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第37話
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その後、やって来た国の役人によって町長は数々の汚職容疑で引き立てられていった。もちろん、彼らの前では若い商人は、風体はそのままだったがきちんと『帝の騎士』として陣頭指揮を執っていた。
黒髪のメイドも、彼らの前ではあくまで『商人』を装うその若き帝の騎士のアシスタントとしててきぱきと事務処理等をこなしていた。
その間、剣士は、重要参考人として帝の騎士が『身柄預かり』と言う事になり、すべての処遇を当の若き帝の騎士に任されていた。ただ、表向きはそう言われてはいたが、特に拘束、監視されている風はなかった。それでいながら剣士はこの街から逃げ出そうとする気配は全くなかった。
そして、あの食人鬼のメイドも彼らと共に居た。黒髪のメイドの手伝いや、帝都からやってきた役人の食事や身の回りの事などを黒髪のメイドと共にこなしていた。表向きは国家公認万能メイドである黒髪のメイド並みに仕事をてきぱきとこなしていた。しかし、それでも愛する主を殺された心の傷は深かった野田だろう、時折、遠くをうつろな目で見つめる様な姿が目撃された。
「ハロルド、カゲトキ、くれぐれも、あのメイドから目を離すなよ」
食人鬼のメイドは意識を取り戻した後も、再び鬼女に変化して取り乱す事はなかった。ただ、じっと一人、愛する物を失った悲しみにじっと耐えている様だった。そして、その悲しみを紛らわすために、帝都から来た役人たちの世話を甲斐甲斐しくこなしていた。
それでも、黒髪のメイドは何か気になることがあったのであろう。若い商人と剣士に、姿こそ黒髪のメイドのままだったが、彼らの主である『影の騎士団長』としてそう命じていた。
「シャロンさん、どちらへ?」
衣類の様な物がたくさん入った大きな籠を抱えて廊下を歩く食人鬼のメイドに、若い商人の姿をした若き帝の騎士が尋ねた。
ちなみに、あの後、意識を取り戻した食人鬼のメイドは自身の名を『シャロン=ファラメイ』と名乗っていた。ただ、その名が彼女、本来の名なのか、人として生きて行く為に人の名を語っているのかは分からなかった。
「あっ……ハロルドさん。
終わった洗濯物を干しにちょっと屋上へ」
若い商人の問い掛けに食人鬼のメイドは笑顔で答えた。
さすがに歳はまだ聞いてはいないが、少なくとも人の姿でいる時はこの食人鬼のメイド、二十歳代半ばくらいに見え、かなり美人の部類だ。しかも、主を失った悲しみや、あの変態町長から受けた酷い凌辱による心の傷も癒えつつあるのか、今見せた笑みはとても可愛らしく、それでもどこか儚くも寂し気でとても魅力的だった。
若い商人は思わず、顔がニヤけてしまいそうになるのを必死に押さえていた。
「では、また後程……」
食人鬼のメイドは、そんな若い商人の気持ちを知ってか知らずか、くすりと小さく笑って頭を軽く下げてそう言うと階段の方へと歩いて行った。
「おいおい、そんな顔でシャロン見てると、
お前さんの恐ろしいあのメイドさんに殺されるぞ」
ちょうど、曲がり角から出て来た剣士が、そんな若い商人を見て笑いながらそう言った。、
「僕はまだ若いんだし、
綺麗な女の人見てニヤニヤするのはごく普通の反応ですよ」
「ほぉ~、俺はお前さんとあの恐ろしいメイドさんは、
ただの主従の関係だけじゃないと思ったんだがなぁ」
若い商人がすまし顔で答えた言葉に、剣士は好色そうににやにや笑いながらそう言った。
「若旦那様、カゲトキさん、シャロン見ませんでしたか?」
そのまま、しばらく廊下で馬鹿話をしていた若い商人と剣士に、黒髪のメイドが通りかかって声を掛けた。
「シャロンさんなら、今さっき、屋上へ行かれましたよ。
天気も良いので洗濯物を一杯持って干しに行く様でした」
その瞬間、黒髪のメイドの様子が一変した。
「馬鹿者! それでお前達、シャロンを一人で屋上に行かせたのか!」
姿こそ、黒髪のメイドのままだったかが、その言葉は完全に『影の騎士団長』であるアメリア姫に戻っていた。
「でも、シャロンさん別段変わった様子は……」
そう言ってから何かに気がついたのか若い商人は声を上げた。
