【R18/TL】ハイスペックな元彼は私を捉えて離さない

春野カノン

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俺の全てだから side理玖(2)

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だけど俺の知らない所で陽葵ちゃんに何か起こっていたのが許せない。
知らない所で危ない目にあっていたかもしれないと思うと、知らなかった自分に腹が立つ。


本当はお兄さんじゃなくて俺が助けに行きたかった。
1番に陽葵ちゃんの近くにいるのは俺が良かった。


「なんで言ってくれなかったんだろな」

「百瀬の考えることなんて簡単だろ。心配かけたくなかった、そんなとこじゃねぇか?それか単純に忘れてたとか、その程度になってんじゃねぇのあいつの中では」

「でも俺は心配したい。陽葵ちゃんのことならどんなことでも知りたい」

「それを俺じゃなくて百瀬に言ってやれよ。あいつにならちゃんと伝わるだろお前の言葉」


そんな事を話していると俺たちの前に熱々のロースカツ定食が運ばれてきた。
湯気が立ち揚げたての油の香りが鼻いっぱいに広がる。


既にカットされたトンカツを箸でひとつ掴んで口ひ運ぶとサクッとした小気味よい音が響いた。
口の中にはジュワッと油が滲み最高に美味しい。


「理玖の最後の彼女って百瀬だろ?あん時、俺が彼女と知り合ったら絶対好きになっちゃうからどんな子なのかも教えたくないとか言ってたよな」

「⋯バレた?子供だったんだよ俺も」

「そこまで理玖がベタ惚れするなんて大学生の頃の彼女くらいしか俺は見たことないんでね。あの時、振られた直後の理玖は見物だったなぁ」

「思い出すなよ圭哉。あれはほんとに落ち込んでたんだって」


圭哉が陽葵ちゃんと会ったら魅力的すぎて好きになられてしまうのを懸念して名前は一切出さなかった。
俺のそんな子供みたいな独占欲を見せる彼女なんて初めての存在のため、さすがの圭哉も同情してくれていた。


「この会社の話をする時、百瀬の名前を出したら明らかに冷静じゃなかった。執着してることが分かりやすかったしな。大学でそういう講義とかに彼女と参加してたって話を聞いたこともあったし、だからなんとなく百瀬が理玖が本気で大事にしてたあの彼女と同一人物なんだろうって予想してた」

「いや、まぁ陽葵ちゃんの名前が出たらね、冷静なんかじゃいられないよ。ずっと探してたし、もう2度と会えないかと思ってた中で唯一の手がかりだったし」


陽葵ちゃんとしっかり話さなかったことが原因であの時は別れる選択をしてしまった。
俺はもう2度と同じ過ちを繰り返したくない。


だからこそ、俺の知らないところで陽葵ちゃんを悲しませたくない。
どんなことも全部知っておきたい、そう思うくらい俺は陽葵ちゃんを想っている。


「なんにせよ、会話が足りないとどんな人ともうまくいかなくなる。恋人だろうが友人だろうが、部下だろうが。俺たちはあくまで他人だからな」

「そうだね。その人の気持ちを知りたいなら、自分もまた素直に言葉を伝えないとだよな」


山盛りのご飯を目いっぱい大きな口で頬張りトンカツと一緒にバクバクと食べ進める。
お腹が空いたらなんぞや、とよく言うしまずは腹ごしらえが必要だ。


明日は休み、そして今日の夜は陽葵ちゃんと会う予定がある。
その時にしっかり話そう。


俺の想いも、陽葵ちゃんの気持ちも全部受け止める。
それは後悔したあの日、心に誓ったことだ。


「圭哉~ありがとな。やっぱ持つべきものは幼なじみ、だな!」

「急にテンション高くすんな。そしてニヤニヤすんな」


***


仕事を終えた俺は、陽葵ちゃんと待ち合わせの場所まで足早に向かう。
本当なら会社を出る時から一緒に隣を歩きたいけど、まだ他の人には話していないため会社から少し離れた場所で落ち合おうと約束していた。


陽葵ちゃんの方が先に会社を出たため少し待たせる形になってしまう。
はやる気持ちがそのまま歩幅に出ているようで小走りに落ち合う場所に向かうとそこにはちょこんと可愛い彼女がいた。


クリーム色のタイトスカートのセットアップに身を包んだ彼女は、俺の姿を見つけると満面の笑みを浮かべて嬉しそうに微笑む。
その笑顔を見るだけで癒されるしついつい抱き締めたくなってしまい、落ち合った途端問答無用でその細い身体を抱き寄せる。


「どうしたの理玖くん。ここ外だよ?」

「ん、分かってる。でも我慢できなくなって」


細い腰に腕を回したまま少しだけ身体を離すとほんのり頬を赤く染めた陽葵ちゃんと目が合った。
ぬるい風が吹いたと同時に秋の香りが漂い、風に揺れた髪の毛の隙間からチラッと輝くピアスに視線を奪われる。


俺とお揃いのそのピアスは陽葵ちゃんが俺のものだという証でもあり、俺の独占欲の形でもあった。
そんな耳元に指を添わせるとくすぐったそうに肩をすぼめる陽葵ちゃんが可愛くて思わず顎をすくいあげ、そのまま触れるだけのキスを落とす。


こんな外でキスされるなんて思ってもなかった陽葵ちゃんは先程よりもずっと真っ赤に頬を染め上げておりそれだけで愛しさが込み上げてくる。
俺はそんな彼女の小さな手をとって帰路に着いた。


家までの道のりはそんなに長くないが、隣で今日あった出来事をいろんな表情を見せながら陽葵ちゃんが話してくれるため時間が足りないとさえ感じる。
だけど別々の部屋に帰らなくても俺たちは隣人でいつでも会えるこの距離にいられることが幸せだった。


俺の部屋の前に着くと2人で仲良く中に入る。
そしてジャケットを脱いでハンガーにかける陽葵ちゃんの身体を後ろからぎゅっと抱き締めた。


「なんか今日⋯甘えんぼさんだね」

「ん⋯⋯」

「何かあったのかな?」

「陽葵ちゃん。元彼が会いに来たって聞いたよ」

「あ、そういえばそうだった。うん、前にお兄ちゃんが来た時に⋯来たんだよね」


背後から抱き締めているため陽葵ちゃんが今どんな表情をしているのかは分からない。
どんな顔をしてくれているのか気になる自分もいるが、それを真正面から見るのが怖いと思う自分もいた。


「俺には教えなかった理由聞いてもいい?」

「⋯⋯もうなんとも思ってないし、ほとんど忘れてたっていうのと、元彼が会いに来てるなんて知ったらきっと理玖くん嫌だと思って。それに心配もかけちゃうだろうし」

「関さんには話すのに⋯?」

「それは⋯華乃子ちゃんは何も考えずに話せるから。理玖くん相手だといろんなこと考えちゃう。これ言って引かれないかな、面倒くさがられないかな、嫌がられないかなって」


そんな言葉を聞いて昔から陽葵ちゃんは変わってないと、どこが安心すると同時に少しだけ寂しくなった。
別れた時も溜め込んでいた感情を抱えきれなくなって自己嫌悪に陥り離れることになった俺たちだ。
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