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黒衣の王太后 ミカエラ④
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起こった大地震はこの国から全てを奪い取っていったわ。でも1つだけそれによって消えずに済んだ物があった。わたくしとあの人の間に、この時、まだほんの少しだけ残されていた、王と王妃としての絆よ」
わたくしはこの時の、あの悲惨な現状を思い起こしていた。
沢山の民が命を失った。
多くの民達が住まいを……職を失った。
当たり前の生活が一瞬にして崩れ去った。
それだけではない。
大地が裂け、収穫間近の農作物は壊滅的な被害を受けた。もう直ぐこの国の民は、食べる物にさえ困る様になるだろう。
だが、それを復興する為の財源もない。
商業活動も生産活動も止まってしまったこの国では、翌年からの税収さえも見込めないからだ。
地震は1度では無かった。その後、何度もの余震が国を襲った。その度に民達は怯え、逃げ惑い、更に被害は拡大していく。
エラルドがイーニアを側妃として娶ってからというもの、わたくし達の関係は冷え込んでいた。彼がわたくしを避ける様になったからだ。更に生家であるスティングライトが王弟派に着いてからは、わたくし達の対立は決定的なものとなり、公務以外ではまともに口を利くことさえなくなっていた。
でも、そんな事を言ってはいられなくなった。わたくし達はこの国の王と王妃…。国民達の暮らしを守る責務がある。
歪みあっている場合では無かった。
そして、それはリカルド様に対しても同じ事が言えた。
ジュリアスはこの時まだ15歳。
未だ王立学園の学生だ。とても地震の対応を任せられる様な年齢では無かった。
最初に歩み寄って来たのはエラルドの方からだった。
「もう国王派だの王弟派だのと言っている場合ではない。皆が一丸となって対応すべき時だ。どうか私に力を貸してくれくれないか?」
彼はそう言って頭を下げた。
わたくしから勝手に離れて行ったのは貴方でしょう。そう言ってやりたかったが、文字通り国の存亡の危機だ。わたくしにもリカルド様にも異論はなかった。
直ぐに国王派、王弟派の垣根なく国をあげて復興への道筋が協議された。
まずは国民の生活を守る事。直ぐに国の備蓄倉庫の開放が決定され、食料の配給が始まった。
でもそれも何時まで持つか…。
だから民の生活を支えつつ、早急に経済活動を復旧させて行く必要があった。
国の予算にも限りがある。まずは復旧が可能な場所に重点を置いて、資金を投入していく事になった。
その場所を選定する役割をリカルド様が担った。彼は率先して国中を駆け回り、情報を王宮にいるわたくし達にあげた。
わたくし達は彼から齎される情報を元に予算を配分していく。
周辺国へも助けを求めた。この時、真っ先に支援を名乗り出てくれたのが、シルヴィア様の嫁ぎ先であるジルハイム王国だった。
その後、支援の話し合いをする為に、シルヴィアが我が国を訪れた。
『お兄様には申し訳ないけれど、支援の話と引き換えに1つだけ条件をつけさせて頂くわ。でも、それを飲んで下されば、私が責任を持って周辺国にもロマーノを支援してもらえる様、話をつけてあげる。どう? 悪い話しではないでしょう?』
彼女はエラルドにそう話を切り出した。
