【R18/TL】無口で無愛想な旦那様の拗らせ愛は重すぎ注意

春野カノン

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これ以上好きになりたくない 5

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私のためにここまでしてくれるなんて、伊織くんは私のことをどう思っているんだろうか。
ただの契約結婚の妻にしては気にかけられすぎていると思う。


「ごめんな心春。心春を守るためのやり方がこれしか思いつかなくて」


伊織くんが私のためを思ってやってくれた行動というのは十分理解しているつもりだ。
それが彼の優しさや思いやりからの行動だということも分かっている。


でも正直、私はそこまでしてもらう義理がないし、そんなに大切にされてしまうと本当に愛されているんじゃないかと勘違いしてしまう。
それくらい私は伊織くんにいろんなことを与えられてきた。


「ありがとう伊織くん」


私はお金のために伊織くんと結婚したんだ。
このまま生活を続けるためにこれ以上伊織くんを好きになってはいけない。


その後は他愛もない話をしながら夕食を食べ終え、片付けをするためにキッチンへ向かう。
食べた食器をキッチンまで運んでくれた伊織くんはおもむろに私を背後から突然抱きしめた。


胸の前で伊織くんの長い腕が交差しすっぽり包み込まれる。
後ろから抱きしめた伊織くんは私の首元に顔を埋め、しばらく黙り込み何も話さない。


「伊織くん?」

「俺の事、幻滅したか?」


篭ったような声が聞こえたかと思えば、不安げに揺れる小さな声が私の耳に届く。
自信をなくしたようなか細い声に、私のさっきの言葉を気にしているんだと察した。


「心春のために俺が自分の立場を利用したこと、幻滅したか?」

「幻滅はしてないよ。私のためにしてくれたことって分かってるし」


いつもの自信に満ち溢れた姿ではなく、不安げに私に嫌われないか心配そうに小さくなる伊織くんはなんとも可愛らしい。
こんなふうに不安になることもあるんだとまた新しい一面を知れた。


そんな可愛らしい一面を見た私の心は不謹慎にもきゅんとしてしまい、おこがましくも守ってあげたくなる。
伊織くんを安心させるために食器を洗っていた手を止めて、伊織くんに向き直ると眉毛を八の字にさせた彼の表情が目に入った。


「そんなことで幻滅しないよ。大丈夫」

「俺は心春に嫌われたくない」

「嫌いになんてならないよ」


私が伊織くんを嫌いになるなんてありえない。
こんなにも私はあなたに惹かれているというのに。


どうしたら伊織くんの不安を取り除けるか考えた結果、ひとつだけ案が思い浮かぶ。
だがそれは彼を好きと認識している私からすると勇気がいる行動だった。


(でも今はそれより伊織くんに笑って欲しい)


私はそのまま伊織くんの身体をぎゅっと抱きしめた。
いつも伊織くんが私にしてくれているように隙間なくピタッと抱きつく。


「私はいつも感謝してるよ」


そう呟いた途端、伊織くんは私の頬に両手を添えて自分に引き寄せるとそのまま何も言わずに唇を奪った。
柔らかい感触が重なり合い呼吸までも全て奪い取られるようだ。


突然の行動に呆気に取られているとにゅるっと伊織くんの舌が私の口内に侵食してきた。
私の逃げ惑う舌を絡めとるように器用に蠢き、あっという間に舌が絡め取られる。


「んんっ⋯!」


伊織くんの厚い胸板を押し返すとギラついた雄の色香を隠した瞳と視線が絡み合い、心臓がバクバクと激しく暴れ出す。
彼の口元は深い口付けをしたことによって私の唾液が少しついておりとてつもなく色っぽい。


突然伊織くんが交わしてきた情熱的な口付けに思考まで絡め取られてしまい、状況が飲み込めずにいた。
伊織くんは何も言わずに私の腰に腕を回しそのまま自分にグッと引き寄せる。
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