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第23話
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しかしだ。
腰に構えた短剣の切先が町長の胸を刺し貫く一歩手前で、甲高い金属音と共に止まった。
その瞬間、メイド姿の女は何が起こったのかまったく分からなかった。
ただ、あの時の町長と同じ唖然とした表情で目の前を見詰めていただけだった。
そこには、一人の男が居た。
自分をまるで犬の様に首輪に繋がれた鎖で引き連れて来た大男は、すでにこの大広間から出ていた。
町長から永遠とも思えた酷い陵辱が済み町長が満足すると、自分を地下牢に戻すがあの大男の役目だった。それだけではない。あの大男はいつも牢に着くと自分を犯した。こちらの事などお構いなく、地下牢に降りると待ちきれぬ様にすぐ、壁に手をつかされ後ろから乱暴に犯された。そして自身の欲望を体内に吐き出と、まるゴミくずでも捨てるかの様に自分を地下牢に放り込みさっさと帰って行った。
その間、少しでも抵抗しようものなら、いや抵抗する前にほんの少しでもそう言う素振りを見せただけでも腹を嫌と言う程殴られた。吐き出す物が何もなくて胃液を吐くまで何度も何度も。もう最近では諦めきって、地下に降り男がそう言う素振りを見せると反射的に壁に手を付き、足を広げ腰を突き出すようになっていた。
町長も、もちろんメイド姿の女にとっては恐怖の対象であったが、それにもまして、あの大男も彼女にとっては恐怖の的であった。
その大男は、少なくとも、今、この場所には居ない。それがどれだけメイド姿の女にとって心強かったか。
確かのあの騎士崩れ風の男はこの屋敷で何度か見た。町長の傍に居る事も多く俗言う用心棒だろうとは思っていた。それでもいつもやる気のなさそうなだらけた様子だった。腰に剣をぶら下げてはいるから一応、剣士ではあるのだろう。しかし、その姿からは決して腕の立つ剣士には見えなかった。どちらかと言うと騎士崩れを装うごろつき上がりが口上手く町長に取り入ったのだろうと女は思っていた。
しかし、今、その騎士崩れの男が目の前に居る。しかも引き抜かれ怪しく光を反射する青白い刃でものの見事に女が両手で腰だめにした短剣を受け止めている。
この男は大広間の入り口付近の壁にやる気のなさそうに両手を組んでもたれ掛かっていたはずだった。町長を殺そうと走り出す前にも確かに確認した。いや、その後だって足音はおろか、近寄って来る気配さえもなかった。自分の視界には町長とあの黒髪の女しか写っていなかった。
まるでこの男は、瞬間移動してそこに現れたかのようにここに居た。
「まったく、いつまで茶番に付き合わされるかとうんざりしていた所だよ」
男はそう言って、メイド姿の女を短剣を止めた剣で押し返した。
その時の男の声はあのいつもの姿の様に気だるげだったが、その表情と眼光はまったく別人だった。不気味な薄ら笑いを浮かべ、でもその表情は見る者を凍り付かせるほどの凄まじい恐怖のオーラを揺らめかせていた。メイド姿の女はそれに圧倒され、数歩後ろによろめくと腰が抜けたかの様にへなへなとその場にへたり込んでしまった。
まずい! 商人の若い男はその瞬間思った。
すでに隙を伺い、袖口に隠し持っていた爪磨きの様な小さなやすりで腕の縄は力を入れればすぐにでも引きちぎれるまでにしてある。もちろん、足の縄も同じだった。
商人の男は手足に力を入れ一気に縄を引きちぎるとメイド姿の女の方へ駆け出そうとした。
「動くな! それ以上、動けばこの女は斬る!」
騎士崩れの男が手に持った剣を構え直して叫んだ。
その声に商人の男は駆け出した足を止めた。
最初は相手があの男なら制圧出来ると思っていた。だから、相手がまったく警戒してないであろうメイド姿の女に町長を刺す指示をした。一撃で町長を行動不能な状態に出来ない可能性は高かったが、その時になってから自分が動いても十分間に合うと思っていた。
しかしだ。あの騎士崩れの男は、こちらが察する前にその雰囲気をがらりと変えた。誰が見ても、そう、曲りなりにも『帝の剣』の名を戴く自分にさえもその瞬間を感じさせなかった。こちらが尋常でない感覚を感じた時にはすでにメイド姿の女と町長の間に割って入ってその短剣を防いでいた。