エラルドはごくりと唾を飲み込んだ。
この状況だ。各国からの支援は喉から手が出る程欲しかった。
『……その、条件とは?』
エラルドが問いかけた。
『あら、簡単な事よ。お兄様の次の王位は必ずリカルドに譲る事。だって当たり前でしょう? 今、この国の王太子はリカルドよ? それから、反対にもしお兄様よりもリカルドが早く死んだとしても、王位はリカルドの子ジェラルドに継がせるわ。ジュリアスは絶対にダメ。彼には決して王位は継がせない!』
そう断言したシルヴィアにエラルドが噛みついた。
『内政干渉だろう。いくら大国ジルハイムと言えど、看過できない!』と。
『本来ならね? でもそれは、戦で奪われるなんて事でもない限り、どの国も王位は王家に連なる者が当たり前に継ぐからよ。でもジュリアスはそうでは無い。お兄様だってもう分かっているのでしょう? 彼はお兄様の子では無い! そんな誰の子からすら分からない様な馬の骨を、私の祖国の王にする事なんて出来ない。こちらの方が言いたい位よ。看過出来ないって!』
シルヴィアはそう言って声を荒げた。
『……っ! 違う…。ジュリアスは私の子だ。大切な大切な私の子なんだ…』
『それはお兄様がそう思いたいだけでしょう? なんなら我が国が独自に集めた証拠をお見せしましょうか? でも今、この国と国との交渉の場でそれを王であるお兄様が見たら、お兄様はあの子を市囲に放り出さなければいけなくなるわよ? 大切なあの女の産んだ子は果たしてそれに耐えられるのかしら?』
『……お前は私を…この私を脅す気か?』
この時、エラルドはシルヴィアの持つ証拠を見せろとは言わなかった。もし彼が本当にジュリアスを自分の子だと信じていたのなら、驚いてそれでも必ず見せろと言ったはずだ。そして確かめただろう。その書類が真実がどうか。だが、彼はそれをしなかった。
つまりエラルドはそれが真実だと知っていたのだ。
彼はやはりジュリアスが自分の子ではないと気付いていた。
気づいていて、それでもジュリアスを溺愛していた。
愛するイーニアが命をかけて産んだ子だったから。
『いいえ。違うわ。これは救いよ。今のこの国の状況で、ジルハイムから支援する条件を出されたと言えば、国王派と王弟派なんて言われる不毛な争いに決着が付く。お兄様は分かってる? 王家の血を持たない者が国を治めると言う事は、それは即ち、国を乗っ取られたと言う事よ? お兄様は本当にそれでいいの? いい加減目を覚まして頂戴。分かったらこの書類にサインして!』
シルヴィアは諭す様にエラルドに告げると、彼の前に書類を差し出し、エラルドは迷いながらもそれにサインした。
そうするより他に国が生き残る術がなかったからだ。
それにジュリアスにとっても、これは温情でもあった。
これで彼は、立場を奪われる事なく王宮で暮らせる。
「でも、この選択は間違いだったようね。王宮医師が言った様に、もし王弟一家の死が事故ではなく殺害だったとしたら、わたくし達は取り返しのつかない事をしてしまったわ」
「…ええ」
アルドベリクはわたくしを気遣う事なく頷いた。彼だって大切な婚約者を殺されたのだ。
それから2年後、災害現場を視察中だったリカルドの馬車の上に大きな岩が落ちて来た。
馬車は一溜りも無かった。馬車の中から発見されたのはリカルドと夫人、嫡男ジェラルド。そして娘のパトリシア。
何故馬車にジェラルドとパトリシアまでが乗っていたのか?
