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第35話
いきなり現れて王太子の椅子に座ったリシャールを待っていたかの様に、陛下は謁見の間に集まった皆に向かって高らかに宣言した。
「エドモンドを廃嫡とし、新たにリシャールを王太子と定める」と…。
その陛下の言葉を聞いて、謁見の間は一瞬静まりかえった。
だが次の瞬間、誰からともなく拍手が湧き起こった。
「リシャール殿下万歳!」
「新しい王太子殿下に祝福を!」
皆が口々にそう叫ぶ。
まるでそこに佇むエドモンドなど、誰の目にも映っていないかの様に、謁見の間に集まった皆がリシャールを王太子だと認め、祝福の言葉を送ったのだ。
無理もない事だろう。
国に2つしか無い公爵家。その両方がリシャールの後ろ盾となったのだから…。
だが、これに納得のいかない人物がいた。
「…廃嫡…? 僕は廃嫡されるのか…? そんな…いやだ…。いやだ! 何故…。何故ですか? 父上!!」
その光景を絨毯の真ん中に立ち呆然と見ていたエドモンドは、突然何かに気付いたかの様にそう叫ぶと、頭を何度も振りながら縋る様な目で陛下を見た。
「お前は大切にする相手を間違えたのだ…。私は言った筈だ。彼女を大切にするようにと…な。だが、お前は其れをせず、その女に溺れ、挙句、お前にとって何よりも大切だったルクソールの後ろ盾を失った。これはいわば自業自得。諦めるんだな」
だが、陛下はそんなエドモンドを一瞥し、無慈悲にそう告げただけだった。
「そんな…僕はまた貴方に捨てられるのか…」
エドモンドはその場に崩れ落ちた。
陛下にとって王太子は、エドモンドでもリシャールでもどちらでも良かったのだ。彼はより自分の利益になる方を選ぶだけだ。そして今、ルクソールに捨てられたエドモンドなどもう利用価値はないと思ったのだろう。簡単に切り捨てた。陛下にとってはただそれだけの事だった…。
そう…陛下はそう言う男なのだ。
その時、エドモンドの隣に居たルルナレッタが突然声を上げた。
「この子は…。 この子はどうなるのです! 陛下にとっても初めての、大切な孫ではないのですかか…?」
彼女は自身のお腹を摩りながら、必死に陛下に訴えかける。
だが、そんな彼女に答えたのはリシャールだった。
彼は椅子から立ち上がると壇上から2人を見下ろしながら告げた。
「私はね…。病に倒れ療養中だと王家からは発表されていましたが実際には違うんですよ…。本当は毒を盛られ、死にかけたんだ…」
「……毒…?」
エドモンドは驚いた様に顔を上げて、リシャールを見つめた。
謁見の間は、リシャールの突然の告白に水を打ったかの様に静まりかえる。
だが私は、エドモンドの反応を見て安心した。やはりエドモンドは、リシャールの毒殺未遂には関与していなかったのだと確信したからだ。
「ですが、毒殺に失敗した犯人は次に療養中の私を病で足が縺れたと言う建前のもと、階段から突き落とそうとした。だがそれは、事前に気付いたリベリア嬢のお陰で未然に防ぐ事が出来ました。良いですか、兄上。未然に防げたんです。勿論、実行犯は捕まりました。だから、犯人を油断させるため態と嘘の噂を流した。私は重体だとね。そして犯人にのみ違う情報を伝えて貰ったんですよ。私は階段から落ちて再起不能の重体だとね」
つまりこう言う事だ。リシャールが重体だと噂を流す。彼は王家から病気療養中だと発表されている。だから其れを聞いた皆は思うだろう。彼は病で重体なのだと。
すると、その意味に気付いたのか、エドモンドの隣に居るルルナレッタが震え出した。
「え?」
エドモンドは咄嗟に自分の隣に佇むルルナレッタをチラリと見た。彼女はエドモンドから分かりやすく視線を逸らす。
その2人の様子を見て、リシャールは更に言葉を繋いだ。
「つまり、私が階段から落ちた…。その嘘の情報を知っているのは私を殺めようとした犯人だけだと言う事ですよ。ではお聞きしましょう。兄上、貴方は先程、私が階段から落ちたと言いましたよね? 兄上は誰にその話をお聞きになったのですか?」
そうリシャールが詰め寄った時だった。
エドモンドの隣に居るルルナレッタが大声で叫びながらエドモンドに抱きついた。
「違う! 違う! 違う! 私は関係ない! 王妃様に…貴方のお母様に聞いただけなのよ!! 私じゃない! 私じゃないの!! 私は聞いただけなの! 本当よ?お願い、エドモンド! 私を信じて! 」
だが、エドモンドはルルナレッタを払い退けると、まるで信じられない物を見る様な冷たい目で、彼女を見つめた。
「母を…母上を巻き込むな…」
そう告げながら…。
やはり彼にとって1番大切なのは母である王妃だったのだ。
「そんな…」
ルルナレッタは絶望した様な目をエドモンドに向けた。
リシャールはそんな彼女を更に問い質した。
「では貴方はあくまでも王妃様から聞いただけで、関係はないと…?」
彼女は必死に頷いた。
そんな彼女にリシャールは呆れた様にため息を吐いた。彼はルルナレッタに毒の入った小瓶を見せた。
「これは今朝、貴方の部屋を捜索した近衛が見つけた物です。中身を調べた所、毒だと判明しました。それに私は先程言った筈だ。実行犯は拘束済みだと…。それでもまだ、自分は無関係だと言い張るのか!?」
