漆黒の万能メイド

化野 雫

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第12話

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「体の肌艶に触り心地だって!
 あんた、やっぱあの美人メイドとそう言う仲じゃないか!」

「口では興味なさそうな事言って、
 その実、あんちゃんだってあのメイドさんに惚れてるんじゃないかよ!」

「くぅ~っ、あんな美人の年上メイドさんとそんな仲なんて、
 羨まし過ぎるぜ! 爆発しちまえ、リア充野郎がぁ~!」

 すると男達が口々にそう叫ぶと手に持ったカードを放り投げて、商人に男に走り寄って来てた。そして、笑いながらボカスカとその頭を叩き出した。

「うわっ! いやいや、あいつが僕に惚れてるんであって、
 僕の方はもっと若くて可愛いメイドさんが良いですって!
 あんな気が強くて可愛げなのない奴なんて迷惑なだけですよ!」

「くそぉ~! のろけてんじゃねぇ~!」

 頭を抱えながら迷惑そうに叫んだ商人の男の言葉に刺激された男達はそう言って、商人の首を絞めたり腹パンを繰り出したりしていた。まあ、それもあくまで冗談めかしたもので決して本気でないのは誰の目にも明らかだった。

 それを見ていた周りの男達も、さも愉快そうにげらげらと大声で笑いながらその様子を観戦していた。



 その頃、そのメイドが囚われた寝室では、片手に琥珀色の酒が注がれた丸く大きなブランデーグラス、もう片手に紫色の煙がゆらゆらと立ち上る葉巻を持って、男がソファーに座っていた。

 男はグラスから立ち上る芳醇な香りを楽しみつつグラスに口を付けると、少しだけその琥珀色の液体を口に流し込みゆっくりと味わった。

 そして、男は満足げな顔でベッドの方を見た。

 その男をベッドの上の泣き濡れた目がじっと睨みつけている。

 着ていた白いエプロンドレスはすでに剥ぎ取られ、黒いロングワンピースの胸元は大きく引き裂かれ白い胸が露わになっていた。革の足枷から繋がった鎖で左右に広げられた足の間には高級そうな黒いレースの下着の残骸があった。

 深い絶望と屈辱に塗れながらも、その磨き抜かれた黒曜石の様な漆黒の瞳には、まだ強い意志が込められていた。


 手足の自由を奪われ、口には口枷を嵌められながらも、このメイドは激しく抵抗した。その体の奥底までも蹂躙した瞬間、メイドの瞳に絶望の影が浮かび涙があふれ出した。それでもメイドは屈服することなく拒絶の意思を示し続けた。それがなお一層、男をたぎらせた。

 このメイドを征服した瞬間、男はいままでかつて味わった事のない達成感と満足感を得た。最初はなるべく長く楽しもうと思っていた。しかしその意思に反して、男はまるで童貞男の様にあっさりと果ててしまった。

 絶対に許さない……。

 男が果てると、メイドは男をじっと睨みつけながら、木の枷を噛まされ自由にならないその口ではっきりそう言った。男にはその言葉すら心地よかった。驚く事に、今、体は満足を得たはずなのにすぐさま回復を始めていた。その後、男は繰り返し何度もメイドを犯した。

 メイドは、最後の最後まで屈服しなかった。自由にならぬその体と口で拒絶と憎悪の意思を示し続けた。その意思の強さが逆に自身の身により長い恥辱の時を与えるとはメイドには分からなかったのだろう。いや、分かった所で、このメイドなら男に屈服するより、拒絶と憎悪の意思を最後まで示し続ける事を選ぶだろうと男は思った。


「ふっ……良い眼だ。
 あれだけ責め抜かれてもまだそんな目が出来るとは恐れ入った。
 いつまでそんな目をしていられるかとても楽しみだよ」

 男はベッドの上のメイドを見てそう言って笑った。その瞬間、メイドの黒い瞳により強い憎悪の炎が燃え上がる様に見えた。

 男は再びベッドに近寄り腰かけるとメイドの顎を手で掴みその目をじっと見つめながら続けた。

「どうだ、大人しく俺の物にならないか?
 しがない旅商人のメイドでいるより遥かに良い想いが出来るぞ」

 しかしメイドは強い拒絶の意思を込めた瞳で男をじっと見つめ返すだけだった。

「まあ良い。お前の様な強情な女を攻め落とすのは楽しいからな。
 ここで俺の誘いを断った事を、
 後で死ぬほど後悔する様な目に会せてやるから覚悟しておけ。
 これからは今みたいな生易しい責めだけじゃないぞ……」

 そんな強気の態度を崩さぬメイドに男はそう言ってにやりと笑った。
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