この時点で可笑しいと思った者はいた。
その筆頭が誰あろうエラルドだった。何せ、王家の血が根絶やしにされたのだ。彼は調査を命じたが、場所が場所だ。結局、王弟一家の死は不幸な事故として処理された。
そしてその僅か1年後、今度はエラルドが病に倒れた。
医師は言った。
『あの地震以来、陛下はずっと無理をされて来た。疲れが出たのでしょう』
この時、医師から告げられた彼の余命は1年だった。
だが、医師もグルだったのだ。もしかしたら何らかの薬物が使われていたのかも知れ無い。
こうしてまんまと国の乗っ取りは成功した。
ジュリアスは王位に付き、わたくしとエラルドは離宮に移った。
死の床に着いたエラルドは言った。
『あの時、シルヴィアの言った事が現実になったな』
彼は漸く気付いた様だ。もう何もかもが遅いと言うのに…。
だからアルテーシアの輿入れは、王家がその血を取り戻す為の苦肉の策だった。
王家の血を守る…。自分達が易々と手放した物を取り戻す。そんな事の為に、アルテーシアは犠牲になったのだった。
わたくしはこの時の、あの悲惨な現状を思い起こしていた。
沢山の民が命を失った。
多くの民達が住まいを……職を失った。
当たり前の生活が一瞬にして崩れ去った。
それだけではない。
大地が裂け、収穫間近の農作物は壊滅的な被害を受けた。もう直ぐこの国の民は、食べる物にさえ困る様になるだろう。
だが、それを復興する為の財源もない。
商業活動も生産活動も止まってしまったこの国では、翌年からの税収さえも見込めないからだ。
地震は1度では無かった。その後、何度もの余震が国を襲った。その度に民達は怯え、逃げ惑い、更に被害は拡大していく。
エラルドがイーニアを側妃として娶ってからというもの、わたくし達の関係は冷え込んでいた。彼がわたくしを避ける様になったからだ。更に生家であるスティングライトが王弟派に着いてからは、わたくし達の対立は決定的なものとなり、公務以外ではまともに口を利くことさえなくなっていた。
でも、そんな事を言ってはいられなくなった。わたくし達はこの国の王と王妃…。国民達の暮らしを守る責務がある。
歪みあっている場合では無かった。
そして、それはリカルド様に対しても同じ事が言えた。
ジュリアスはこの時まだ15歳。
未だ王立学園の学生だ。とても地震の対応を任せられる様な年齢では無かった。
最初に歩み寄って来たのはエラルドの方からだった。
「もう国王派だの王弟派だのと言っている場合ではない。皆が一丸となって対応すべき時だ。どうか私に力を貸してくれくれないか?」
彼はそう言って頭を下げた。
わたくしから勝手に離れて行ったのは貴方でしょう。そう言ってやりたかったが、文字通り国の存亡の危機だ。わたくしにもリカルド様にも異論はなかった。
直ぐに国王派、王弟派の垣根なく国をあげて復興への道筋が協議された。
まずは国民の生活を守る事。直ぐに国の備蓄倉庫の開放が決定され、食料の配給が始まった。
でもそれも何時まで持つか…。
だから民の生活を支えつつ、早急に経済活動を復旧させて行く必要があった。
国の予算にも限りがある。まずは復旧が可能な場所に重点を置いて、資金を投入していく事になった。
その場所を選定する役割をリカルド様が担った。彼は率先して国中を駆け回り、情報を王宮にいるわたくし達にあげた。
わたくし達は彼から齎される情報を元に予算を配分していく。
周辺国へも助けを求めた。この時、真っ先に支援を名乗り出てくれたのが、シルヴィア様の嫁ぎ先であるジルハイム王国だった。
その後、支援の話し合いをする為に、シルヴィアが我が国を訪れた。
『お兄様には申し訳ないけれど、支援の話と引き換えに1つだけ条件をつけさせて頂くわ。でも、それを飲んで下されば、私が責任を持って周辺国にもロマーノを支援してもらえる様、話をつけてあげる。どう? 悪い話しではないでしょう?』
彼女はエラルドにそう話を切り出した。
エラルドはごくりと唾を飲み込んだ。
この状況だ。各国からの支援は喉から手が出る程欲しかった。
『……その、条件とは?』
エラルドが問いかけた。
『あら、簡単な事よ。お兄様の次の王位は必ずリカルドに譲る事。だって当たり前でしょう? 今、この国の王太子はリカルドよ? それから、反対にもしお兄様よりもリカルドが早く死んだとしても、王位はリカルドの子ジェラルドに継がせるわ。ジュリアスは絶対にダメ。彼には決して王位は継がせない!』
そう断言したシルヴィアにエラルドが噛みついた。
『内政干渉だろう。いくら大国ジルハイムと言えど、看過できない!』と。
『本来ならね? でもそれは、戦で奪われるなんて事でもない限り、どの国も王位は王家に連なる者が当たり前に継ぐからよ。でもジュリアスはそうでは無い。お兄様だってもう分かっているのでしょう? 彼はお兄様の子では無い! そんな誰の子からすら分からない様な馬の骨を、私の祖国の王にする事なんて出来ない。こちらの方が言いたい位よ。看過出来ないって!』
シルヴィアはそう言って声を荒げた。
『……っ! 違う…。ジュリアスは私の子だ。大切な大切な私の子なんだ…』
『それはお兄様がそう思いたいだけでしょう? なんなら我が国が独自に集めた証拠をお見せしましょうか? でも今、この国と国との交渉の場でそれを王であるお兄様が見たら、お兄様はあの子を市囲に放り出さなければいけなくなるわよ? 大切なあの女の産んだ子は果たしてそれに耐えられるのかしら?』
『……お前は私を…この私を脅す気か?』
この時、エラルドはシルヴィアの持つ証拠を見せろとは言わなかった。もし彼が本当にジュリアスを自分の子だと信じていたのなら、驚いてそれでも必ず見せろと言ったはずだ。そして確かめただろう。その書類が真実がどうか。だが、彼はそれをしなかった。
つまりエラルドはそれが真実だと知っていたのだ。
彼はやはりジュリアスが自分の子ではないと気付いていた。
気づいていて、それでもジュリアスを溺愛していた。
愛するイーニアが命をかけて産んだ子だったから。
『いいえ。違うわ。これは救いよ。今のこの国の状況で、ジルハイムから支援する条件を出されたと言えば、国王派と王弟派なんて言われる不毛な争いに決着が付く。お兄様は分かってる? 王家の血を持たない者が国を治めると言う事は、それは即ち、国を乗っ取られたと言う事よ? お兄様は本当にそれでいいの? いい加減目を覚まして頂戴。分かったらこの書類にサインして!』
シルヴィアは諭す様にエラルドに告げると、彼の前に書類を差し出し、エラルドは迷いながらもそれにサインした。
そうするより他に国が生き残る術がなかったからだ。
それにジュリアスにとっても、これは温情でもあった。
これで彼は、立場を奪われる事なく王宮で暮らせる。
「でも、この選択は間違いだったようね。王宮医師が言った様に、もし王弟一家の死が事故ではなく殺害だったとしたら、わたくし達は取り返しのつかない事をしてしまったわ」
「…ええ」
アルドベリクはわたくしを気遣う事なく頷いた。彼だって大切な婚約者を殺されたのだ。
それから2年後、災害現場を視察中だったリカルドの馬車の上に大きな岩が落ちて来た。
馬車は一溜りも無かった。馬車の中から発見されたのはリカルドと夫人、嫡男ジェラルド。そして娘のパトリシア。
何故馬車にジェラルドとパトリシアまでが乗っていたのか?
この時点で可笑しいと思った者はいた。
その筆頭が誰あろうエラルドだった。何せ、王家の血が根絶やしにされたのだ。彼は調査を命じたが、場所が場所だ。結局、王弟一家の死は不幸な事故として処理された。
そしてその僅か1年後、今度はエラルドが病に倒れた。
医師は言った。
『あの地震以来、陛下はずっと無理をされて来た。疲れが出たのでしょう』
この時、医師から告げられた彼の余命は1年だった。
だが、医師もグルだったのだ。もしかしたら何らかの薬物が使われていたのかも知れ無い。
こうしてまんまと国の乗っ取りは成功した。
ジュリアスは王位に付き、わたくしとエラルドは離宮に移った。
死の床に着いたエラルドは言った。
『あの時、シルヴィアの言った事が現実になったな』
彼は漸く気付いた様だ。もう何もかもが遅いと言うのに…。
だからアルテーシアの輿入れは、王家がその血を取り戻す為の苦肉の策だった。
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