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交わる心1
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家に帰ると既に夏樹は帰宅しており、ダイニングテーブルにはたくさんの料理が準備されていた。
おそらくデリバリーを頼んでおいてくれたのだろう。
すぐに食べられるように準備されており、匂いを嗅ぐだけでお腹がグーっと鳴った。
イタリアンを中心にピザやパスタ、サラダなどが広がっている。
「おかえり瀬奈さん。今日はデリバリーにしてみたよ」
「ありがとう。お腹空いてたからすぐ食べれて嬉しい」
「一緒に食べよう。荷物置いておいで」
カバンを置き洗面所で手洗いうがいをした私は夏樹の待つダイニングテーブルへと腰をかける。
ワイングラスには白ワインが注がれており、いつのまにここまで準備していたんだと驚いた。
二人で乾杯し白ワインをグイッと飲むと仕事後のためかいつもよりも倍美味しく感じる。
そんな様子が夏樹にも伝わったのか嬉しそうに口角を上げて微笑むと、取り皿にパスタを取り分けてくれた。
パスタは蟹のトマトパスタのようで湯気から蟹の匂いがしてより食欲がそそられる。
スプーンとフォークでクルクルと巻いて口いっぱいに頬張ると蟹の香りとトマトの酸味がとても美味しかった。
「え、これうま」
「確かに。どれも美味しいね。このお店当たりじゃない?」
「絶対当たりだ。また今度頼もう」
白ワインを飲みながら他愛もない話をしつつゆっくりと穏やかな時間を過ごした。
一時間ほどかけて頼んだ食事たちを全て食べきり、後片付けをしたあとは二人でテレビの前のソファに移動し残った白ワインをゆっくりと飲む。
テレビの音声だけが部屋の中に響き、無言の時間がすごく緊張してしまう。
いつもだったらそんなことないのに。
「瀬奈さん。聞きたいことあるんでしょ?」
「うん⋯聞いてもいい?」
「どうぞ」
光輝に向かって言っていた、これから付き合う予定という言葉や、大事だからという言葉が私の耳に残って離れない。
夏樹の言葉の真意を知りたかった。
「夏樹。さっき光輝に言ってた言葉の意味って⋯⋯」
「⋯⋯」
しばらく黙り込んだ夏樹は観念したかのようにはぁとため息をついて持っていたワイングラスをサイドテーブルに置くと、私の方に身体を向けて真っ直ぐ見つめてきた。
ドクンと心臓が脈打つのが分かる。
「ほんとはまだ言うつもりなかったんだよ。だけど瀬奈さん俺から離れていこうとするし、元婚約者はちょっかいかけてくるし、なんかまた流れみたいになっちゃって⋯」
「どういうこと?」
「俺、瀬奈さんのこと好きだよ。多分、瀬奈さんは俺のことセフレだとしか思ってないだろうけど」
「えっ⋯⋯」
「セックスから始まった俺たちの関係だから、信じて貰えるようにまだゆっくり瀬奈さんと距離縮めていこうと思ってたんだけどさ」
計画が崩れたと言って困ったように笑う夏樹。
夏樹は間違いなく私のことが好きだと言った。
それは私が彼に向けて抱いている感情と同じということだろうか。
「私のことが好き、なの?」
「うん。瀬奈さんのことが好きだよ」
「でも、今まで何も言ってなかった⋯⋯」
「そりゃまだ言うつもりなかったから」
簡単には信じられなかった。
だけど夏樹がこんな風に嘘をつくとは思えない。
私たちの始まりはワンナイトだったし、そんな彼が私を好きになるわけない、そう思ってた。
私だけが好きになってしまったんだと、そう思ってたのに。
「信じてないでしょ?」
「信じてないというか、信じられないというか⋯」
「確かに最初はワンナイトのつもりだったからそれで声掛けたのは事実。だけどだんだん好きになっていったんだよな⋯瀬奈さん、一人で頑張りすぎだし辛いはずなのに全然甘えてこないし、そういう姿見てたらいつの間にかこの人の事、めちゃめちゃ甘やかしてあげたいなって思うようになってた」
身体から始まった私の恋なんて絶対に実らないと思ってた。
悲しい思いをする子が多いのがセフレから好きになってしまった人たちに多いと周りでも聞いた事がある。
「瀬奈さんの傷ついた心につけ込んだのは俺だし、流されるように俺が誘導しちゃったような部分もあるから、信じて貰えるようにまだゆっくり関係構築してこうと思ってたんだよ本当は」
