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第43話
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「なんか、いきなり主とメイドと言うより恋人同士って感じですね」
若い商人はそう言って羨ましそう表情を浮かべた。
「二人とも収まるところに収まったと言う事だ。
まあ、そんなに羨ましがるな。
お前には私がいるだろうが」
すると黒髪のメイドは、まだ纏った雰囲気と口調は主と言うか姫君のままでそう答えた。
「もしかして、姫。
あなた、シャロンさんがああなるの全部承知の上で?」
「さあ、どうだかな?」
若い剣士は黒髪のメイドの態度に少し違和感を感じてそう尋ねると、当の黒髪のメイドはにやにやとさも嬉しそうに笑いながら誤魔化した。
「お前とて、今度はキルシュにその手が届いたんじゃないか?」
しばし笑った後、黒髪のメイドは急に真面目な顔になって若い商人にそう問いかけた。
「やっぱり、あなたは……」
その問い掛けに若い商人は、あの時、食人鬼のメイドの手を掴んだ自分自身の手のひらを見つめてそう呟いた。
「ハロルド、お前もいつまでも自身を責めるな。
あの時のお前は肉体だけではなくその精神もまだ幼く脆かったからな」
そんな若い商人を見て黒髪のメイドはまるで母親か姉の様な優しい笑みを浮かべてそう声を掛けた。
「あの一瞬、シャロンさんがあの時のキルシュに見えました。
その手に僕の手が届いた時、そのキルシュは微笑んでいました。
あの時、僕は自分が落ちるのが怖くて一瞬躊躇してしまった。
それでキルシュに伸ばした僕の手は彼女の手を掴むことは出来なかった。
一瞬躊躇した僕をキルシュは恨んでるんじゃないかと僕は怖かった。
そして、そんな自分が許せなかった。
ずっと悪夢に苛まされてきたんです。
夜、夢枕に立つ血まみれのキルシュが……
『何故、その手をもう一歩早く差し伸べてくれなかったのですか?』
キルシュが悲しそうな、恨めしそうな目で僕を見詰めてそう言うのです」
目を閉じ何かを想い出すようにしながら、悲しそうに若い商人はそう言った。
「だから何度も言ってるだろうが。
その身を犠牲にしてまで守ったお前をキルシュが恨むわけなかろう。
キルシュはずっとお前が幸せになる事だけを祈ってるとな」
「あなたにそう言われても今までどうしても納得できなかった。
それは僕の身勝手な思い込みにしか過ぎないって思ってた。
でもキルシュはそんな僕でも幸せに生きて欲しいと願っていたんですね」
相変わらず肉親の様な優しい笑みを浮かべる黒髪のメイドの言葉に、若い商人は自身の手を見ながらそう答えた。
「当たり前だ。お前とキルシュは心から愛しあっていたのだろう。
それは普通の男女以上に。
恋人でありながら、母や姉の様に深く。
それにな、たぶん、お前と私を出合わせたのはキルシュだ。
そして、カゲトキとシャロンをめぐり合わせたのも彼女だろう。
キルシュはお前だけでなく、
同じ境遇のシャロンやカゲトキも救いたかったのだろうな。
あいつはそう言う女だ」
黒髪のメイドはまるでそれが自分自身の事の様にそう語った。
「最近の姫、なんかキルシュ本人みたいですね」
そんな黒髪のメイドを見て若い商人は穏やかな表情になってくすりと笑った。
「ああ、自分でも不思議な感じだ。
最初はお前の生を繋ぎ留めておくためだけに、
この姿を仮の肉体にしたんだが、なんだか妙にしっくりくるのだ。
自分自身の本当の姿よりもしっくりくる感じがするほどにな。
時折、どっちが本当の自分自身か分からなくなる時がある」
黒髪のメイドはそう言って苦笑した。
「ひょっとして、キルシュのご先祖様って、
姫に縁のある人物じゃなかったんですか?」
「さあ、どうだかな」
若い商人がそう尋ねると、誤魔化すように黒髪のメイドはそう答えた。
この時、若い商人は、黒髪のメイドが自分自身とキルシュとの間にある縁をもうすでに知っているのではないかと思った。
「ところでハロルド、
お前がそう割り切れたのなら私もこの姿にこだわる事はない。
本来の私に近い姿に戻っても良いかな?」
黒髪のメイドは若い商人の心中を知ってか知らずかそうにやりと笑って尋ねた。
「僕個人的にはわがままでおっそろしい姫様より、
今まで通りのキルシュでいて欲しいですね」
「お前がそう言うならそうしておいてやるか」
