子は、孤児院の入り口にもいた子だ。
「院長先生、カイゼル王子、お待たせしました!」
「おお、これは……ご苦労さま、リナ。さぁ、席につこうか」
院長先生が私を見て一瞬目を見開いたが、すぐに手を引いて椅子に座らせてくれた。
そしてさらっと王子とかいう単語が聞こえたんだけども。
もしかしなくても、入口にいた人達の中で一番立場が上そうだった綺麗な女性も王族だったりするんじゃないの? 顔立ちが似ているから王妃様かも?
赤い髪の少年は少々つり目で勝気そうだが整った顔をしている。
私を凝視して目を丸くしているので、ビフォーアフターに驚いてるに違いない。
「これは野菜スープを薄めたものだよ。空っぽの胃にいきなり重たい食べ物を入れたらビックリするからね。ゆっくり飲んでみようか」
私の前にはスープが1杯置かれている。
白湯でも喉がビックリしたもんね。院長先生の言う通りゆっくり飲もう。
「ありがとうございます、いただきます」
スプーンを持ってスープをすくう。
薄めたわりにはいい香りがして食欲が湧いてきた。一口飲むとじんわりと胃に染み渡る。
「……おいしい!」
食材の旨さに顔がほころんだ。
急に生きている実感が湧き起こり、もう一口と匙を進める。
それから何故だか涙がこぼれた。
悲しくもないのに涙が流れた理由は分からなかったけど、この身体の、前世を思い出す前の私が泣いた気がした。
「ごちそうさまでした」
手を合わせて食事を終える。
スープを飲んでいる間、3人は静かに見守ってくれていた。全部飲み干すと、安堵の表情を浮かべる。
私、ガリガリだもんねぇ。早くふっくら体型になって安心させないとね!
「うん、よく飲めました。少しずつ食事の量を増やしていこうね」
「は~い!」
元気よく返事をすると微笑まれた。
「さて、疲れてはいないかな? 大丈夫なら少しお話ししたいのだけど」
いいかな?と問いかける院長先生に頷く。
突然転がりこんでお風呂に食事までご馳走になって感謝しかない。
これからお世話になるつもりなので印象よく答えたいね。
石鹸を泡立ててタライの水を何度か換えて、頑固な汚れの下から出てきたのは水色がかった白髪……ではなく銀髪だった。
あれ、洗う前って薄汚れて黒に近い灰色だったんだけど……てっきり日本人的な黒髪かと思ってたら違かった。
この分だと目の色も違うかもしれないな。
「リナさん。キレイにしてくれて、ありがとう」
見違えるように艶やかになった髪に感動しながら笑顔でお礼を言うと、リナが口元を押さえながら肩を震わせている。
「…………び、美少女っ」
「えっ?」
「えっ、あっ、ううん。見違えるように綺麗になったから驚いちゃった!」
まじまじと顔を覗き込んで、顔を赤くした。
美少女……なの? 前世は平凡な顔立ちだったけど容姿がかなり変化したのかな?
あとで鏡を貸してもらって確認してみよう。
「あっと、お腹空いたよね? 着替えて食堂に行こうか」
「うん」
はいと返事をするのではなく反射的に子供のように頷いてしまった。身体が温まったせいか頭の中がふわふわしてるんだけど、なんだか中身も外見の年齢に引きずられてるような気がするなぁ。
まぁ子供らしくしていた方が不審に思われないから良しとしよう。
リナに手を引かれて食堂へと移動する。
孤児院というからにはテーブルと椅子がずらっと並んでいるかと思ったけど、6人掛けのテーブルが2台くっついているだけだった。
先ほど会った綺麗な女性の姿はなく、院長先生と赤い髪の男の子の2人だけがいる。私と同じくらいの背丈の男の子は、孤児院の入り口にもいた子だ。
「院長先生、カイゼル王子、お待たせしました!」
「おお、これは……ご苦労さま、リナ。さぁ、席につこうか」
院長先生が私を見て一瞬目を見開いたが、すぐに手を引いて椅子に座らせてくれた。
そしてさらっと王子とかいう単語が聞こえたんだけども。
もしかしなくても、入口にいた人達の中で一番立場が上そうだった綺麗な女性も王族だったりするんじゃないの? 顔立ちが似ているから王妃様かも?
赤い髪の少年は少々つり目で勝気そうだが整った顔をしている。
私を凝視して目を丸くしているので、ビフォーアフターに驚いてるに違いない。
「これは野菜スープを薄めたものだよ。空っぽの胃にいきなり重たい食べ物を入れたらビックリするからね。ゆっくり飲んでみようか」
私の前にはスープが1杯置かれている。
白湯でも喉がビックリしたもんね。院長先生の言う通りゆっくり飲もう。
「ありがとうございます、いただきます」
スプーンを持ってスープをすくう。
薄めたわりにはいい香りがして食欲が湧いてきた。一口飲むとじんわりと胃に染み渡る。
「……おいしい!」
食材の旨さに顔がほころんだ。
急に生きている実感が湧き起こり、もう一口と匙を進める。
それから何故だか涙がこぼれた。
悲しくもないのに涙が流れた理由は分からなかったけど、この身体の、前世を思い出す前の私が泣いた気がした。
「ごちそうさまでした」
手を合わせて食事を終える。
スープを飲んでいる間、3人は静かに見守ってくれていた。全部飲み干すと、安堵の表情を浮かべる。
私、ガリガリだもんねぇ。早くふっくら体型になって安心させないとね!
「うん、よく飲めました。少しずつ食事の量を増やしていこうね」
「は~い!」
元気よく返事をすると微笑まれた。
「さて、疲れてはいないかな? 大丈夫なら少しお話ししたいのだけど」
いいかな?と問いかける院長先生に頷く。
突然転がりこんでお風呂に食事までご馳走になって感謝しかない。
これからお世話になるつもりなので印象よく答えたいね。
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