3 / 4
孤児院に着きました
しおりを挟む
孤児院に着くと、入口に馬車が停まっており人が集まっていた。
「あぁ、今日は視察に来られていたんだな」
兵士さんが彼等に声をかけると、一斉に視線がこちらへと向けられた。
「あら……あらあらあら、まぁっ!」
姿を見るなり驚いた声をあげて、綺麗な女の人が慌てて駆け寄ってきて私を抱きしめる。
お高そうなドレスを着ているんだけど貴族……なのかな? 装飾品も品がよい物を身に付けている。
「なんてことなの! こんなに小さな子が……こんな酷いこと……」
涙ぐみながら怒ったように呟く。
ふかふかと柔らかいしいい匂いがするし気持ちよかったのでされるがままにされてたけど、彼女のドレスが汚れてしまったのを見て慌てて離れようとした。したけれど。
空腹で押し戻す力もなく、弱々しく背中を叩くと気づいた女性が離してくれた。
「こんなに痩せ細って可哀そうに……もう大丈夫ですよ。ここは安全な場所なの」
微笑みながら優しく言い聞かせてくる。
周囲からも同情や憐みの視線がビシバシ飛んできていたりする。とりあえず助けてもらえそうで安心した。
「院長先生、すぐにこの子に着替えと何か温かいものをお願いします」
「えぇ、すぐに用意いたします。リナも手伝ってください」
「はい、院長先生!」
女性は手や服が汚れてもさして気にすることなく、私の事を気遣ってくれている。よほど酷い見た目をしてるんだろう。
その場には他に何人かいたけど、メガネをかけたお爺ちゃんが院長先生らしくリナと呼ばれた少女と一緒に建物内へと連れていってくれた。
抱っこして運んでくれたけど、お爺ちゃんが力持ちなんじゃなくって私が軽いんだろうなぁ。
「お腹が空いてると思うけど、食事の準備をしている間に先に身体を温めようね」
部屋に通されソファーに座らされ、ゆっくり飲んでねと白湯を一杯渡された。一口飲んだらゴクンと喉が大きく鳴ったので驚く。何日も喉に何も通さなかったような違和感が酷くて顔を顰める。ほんと、よく生きてたな~……
少しずつ白湯を飲みながら、リナがタオルや石鹸、タライ等を運んでくるのを眺める。
そしてタライに張ったお湯で私の身体を拭いてくれたんだけどーー
「……うひぁぁ」
洗った後のすごく汚い黒い水に慄いた。この身体、最後にお風呂に入ったのいつだ?!
「髪の毛はどうしようかな……ちょっと時間がかかりそうだから、今は軽く拭いてご飯食べた後で洗う?」
毛先を軽くつまむ。べとっとして硬い。饐えた匂いがするし色も元の色と違う気がする。
もう、自分の身体の惨状っぷりに両手で顔を覆った。
空腹は空腹だけど、もはやお腹が空きすぎて感覚が薄れている。それよりも心なしか頭皮がかゆくなってきたこの頭をどうにかしたかった。
「先に洗わせてください……」
「それじゃあ、ご飯が冷めないように急いで洗うからね」
泣きそうな声でお願いする私に、リナは優しく応えてくれた。
この孤児院優しい人しかいないよ。
「あぁ、今日は視察に来られていたんだな」
兵士さんが彼等に声をかけると、一斉に視線がこちらへと向けられた。
「あら……あらあらあら、まぁっ!」
姿を見るなり驚いた声をあげて、綺麗な女の人が慌てて駆け寄ってきて私を抱きしめる。
お高そうなドレスを着ているんだけど貴族……なのかな? 装飾品も品がよい物を身に付けている。
「なんてことなの! こんなに小さな子が……こんな酷いこと……」
涙ぐみながら怒ったように呟く。
ふかふかと柔らかいしいい匂いがするし気持ちよかったのでされるがままにされてたけど、彼女のドレスが汚れてしまったのを見て慌てて離れようとした。したけれど。
空腹で押し戻す力もなく、弱々しく背中を叩くと気づいた女性が離してくれた。
「こんなに痩せ細って可哀そうに……もう大丈夫ですよ。ここは安全な場所なの」
微笑みながら優しく言い聞かせてくる。
周囲からも同情や憐みの視線がビシバシ飛んできていたりする。とりあえず助けてもらえそうで安心した。
「院長先生、すぐにこの子に着替えと何か温かいものをお願いします」
「えぇ、すぐに用意いたします。リナも手伝ってください」
「はい、院長先生!」
女性は手や服が汚れてもさして気にすることなく、私の事を気遣ってくれている。よほど酷い見た目をしてるんだろう。
その場には他に何人かいたけど、メガネをかけたお爺ちゃんが院長先生らしくリナと呼ばれた少女と一緒に建物内へと連れていってくれた。
抱っこして運んでくれたけど、お爺ちゃんが力持ちなんじゃなくって私が軽いんだろうなぁ。
「お腹が空いてると思うけど、食事の準備をしている間に先に身体を温めようね」
部屋に通されソファーに座らされ、ゆっくり飲んでねと白湯を一杯渡された。一口飲んだらゴクンと喉が大きく鳴ったので驚く。何日も喉に何も通さなかったような違和感が酷くて顔を顰める。ほんと、よく生きてたな~……
少しずつ白湯を飲みながら、リナがタオルや石鹸、タライ等を運んでくるのを眺める。
そしてタライに張ったお湯で私の身体を拭いてくれたんだけどーー
「……うひぁぁ」
洗った後のすごく汚い黒い水に慄いた。この身体、最後にお風呂に入ったのいつだ?!
「髪の毛はどうしようかな……ちょっと時間がかかりそうだから、今は軽く拭いてご飯食べた後で洗う?」
毛先を軽くつまむ。べとっとして硬い。饐えた匂いがするし色も元の色と違う気がする。
もう、自分の身体の惨状っぷりに両手で顔を覆った。
空腹は空腹だけど、もはやお腹が空きすぎて感覚が薄れている。それよりも心なしか頭皮がかゆくなってきたこの頭をどうにかしたかった。
「先に洗わせてください……」
「それじゃあ、ご飯が冷めないように急いで洗うからね」
泣きそうな声でお願いする私に、リナは優しく応えてくれた。
この孤児院優しい人しかいないよ。
0
あなたにおすすめの小説
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
『規格外の薬師、追放されて辺境スローライフを始める。〜作ったポーションが国家機密級なのは秘密です〜』
雛月 らん
ファンタジー
俺、黒田 蓮(くろだ れん)35歳は前世でブラック企業の社畜だった。過労死寸前で倒れ、次に目覚めたとき、そこは剣と魔法の異世界。しかも、幼少期の俺は、とある大貴族の私生児、アレン・クロイツェルとして生まれ変わっていた。
前世の記憶と、この世界では「外れスキル」とされる『万物鑑定』と『薬草栽培(ハイレベル)』。そして、誰にも知られていない規格外の莫大な魔力を持っていた。
しかし、俺は決意する。「今世こそ、誰にも邪魔されない、のんびりしたスローライフを送る!」と。
これは、スローライフを死守したい天才薬師のアレンと、彼の作る規格外の薬に振り回される異世界の物語。
平穏を愛する(自称)凡人薬師の、のんびりだけど実は波乱万丈な辺境スローライフファンタジー。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる