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第32話
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「この姿ならお前たちも納得しよう」
その美しい戦乙女はそう言って笑った。
「おい、まさか……本当にそうなのか?」
「これが『アメリア姫』の本当の姿なの?」
その姿に剣士とメイド姿の女はそう言って絶句した。
「その者たち!
王位継承を剥奪されたとはいえ、
妾をクレサリス王国第一王女アメリアを知ってその態度か!
頭が高いぞ!」
その瞬間、戦乙女がそう声を発した。
その声は一点の陰りもなく澄み渡り、しかも威厳と静かな殺気が籠り、どこまでも響き渡るかのようであった。
その威厳の重みと殺気への恐怖から、剣士とメイド姿の女はほとんど無意識に、いや圧倒的な強者相手に服従を示す動物の本能からその場にひれ伏した。いまだ幻影に囚われたままの町長ですら、気がつくと意識が混濁したままその場にひれ伏していた。
若き帝の騎士は、忠誠を示すかのように、姿勢正しを胸に手を当て正し立ったままでいた。
「ふっ……この姿に戻って、つい調子に乗ってしまった。
まあ、良い、そこの二人。
自分で言っておいてなんだがそうかしこまるな」
すると今は美しき戦乙女の姿になった黒髪のメイドがそう言って自嘲気味に笑った。途端に纏っていた威厳に満ちた王女の雰囲気が、姿こそそのままながらがらりと親しみのあるものに変わった。
それを見て剣士はやや安心したのかひれ伏していた頭を上げた。その途端、緊張の糸が緩み、忘れていた腕の痛みを思い出した。
「ちくしょう、また痛んできやがった」
剣士はそう小さく呟いた。
「悪かったな。
お前の速さが思ってた以上でつい深く斬りつけてしまった様だ」
戦乙女はそう言って軽く頭を下げて微笑んだ。
「どのみち俺は、そこでいまだに呆けている町長に連座して、
良くて一生牢獄、下手すりゃ死刑だ。
どうせなら、真の『剣聖』であるあんたに斬り殺されたかったよ」
剣士はそう言うと少し寂し気な笑みを浮かべた。
「なんかさぁ、あんたって、
あんなクズ町長の用心棒やってる人間には見えないんだよね」
若き帝の騎士はそう言って剣士を見てから、戦乙女を振り返って尋ねた。
「ひょっとして、姫は、もうこの男の事分かってらっしゃるとか?」
「じゃなきゃ、私が、あんなクズ野郎の用心棒を生かしちゃおかないだろうが」
すると戦乙女はそう言ってにやりと笑った。
「俺の事を分かってるって?」
その言葉に剣士は不思議そうな表情を浮かべた。
「ああ、今の私はどっちかって言うと神様に近い存在だからな。
生きてた時よりさらにレベルが上がってるんだよ。
まあ、そこでお前の事情も知ったうえで取引だ」
そう言って戦乙女は剣士の目に自分の目線をしっかり合わせて見て続けた。
「私の騎士団に入れ。
さすればお前の今までの罪、すべて咎め無しとしよう」
「罪を帳消しにされるのは嬉しいが……、
『私の騎士団』ってどう言う事だ?
あんたも『帝の騎士団』の一員じゃなかったのか?
『帝の騎士団』に入れるか入れないかを決めるのはあの女帝様だろ」
その言葉に剣士は怪訝な表情で尋ねた。
「それは半分あってるが半分は違う。
私は『帝の騎士』ではあるが、お前たちの知ってる方じゃない。
あれは『表』の方だ。
私は『裏』の方。
そして私はその『裏』の『No.1』さ。
『裏』の方に関する全権限は私が持ってるな。
ちなみに、そいつは『表』と『裏』両方の番号を持ってる稀有な存在だ」
そう言って戦乙女は若き帝の騎士を見た。すると若き帝の騎士は少し誇らしげな顔になって微笑みと剣士を見て軽く頭を下げた。
「まあ、稀有な存在ではあるが、
剣の腕の方はまったく稀有じゃないがな」
それを見て戦乙女はそう言って笑った。
「『帝の騎士』に『表』と『裏』なんて聞いたことが無いぞ!」
戦乙女の言葉になお一層、怪訝な表情を深めた剣士が思わず声を上げた。
「当たり前だ。お前たちが知ってるなら『裏』なんて言わないだろう」
剣士の言葉にも戦乙女は動じることなく、それがあたかも当然の様にそうさらりと答えた。
「お前みたいな訳アリで腕の立つ奴にはうってつけの就職先だと思うぞ」
そう言った後、戦乙女はそう言って笑った。
「言葉では俺に選択権がある様だが、
実際には選択の余地はないんだろうな」
「まあ、ぶっちゃけそう言う事だ」
剣士が苦笑しながらそう尋ねると、戦乙女はそう答えてからさも愉快げに笑った。
その美しい戦乙女はそう言って笑った。
「おい、まさか……本当にそうなのか?」
「これが『アメリア姫』の本当の姿なの?」
その姿に剣士とメイド姿の女はそう言って絶句した。
「その者たち!