リシャールはそう言って声を荒げた。そして部屋の隅に控える近衛の兵士に向かって命令した。
「彼女を王族殺害未遂の疑いで捕縛せよ!」と…。
「エドモンドを廃嫡とし、新たにリシャールを王太子と定める」と…。
その陛下の言葉を聞いて、謁見の間は一瞬静まりかえった。
だが次の瞬間、誰からともなく拍手が湧き起こった。
「リシャール殿下万歳!」
「新しい王太子殿下に祝福を!」
皆が口々にそう叫ぶ。
まるでそこに佇むエドモンドなど、誰の目にも映っていないかの様に、謁見の間に集まった皆がリシャールを王太子だと認め、祝福の言葉を送ったのだ。
無理もない事だろう。
国に2つしか無い公爵家。その両方がリシャールの後ろ盾となったのだから…。
だが、これに納得のいかない人物がいた。
「…廃嫡…? 僕は廃嫡されるのか…? そんな…いやだ…。いやだ! 何故…。何故ですか? 父上!!」
その光景を絨毯の真ん中に立ち呆然と見ていたエドモンドは、突然何かに気付いたかの様にそう叫ぶと、頭を何度も振りながら縋る様な目で陛下を見た。
「お前は大切にする相手を間違えたのだ…。私は言った筈だ。彼女を大切にするようにと…な。だが、お前は其れをせず、その女に溺れ、挙句、お前にとって何よりも大切だったルクソールの後ろ盾を失った。これはいわば自業自得。諦めるんだな」
だが、陛下はそんなエドモンドを一瞥し、無慈悲にそう告げただけだった。
「そんな…僕はまた貴方に捨てられるのか…」
エドモンドはその場に崩れ落ちた。
陛下にとって王太子は、エドモンドでもリシャールでもどちらでも良かったのだ。彼はより自分の利益になる方を選ぶだけだ。そして今、ルクソールに捨てられたエドモンドなどもう利用価値はないと思ったのだろう。簡単に切り捨てた。陛下にとってはただそれだけの事だった…。
そう…陛下はそう言う男なのだ。
その時、エドモンドの隣に居たルルナレッタが突然声を上げた。
「この子は…。 この子はどうなるのです! 陛下にとっても初めての、大切な孫ではないのですかか…?」
彼女は自身のお腹を摩りながら、必死に陛下に訴えかける。
だが、そんな彼女に答えたのはリシャールだった。
彼は椅子から立ち上がると壇上から2人を見下ろしながら告げた。
「私はね…。病に倒れ療養中だと王家からは発表されていましたが実際には違うんですよ…。本当は毒を盛られ、死にかけたんだ…」
「……毒…?」
エドモンドは驚いた様に顔を上げて、リシャールを見つめた。
謁見の間は、リシャールの突然の告白に水を打ったかの様に静まりかえる。
だが私は、エドモンドの反応を見て安心した。やはりエドモンドは、リシャールの毒殺未遂には関与していなかったのだと確信したからだ。
「ですが、毒殺に失敗した犯人は次に療養中の私を病で足が縺れたと言う建前のもと、階段から突き落とそうとした。だがそれは、事前に気付いたリベリア嬢のお陰で未然に防ぐ事が出来ました。良いですか、兄上。未然に防げたんです。勿論、実行犯は捕まりました。だから、犯人を油断させるため態と嘘の噂を流した。私は重体だとね。そして犯人にのみ違う情報を伝えて貰ったんですよ。私は階段から落ちて再起不能の重体だとね」
つまりこう言う事だ。リシャールが重体だと噂を流す。彼は王家から病気療養中だと発表されている。だから其れを聞いた皆は思うだろう。彼は病で重体なのだと。
すると、その意味に気付いたのか、エドモンドの隣に居るルルナレッタが震え出した。
「え?」
エドモンドは咄嗟に自分の隣に佇むルルナレッタをチラリと見た。彼女はエドモンドから分かりやすく視線を逸らす。
その2人の様子を見て、リシャールは更に言葉を繋いだ。
「つまり、私が階段から落ちた…。その嘘の情報を知っているのは私を殺めようとした犯人だけだと言う事ですよ。ではお聞きしましょう。兄上、貴方は先程、私が階段から落ちたと言いましたよね? 兄上は誰にその話をお聞きになったのですか?」
そうリシャールが詰め寄った時だった。
エドモンドの隣に居るルルナレッタが大声で叫びながらエドモンドに抱きついた。
「違う! 違う! 違う! 私は関係ない! 王妃様に…貴方のお母様に聞いただけなのよ!! 私じゃない! 私じゃないの!! 私は聞いただけなの! 本当よ?お願い、エドモンド! 私を信じて! 」
だが、エドモンドはルルナレッタを払い退けると、まるで信じられない物を見る様な冷たい目で、彼女を見つめた。
「母を…母上を巻き込むな…」
そう告げながら…。
やはり彼にとって1番大切なのは母である王妃だったのだ。
「そんな…」
ルルナレッタは絶望した様な目をエドモンドに向けた。
リシャールはそんな彼女を更に問い質した。
「では貴方はあくまでも王妃様から聞いただけで、関係はないと…?」
彼女は必死に頷いた。
そんな彼女にリシャールは呆れた様にため息を吐いた。彼はルルナレッタに毒の入った小瓶を見せた。
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