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孤児院に着きました

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孤児院に着くと、入口に馬車が停まっており人が集まっていた。

「あぁ、今日は視察に来られていたんだな」

兵士さんが彼等に声をかけると、一斉に視線がこちらへと向けられた。

「あら……あらあらあら、まぁっ!」

姿を見るなり驚いた声をあげて、綺麗な女の人が慌てて駆け寄ってきて私を抱きしめる。
お高そうなドレスを着ているんだけど貴族……なのかな? 装飾品も品がよい物を身に付けている。

「なんてことなの! こんなに小さな子が……こんな酷いこと……」

涙ぐみながら怒ったように呟く。
ふかふかと柔らかいしいい匂いがするし気持ちよかったのでされるがままにされてたけど、彼女のドレスが汚れてしまったのを見て慌てて離れようとした。したけれど。
空腹で押し戻す力もなく、弱々しく背中を叩くと気づいた女性が離してくれた。

「こんなに痩せ細って可哀そうに……もう大丈夫ですよ。ここは安全な場所なの」

微笑みながら優しく言い聞かせてくる。
周囲からも同情や憐みの視線がビシバシ飛んできていたりする。とりあえず助けてもらえそうで安心した。

「院長先生、すぐにこの子に着替えと何か温かいものをお願いします」
「えぇ、すぐに用意いたします。リナも手伝ってください」
「はい、院長先生!」

女性は手や服が汚れてもさして気にすることなく、私の事を気遣ってくれている。よほど酷い見た目をしてるんだろう。

その場には他に何人かいたけど、メガネをかけたお爺ちゃんが院長先生らしくリナと呼ばれた少女と一緒に建物内へと連れていってくれた。
抱っこして運んでくれたけど、お爺ちゃんが力持ちなんじゃなくって私が軽いんだろうなぁ。

「お腹が空いてると思うけど、食事の準備をしている間に先に身体を温めようね」

部屋に通されソファーに座らされ、ゆっくり飲んでねと白湯を一杯渡された。一口飲んだらゴクンと喉が大きく鳴ったので驚く。何日も喉に何も通さなかったような違和感が酷くて顔を顰める。ほんと、よく生きてたな~……

少しずつ白湯を飲みながら、リナがタオルや石鹸、タライ等を運んでくるのを眺める。
そしてタライに張ったお湯で私の身体を拭いてくれたんだけどーー

「……うひぁぁ」

洗った後のすごく汚い黒い水に慄いた。この身体、最後にお風呂に入ったのいつだ?!

「髪の毛はどうしようかな……ちょっと時間がかかりそうだから、今は軽く拭いてご飯食べた後で洗う?」

毛先を軽くつまむ。べとっとして硬い。饐えた匂いがするし色も元の色と違う気がする。
もう、自分の身体の惨状っぷりに両手で顔を覆った。

空腹は空腹だけど、もはやお腹が空きすぎて感覚が薄れている。それよりも心なしか頭皮がかゆくなってきたこの頭をどうにかしたかった。

「先に洗わせてください……」
「それじゃあ、ご飯が冷めないように急いで洗うからね」

泣きそうな声でお願いする私に、リナは優しく応えてくれた。
この孤児院優しい人しかいないよ。
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