漆黒の万能メイド

化野 雫

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第18話

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 思春期を迎えた彼にとって、いつしかそのメイドは誰にも代え難い『想い人』にまでなった。

 そして、忘れもしないあの日、彼のメイドへの強い想いはついに通じ、メイドはその日から彼の『恋人』になった。

 その大切な恋人を、自身の目の前で人として決して許されるまでに汚され辱められた。それなのに自分はそれを見ながら何も出来ないでいる。そのどうしようもない怒りの矛先は、そのメイドをあそこまで凌辱しつくした町長へではなく、段々と愛する女一人守れない自分自身へと向けられていった。

「僕はまた……。
 ちくしょう……姫君め……。
 分かってはいるのに、またあの時の事を思い出してしまうじゃないか」

 若い商人は小さくそう呟いて自嘲気味に笑った。

「ふっ……あの若造もいよいよ壊れて来た。
 ここで一気に自身も責め立ててぶっ壊してやる。
 目の前で前の主人が壊れるのを見せればこいつの調教も完璧だな」

 一方、そんな若い商人の姿を見て勝手にそう解釈した町長はそう言ってほくそ笑んだ。そして、自身の身にすべてをゆだねる様にぐったりともたれ掛かるメイドの黒髪を愛おし気に撫でた。一方、当のメイドは気だるげな表情でちらりと町長を見上げただけだった。


 すると大広間のこれ見よがしに大ぶりで華美な装飾が施された扉が開いて、大柄な男が入って来た。男の手には鎖が握られ、その鎖はすぐ後ろに居たメイド服を来た若い女の首元に巻かれた首輪に繋がっていた。そのメイドは黒髪のメイドが町長の手に落ちる前に弄ばれていたあの若いメイドだった。

 そして、その二人の後からもう一人男が入って来た。

 その男は、前を行く大柄な男とも、町長とも雰囲気が明らかに違っていた。貴族然とした服を少し着崩して纏い、その腰には立派な剣が下げられている。体つきも前を行く男より小柄であるが、町長や若い商人とは全く違う精悍な感じがした。

 普通の男なら顔や体に多少の火傷跡があった所であのメイドの、いやメイドでなくとも全裸の若い女のあの様な姿を見れば必ず興味を引かれるのが当たり前だ。しかし、その男は世にも珍しい黒髪を持つ美しい女が全裸で町長の膝の上に乗っているを見ながら、それにはまったく興味が無さそうであった。そればかりか何か面倒な用事でも言いつけられた様に、憮然とした表情で大広間に入って来た。

 その男の雰囲気は、あえて言うなら、そう、何かストイックな雰囲気すら漂わせていた。

「あれは……騎士、あるいは騎士崩れか。
 下手すると姫君が……」

 その時、若い商人の表情が一瞬だけ変わりその目がきらりと光った。そして小さくそう呟いた。もちろん、町長はそんな商人の変化にまったく気付いてはいなかった。

「さて、ではそろそろ、余興の第二部を始めるか」

 商人はその口元に残忍な笑みを浮かべながらおもむろにそう言い放った。そして、メイド服姿の若い女の首に繋がった鎖を握る大男に命じた。

「では、さっそく、その女をそこに転がってる男へ……」

 町長はそう言って今度はにやにやと見るからにいやらしい笑いを浮かべた。

 その言葉に、大男は鎖で引きずる様にしてメイド姿の女を若い商人の前へと引き出した。そして女の両肩を押して若い男の前に跪かせた。女は何か言いたげにその大男を見た。しかし大男は表情一つ変えずに、女の首に巻かれた首輪を外すと、ただ顎でその女に何かを始める様に促しただけだった。

 メイド姿の女はそれを見て諦めたかの様な表情を浮かべ目を閉じた。そして一呼吸の後、目をゆっくりと開け、商人の男を見て小声で呟いた。

「ごめんなさい……」

 そう呟くと女はおもむろに商人の男のベルトに手を掛けた。


 それを見て、にやにやといやらしい笑いを浮かべた町長はメイド姿の女を引き連れて来た大男に声を掛けた。

「もうお前は良いぞ」

 町長の言葉を聞いて、その大男は町長に仰々しく頭を下げると、外した首輪と鎖を手に持って大広間をそっと出て行った。


「おい……一体、何をするつもりだ?」

 商人の男は驚きの表情でメイド姿の女を見て思わず声を上げた。しかし女は一瞬、その男の顔を見ただけですぐに顔を伏せてしまった。そして、ゆっくりと男のベルトのバックルを外し、そのままズボンを下した。男の下着が昼の様に明るい大広間の明かりの下に露わになった。
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