腰に構えた短剣の切先が町長の胸を刺し貫く一歩手前で、甲高い金属音と共に止まった。
その瞬間、メイド姿の女は何が起こったのかまったく分からなかった。
ただ、あの時の町長と同じ唖然とした表情で目の前を見詰めていただけだった。
そこには、一人の男が居た。
自分をまるで犬の様に首輪に繋がれた鎖で引き連れて来た大男は、すでにこの大広間から出ていた。
町長から永遠とも思えた酷い陵辱が済み町長が満足すると、自分を地下牢に戻すがあの大男の役目だった。それだけではない。あの大男はいつも牢に着くと自分を犯した。こちらの事などお構いなく、地下牢に降りると待ちきれぬ様にすぐ、壁に手をつかされ後ろから乱暴に犯された。そして自身の欲望を体内に吐き出と、まるゴミくずでも捨てるかの様に自分を地下牢に放り込みさっさと帰って行った。
その間、少しでも抵抗しようものなら、いや抵抗する前にほんの少しでもそう言う素振りを見せただけでも腹を嫌と言う程殴られた。吐き出す物が何もなくて胃液を吐くまで何度も何度も。もう最近では諦めきって、地下に降り男がそう言う素振りを見せると反射的に壁に手を付き、足を広げ腰を突き出すようになっていた。
町長も、もちろんメイド姿の女にとっては恐怖の対象であったが、それにもまして、あの大男も彼女にとっては恐怖の的であった。
その大男は、少なくとも、今、この場所には居ない。それがどれだけメイド姿の女にとって心強かったか。
確かのあの騎士崩れ風の男はこの屋敷で何度か見た。町長の傍に居る事も多く俗言う用心棒だろうとは思っていた。それでもいつもやる気のなさそうなだらけた様子だった。腰に剣をぶら下げてはいるから一応、剣士ではあるのだろう。しかし、その姿からは決して腕の立つ剣士には見えなかった。どちらかと言うと騎士崩れを装うごろつき上がりが口上手く町長に取り入ったのだろうと女は思っていた。
しかし、今、その騎士崩れの男が目の前に居る。しかも引き抜かれ怪しく光を反射する青白い刃でものの見事に女が両手で腰だめにした短剣を受け止めている。
この男は大広間の入り口付近の壁にやる気のなさそうに両手を組んでもたれ掛かっていたはずだった。町長を殺そうと走り出す前にも確かに確認した。いや、その後だって足音はおろか、近寄って来る気配さえもなかった。自分の視界には町長とあの黒髪の女しか写っていなかった。
まるでこの男は、瞬間移動してそこに現れたかのようにここに居た。
「まったく、いつまで茶番に付き合わされるかとうんざりしていた所だよ」
男はそう言って、メイド姿の女を短剣を止めた剣で押し返した。
その時の男の声はあのいつもの姿の様に気だるげだったが、その表情と眼光はまったく別人だった。不気味な薄ら笑いを浮かべ、でもその表情は見る者を凍り付かせるほどの凄まじい恐怖のオーラを揺らめかせていた。メイド姿の女はそれに圧倒され、数歩後ろによろめくと腰が抜けたかの様にへなへなとその場にへたり込んでしまった。
まずい! 商人の若い男はその瞬間思った。
すでに隙を伺い、袖口に隠し持っていた爪磨きの様な小さなやすりで腕の縄は力を入れればすぐにでも引きちぎれるまでにしてある。もちろん、足の縄も同じだった。
商人の男は手足に力を入れ一気に縄を引きちぎるとメイド姿の女の方へ駆け出そうとした。
「動くな! それ以上、動けばこの女は斬る!」
騎士崩れの男が手に持った剣を構え直して叫んだ。
その声に商人の男は駆け出した足を止めた。
最初は相手があの男なら制圧出来ると思っていた。だから、相手がまったく警戒してないであろうメイド姿の女に町長を刺す指示をした。一撃で町長を行動不能な状態に出来ない可能性は高かったが、その時になってから自分が動いても十分間に合うと思っていた。
しかしだ。あの騎士崩れの男は、こちらが察する前にその雰囲気をがらりと変えた。誰が見ても、そう、曲りなりにも『帝の剣』の名を戴く自分にさえもその瞬間を感じさせなかった。こちらが尋常でない感覚を感じた時にはすでにメイド姿の女と町長の間に割って入ってその短剣を防いでいた。
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