王位継承を剥奪されたとはいえ、
妾をクレサリス王国第一王女アメリアを知ってその態度か!
頭が高いぞ!」
その瞬間、戦乙女がそう声を発した。
その声は一点の陰りもなく澄み渡り、しかも威厳と静かな殺気が籠り、どこまでも響き渡るかのようであった。
その威厳の重みと殺気への恐怖から、剣士とメイド姿の女はほとんど無意識に、いや圧倒的な強者相手に服従を示す動物の本能からその場にひれ伏した。いまだ幻影に囚われたままの町長ですら、気がつくと意識が混濁したままその場にひれ伏していた。
若き帝の騎士は、忠誠を示すかのように、姿勢正しを胸に手を当て正し立ったままでいた。
「ふっ……この姿に戻って、つい調子に乗ってしまった。
まあ、良い、そこの二人。
自分で言っておいてなんだがそうかしこまるな」
すると今は美しき戦乙女の姿になった黒髪のメイドがそう言って自嘲気味に笑った。途端に纏っていた威厳に満ちた王女の雰囲気が、姿こそそのままながらがらりと親しみのあるものに変わった。
それを見て剣士はやや安心したのかひれ伏していた頭を上げた。その途端、緊張の糸が緩み、忘れていた腕の痛みを思い出した。
「ちくしょう、また痛んできやがった」
剣士はそう小さく呟いた。
「悪かったな。
お前の速さが思ってた以上でつい深く斬りつけてしまった様だ」
戦乙女はそう言って軽く頭を下げて微笑んだ。
「どのみち俺は、そこでいまだに呆けている町長に連座して、
良くて一生牢獄、下手すりゃ死刑だ。
どうせなら、真の『剣聖』であるあんたに斬り殺されたかったよ」
剣士はそう言うと少し寂し気な笑みを浮かべた。
「なんかさぁ、あんたって、
あんなクズ町長の用心棒やってる人間には見えないんだよね」
若き帝の騎士はそう言って剣士を見てから、戦乙女を振り返って尋ねた。
「ひょっとして、姫は、もうこの男の事分かってらっしゃるとか?」
「じゃなきゃ、私が、あんなクズ野郎の用心棒を生かしちゃおかないだろうが」
すると戦乙女はそう言ってにやりと笑った。
「俺の事を分かってるって?」
その言葉に剣士は不思議そうな表情を浮かべた。
「ああ、今の私はどっちかって言うと神様に近い存在だからな。
生きてた時よりさらにレベルが上がってるんだよ。
まあ、そこでお前の事情も知ったうえで取引だ」
そう言って戦乙女は剣士の目に自分の目線をしっかり合わせて見て続けた。
「私の騎士団に入れ。
さすればお前の今までの罪、すべて咎め無しとしよう」
「罪を帳消しにされるのは嬉しいが……、
『私の騎士団』ってどう言う事だ?
あんたも『帝の騎士団』の一員じゃなかったのか?
『帝の騎士団』に入れるか入れないかを決めるのはあの女帝様だろ」
その言葉に剣士は怪訝な表情で尋ねた。
「それは半分あってるが半分は違う。
私は『帝の騎士』ではあるが、お前たちの知ってる方じゃない。
あれは『表』の方だ。
私は『裏』の方。
そして私はその『裏』の『No.1』さ。
『裏』の方に関する全権限は私が持ってるな。
ちなみに、そいつは『表』と『裏』両方の番号を持ってる稀有な存在だ」
そう言って戦乙女は若き帝の騎士を見た。すると若き帝の騎士は少し誇らしげな顔になって微笑みと剣士を見て軽く頭を下げた。
「まあ、稀有な存在ではあるが、
剣の腕の方はまったく稀有じゃないがな」
それを見て戦乙女はそう言って笑った。
「『帝の騎士』に『表』と『裏』なんて聞いたことが無いぞ!」
戦乙女の言葉になお一層、怪訝な表情を深めた剣士が思わず声を上げた。
「当たり前だ。お前たちが知ってるなら『裏』なんて言わないだろう」
剣士の言葉にも戦乙女は動じることなく、それがあたかも当然の様にそうさらりと答えた。
「お前みたいな訳アリで腕の立つ奴にはうってつけの就職先だと思うぞ」
そう言った後、戦乙女はそう言って笑った。
「言葉では俺に選択権がある様だが、
実際には選択の余地はないんだろうな」
「まあ、ぶっちゃけそう言う事だ」
剣士が苦笑しながらそう尋ねると、戦乙女はそう答えてからさも愉快げに笑った。
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