「⋯⋯ねえ夏樹、ぎゅってしてもいい?」
「えっ?!」
おそらくデリバリーを頼んでおいてくれたのだろう。
すぐに食べられるように準備されており、匂いを嗅ぐだけでお腹がグーっと鳴った。
イタリアンを中心にピザやパスタ、サラダなどが広がっている。
「おかえり瀬奈さん。今日はデリバリーにしてみたよ」
「ありがとう。お腹空いてたからすぐ食べれて嬉しい」
「一緒に食べよう。荷物置いておいで」
カバンを置き洗面所で手洗いうがいをした私は夏樹の待つダイニングテーブルへと腰をかける。
ワイングラスには白ワインが注がれており、いつのまにここまで準備していたんだと驚いた。
二人で乾杯し白ワインをグイッと飲むと仕事後のためかいつもよりも倍美味しく感じる。
そんな様子が夏樹にも伝わったのか嬉しそうに口角を上げて微笑むと、取り皿にパスタを取り分けてくれた。
パスタは蟹のトマトパスタのようで湯気から蟹の匂いがしてより食欲がそそられる。
スプーンとフォークでクルクルと巻いて口いっぱいに頬張ると蟹の香りとトマトの酸味がとても美味しかった。
「え、これうま」
「確かに。どれも美味しいね。このお店当たりじゃない?」
「絶対当たりだ。また今度頼もう」
白ワインを飲みながら他愛もない話をしつつゆっくりと穏やかな時間を過ごした。
一時間ほどかけて頼んだ食事たちを全て食べきり、後片付けをしたあとは二人でテレビの前のソファに移動し残った白ワインをゆっくりと飲む。
テレビの音声だけが部屋の中に響き、無言の時間がすごく緊張してしまう。
いつもだったらそんなことないのに。
「瀬奈さん。聞きたいことあるんでしょ?」
「うん⋯聞いてもいい?」
「どうぞ」
光輝に向かって言っていた、これから付き合う予定という言葉や、大事だからという言葉が私の耳に残って離れない。
夏樹の言葉の真意を知りたかった。
「夏樹。さっき光輝に言ってた言葉の意味って⋯⋯」
「⋯⋯」
しばらく黙り込んだ夏樹は観念したかのようにはぁとため息をついて持っていたワイングラスをサイドテーブルに置くと、私の方に身体を向けて真っ直ぐ見つめてきた。
ドクンと心臓が脈打つのが分かる。
「ほんとはまだ言うつもりなかったんだよ。だけど瀬奈さん俺から離れていこうとするし、元婚約者はちょっかいかけてくるし、なんかまた流れみたいになっちゃって⋯」
「どういうこと?」
「俺、瀬奈さんのこと好きだよ。多分、瀬奈さんは俺のことセフレだとしか思ってないだろうけど」
「えっ⋯⋯」
「セックスから始まった俺たちの関係だから、信じて貰えるようにまだゆっくり瀬奈さんと距離縮めていこうと思ってたんだけどさ」
計画が崩れたと言って困ったように笑う夏樹。
夏樹は間違いなく私のことが好きだと言った。
それは私が彼に向けて抱いている感情と同じということだろうか。
「私のことが好き、なの?」
「うん。瀬奈さんのことが好きだよ」
「でも、今まで何も言ってなかった⋯⋯」
「そりゃまだ言うつもりなかったから」
簡単には信じられなかった。
だけど夏樹がこんな風に嘘をつくとは思えない。
私たちの始まりはワンナイトだったし、そんな彼が私を好きになるわけない、そう思ってた。
私だけが好きになってしまったんだと、そう思ってたのに。
「信じてないでしょ?」
「信じてないというか、信じられないというか⋯」
「確かに最初はワンナイトのつもりだったからそれで声掛けたのは事実。だけどだんだん好きになっていったんだよな⋯瀬奈さん、一人で頑張りすぎだし辛いはずなのに全然甘えてこないし、そういう姿見てたらいつの間にかこの人の事、めちゃめちゃ甘やかしてあげたいなって思うようになってた」
身体から始まった私の恋なんて絶対に実らないと思ってた。
悲しい思いをする子が多いのがセフレから好きになってしまった人たちに多いと周りでも聞いた事がある。
「瀬奈さんの傷ついた心につけ込んだのは俺だし、流されるように俺が誘導しちゃったような部分もあるから、信じて貰えるようにまだゆっくり関係構築してこうと思ってたんだよ本当は」
「⋯⋯ねえ夏樹、ぎゅってしてもいい?」
「えっ?!」
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