「まさか、あの人。僕らを油断させる為に今まで!」
「おい、まずいぞ、若者!」
同時に剣士が表情を一変させて叫んだ。
そして同時に、二人は走り始めていた。もちろん黒髪のメイドも同じだった。
黒髪のメイドも、彼らの前ではあくまで『商人』を装うその若き帝の騎士のアシスタントとしててきぱきと事務処理等をこなしていた。
その間、剣士は、重要参考人として帝の騎士が『身柄預かり』と言う事になり、すべての処遇を当の若き帝の騎士に任されていた。ただ、表向きはそう言われてはいたが、特に拘束、監視されている風はなかった。それでいながら剣士はこの街から逃げ出そうとする気配は全くなかった。
そして、あの食人鬼のメイドも彼らと共に居た。黒髪のメイドの手伝いや、帝都からやってきた役人の食事や身の回りの事などを黒髪のメイドと共にこなしていた。表向きは国家公認万能メイドである黒髪のメイド並みに仕事をてきぱきとこなしていた。しかし、それでも愛する主を殺された心の傷は深かった野田だろう、時折、遠くをうつろな目で見つめる様な姿が目撃された。
「ハロルド、カゲトキ、くれぐれも、あのメイドから目を離すなよ」
食人鬼のメイドは意識を取り戻した後も、再び鬼女に変化して取り乱す事はなかった。ただ、じっと一人、愛する物を失った悲しみにじっと耐えている様だった。そして、その悲しみを紛らわすために、帝都から来た役人たちの世話を甲斐甲斐しくこなしていた。
それでも、黒髪のメイドは何か気になることがあったのであろう。若い商人と剣士に、姿こそ黒髪のメイドのままだったが、彼らの主である『影の騎士団長』としてそう命じていた。
「シャロンさん、どちらへ?」
衣類の様な物がたくさん入った大きな籠を抱えて廊下を歩く食人鬼のメイドに、若い商人の姿をした若き帝の騎士が尋ねた。
ちなみに、あの後、意識を取り戻した食人鬼のメイドは自身の名を『シャロン=ファラメイ』と名乗っていた。ただ、その名が彼女、本来の名なのか、人として生きて行く為に人の名を語っているのかは分からなかった。
「あっ……ハロルドさん。
終わった洗濯物を干しにちょっと屋上へ」
若い商人の問い掛けに食人鬼のメイドは笑顔で答えた。
さすがに歳はまだ聞いてはいないが、少なくとも人の姿でいる時はこの食人鬼のメイド、二十歳代半ばくらいに見え、かなり美人の部類だ。しかも、主を失った悲しみや、あの変態町長から受けた酷い凌辱による心の傷も癒えつつあるのか、今見せた笑みはとても可愛らしく、それでもどこか儚くも寂し気でとても魅力的だった。
若い商人は思わず、顔がニヤけてしまいそうになるのを必死に押さえていた。
「では、また後程……」
食人鬼のメイドは、そんな若い商人の気持ちを知ってか知らずか、くすりと小さく笑って頭を軽く下げてそう言うと階段の方へと歩いて行った。
「おいおい、そんな顔でシャロン見てると、
お前さんの恐ろしいあのメイドさんに殺されるぞ」
ちょうど、曲がり角から出て来た剣士が、そんな若い商人を見て笑いながらそう言った。、
「僕はまだ若いんだし、
綺麗な女の人見てニヤニヤするのはごく普通の反応ですよ」
「ほぉ~、俺はお前さんとあの恐ろしいメイドさんは、
ただの主従の関係だけじゃないと思ったんだがなぁ」
若い商人がすまし顔で答えた言葉に、剣士は好色そうににやにや笑いながらそう言った。
「若旦那様、カゲトキさん、シャロン見ませんでしたか?」
そのまま、しばらく廊下で馬鹿話をしていた若い商人と剣士に、黒髪のメイドが通りかかって声を掛けた。
「シャロンさんなら、今さっき、屋上へ行かれましたよ。
天気も良いので洗濯物を一杯持って干しに行く様でした」
その瞬間、黒髪のメイドの様子が一変した。
「馬鹿者! それでお前達、シャロンを一人で屋上に行かせたのか!」
姿こそ、黒髪のメイドのままだったかが、その言葉は完全に『影の騎士団長』であるアメリア姫に戻っていた。
「でも、シャロンさん別段変わった様子は……」
そう言ってから何かに気がついたのか若い商人は声を上げた。
「まさか、あの人。僕らを油断させる為に今まで!」
「おい、まずいぞ、若者!」
同時に剣士が表情を一変させて叫んだ。
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