若い商人が少しはにかんだような笑みを浮かべてそう答えると、黒髪のメイドはそう言ってから豪快に笑った。
若い商人はそう言って羨ましそう表情を浮かべた。
「二人とも収まるところに収まったと言う事だ。
まあ、そんなに羨ましがるな。
お前には私がいるだろうが」
すると黒髪のメイドは、まだ纏った雰囲気と口調は主と言うか姫君のままでそう答えた。
「もしかして、姫。
あなた、シャロンさんがああなるの全部承知の上で?」
「さあ、どうだかな?」
若い剣士は黒髪のメイドの態度に少し違和感を感じてそう尋ねると、当の黒髪のメイドはにやにやとさも嬉しそうに笑いながら誤魔化した。
「お前とて、今度はキルシュにその手が届いたんじゃないか?」
しばし笑った後、黒髪のメイドは急に真面目な顔になって若い商人にそう問いかけた。
「やっぱり、あなたは……」
その問い掛けに若い商人は、あの時、食人鬼のメイドの手を掴んだ自分自身の手のひらを見つめてそう呟いた。
「ハロルド、お前もいつまでも自身を責めるな。
あの時のお前は肉体だけではなくその精神もまだ幼く脆かったからな」
そんな若い商人を見て黒髪のメイドはまるで母親か姉の様な優しい笑みを浮かべてそう声を掛けた。
「あの一瞬、シャロンさんがあの時のキルシュに見えました。
その手に僕の手が届いた時、そのキルシュは微笑んでいました。
あの時、僕は自分が落ちるのが怖くて一瞬躊躇してしまった。
それでキルシュに伸ばした僕の手は彼女の手を掴むことは出来なかった。
一瞬躊躇した僕をキルシュは恨んでるんじゃないかと僕は怖かった。
そして、そんな自分が許せなかった。
ずっと悪夢に苛まされてきたんです。
夜、夢枕に立つ血まみれのキルシュが……
『何故、その手をもう一歩早く差し伸べてくれなかったのですか?』
キルシュが悲しそうな、恨めしそうな目で僕を見詰めてそう言うのです」
目を閉じ何かを想い出すようにしながら、悲しそうに若い商人はそう言った。
「だから何度も言ってるだろうが。
その身を犠牲にしてまで守ったお前をキルシュが恨むわけなかろう。
キルシュはずっとお前が幸せになる事だけを祈ってるとな」
「あなたにそう言われても今までどうしても納得できなかった。
それは僕の身勝手な思い込みにしか過ぎないって思ってた。
でもキルシュはそんな僕でも幸せに生きて欲しいと願っていたんですね」
相変わらず肉親の様な優しい笑みを浮かべる黒髪のメイドの言葉に、若い商人は自身の手を見ながらそう答えた。
「当たり前だ。お前とキルシュは心から愛しあっていたのだろう。
それは普通の男女以上に。
恋人でありながら、母や姉の様に深く。
それにな、たぶん、お前と私を出合わせたのはキルシュだ。
そして、カゲトキとシャロンをめぐり合わせたのも彼女だろう。
キルシュはお前だけでなく、
同じ境遇のシャロンやカゲトキも救いたかったのだろうな。
あいつはそう言う女だ」
黒髪のメイドはまるでそれが自分自身の事の様にそう語った。
「最近の姫、なんかキルシュ本人みたいですね」
そんな黒髪のメイドを見て若い商人は穏やかな表情になってくすりと笑った。
「ああ、自分でも不思議な感じだ。
最初はお前の生を繋ぎ留めておくためだけに、
この姿を仮の肉体にしたんだが、なんだか妙にしっくりくるのだ。
自分自身の本当の姿よりもしっくりくる感じがするほどにな。
時折、どっちが本当の自分自身か分からなくなる時がある」
黒髪のメイドはそう言って苦笑した。
「ひょっとして、キルシュのご先祖様って、
姫に縁のある人物じゃなかったんですか?」
「さあ、どうだかな」
若い商人がそう尋ねると、誤魔化すように黒髪のメイドはそう答えた。
この時、若い商人は、黒髪のメイドが自分自身とキルシュとの間にある縁をもうすでに知っているのではないかと思った。
「ところでハロルド、
お前がそう割り切れたのなら私もこの姿にこだわる事はない。
本来の私に近い姿に戻っても良いかな?」
黒髪のメイドは若い商人の心中を知ってか知らずかそうにやりと笑って尋ねた。
「僕個人的にはわがままでおっそろしい姫様より、
今まで通りのキルシュでいて欲しいですね」
「お前がそう言うならそうしておいてやるか」
若い商人が少しはにかんだような笑みを浮かべてそう答えると、黒髪のメイドはそう言ってから豪快に笑った。
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