【R18/TL】ハイスペックな元彼は私を捉えて離さない

春野カノン

文字の大きさ
54 / 136

俺の全てだから side理玖(2)

しおりを挟む
だけど俺の知らない所で陽葵ちゃんに何か起こっていたのが許せない。
知らない所で危ない目にあっていたかもしれないと思うと、知らなかった自分に腹が立つ。


本当はお兄さんじゃなくて俺が助けに行きたかった。
1番に陽葵ちゃんの近くにいるのは俺が良かった。


「なんで言ってくれなかったんだろな」

「百瀬の考えることなんて簡単だろ。心配かけたくなかった、そんなとこじゃねぇか?それか単純に忘れてたとか、その程度になってんじゃねぇのあいつの中では」

「でも俺は心配したい。陽葵ちゃんのことならどんなことでも知りたい」

「それを俺じゃなくて百瀬に言ってやれよ。あいつにならちゃんと伝わるだろお前の言葉」


そんな事を話していると俺たちの前に熱々のロースカツ定食が運ばれてきた。
湯気が立ち揚げたての油の香りが鼻いっぱいに広がる。


既にカットされたトンカツを箸でひとつ掴んで口ひ運ぶとサクッとした小気味よい音が響いた。
口の中にはジュワッと油が滲み最高に美味しい。


「理玖の最後の彼女って百瀬だろ?あん時、俺が彼女と知り合ったら絶対好きになっちゃうからどんな子なのかも教えたくないとか言ってたよな」

「⋯バレた?子供だったんだよ俺も」

「そこまで理玖がベタ惚れするなんて大学生の頃の彼女くらいしか俺は見たことないんでね。あの時、振られた直後の理玖は見物だったなぁ」

「思い出すなよ圭哉。あれはほんとに落ち込んでたんだって」


圭哉が陽葵ちゃんと会ったら魅力的すぎて好きになられてしまうのを懸念して名前は一切出さなかった。
俺のそんな子供みたいな独占欲を見せる彼女なんて初めての存在のため、さすがの圭哉も同情してくれていた。


「この会社の話をする時、百瀬の名前を出したら明らかに冷静じゃなかった。執着してることが分かりやすかったしな。大学でそういう講義とかに彼女と参加してたって話を聞いたこともあったし、だからなんとなく百瀬が理玖が本気で大事にしてたあの彼女と同一人物なんだろうって予想してた」

「いや、まぁ陽葵ちゃんの名前が出たらね、冷静なんかじゃいられないよ。ずっと探してたし、もう2度と会えないかと思ってた中で唯一の手がかりだったし」


陽葵ちゃんとしっかり話さなかったことが原因であの時は別れる選択をしてしまった。
俺はもう2度と同じ過ちを繰り返したくない。


だからこそ、俺の知らないところで陽葵ちゃんを悲しませたくない。
どんなことも全部知っておきたい、そう思うくらい俺は陽葵ちゃんを想っている。


「なんにせよ、会話が足りないとどんな人ともうまくいかなくなる。恋人だろうが友人だろうが、部下だろうが。俺たちはあくまで他人だからな」

「そうだね。その人の気持ちを知りたいなら、自分もまた素直に言葉を伝えないとだよな」


山盛りのご飯を目いっぱい大きな口で頬張りトンカツと一緒にバクバクと食べ進める。
お腹が空いたらなんぞや、とよく言うしまずは腹ごしらえが必要だ。


明日は休み、そして今日の夜は陽葵ちゃんと会う予定がある。
その時にしっかり話そう。


俺の想いも、陽葵ちゃんの気持ちも全部受け止める。
それは後悔したあの日、心に誓ったことだ。


「圭哉~ありがとな。やっぱ持つべきものは幼なじみ、だな!」

「急にテンション高くすんな。そしてニヤニヤすんな」


***


仕事を終えた俺は、陽葵ちゃんと待ち合わせの場所まで足早に向かう。
本当なら会社を出る時から一緒に隣を歩きたいけど、まだ他の人には話していないため会社から少し離れた場所で落ち合おうと約束していた。


陽葵ちゃんの方が先に会社を出たため少し待たせる形になってしまう。
はやる気持ちがそのまま歩幅に出ているようで小走りに落ち合う場所に向かうとそこにはちょこんと可愛い彼女がいた。


クリーム色のタイトスカートのセットアップに身を包んだ彼女は、俺の姿を見つけると満面の笑みを浮かべて嬉しそうに微笑む。
その笑顔を見るだけで癒されるしついつい抱き締めたくなってしまい、落ち合った途端問答無用でその細い身体を抱き寄せる。


「どうしたの理玖くん。ここ外だよ?」

「ん、分かってる。でも我慢できなくなって」


細い腰に腕を回したまま少しだけ身体を離すとほんのり頬を赤く染めた陽葵ちゃんと目が合った。
ぬるい風が吹いたと同時に秋の香りが漂い、風に揺れた髪の毛の隙間からチラッと輝くピアスに視線を奪われる。


俺とお揃いのそのピアスは陽葵ちゃんが俺のものだという証でもあり、俺の独占欲の形でもあった。
そんな耳元に指を添わせるとくすぐったそうに肩をすぼめる陽葵ちゃんが可愛くて思わず顎をすくいあげ、そのまま触れるだけのキスを落とす。


こんな外でキスされるなんて思ってもなかった陽葵ちゃんは先程よりもずっと真っ赤に頬を染め上げておりそれだけで愛しさが込み上げてくる。
俺はそんな彼女の小さな手をとって帰路に着いた。


家までの道のりはそんなに長くないが、隣で今日あった出来事をいろんな表情を見せながら陽葵ちゃんが話してくれるため時間が足りないとさえ感じる。
だけど別々の部屋に帰らなくても俺たちは隣人でいつでも会えるこの距離にいられることが幸せだった。


俺の部屋の前に着くと2人で仲良く中に入る。
そしてジャケットを脱いでハンガーにかける陽葵ちゃんの身体を後ろからぎゅっと抱き締めた。


「なんか今日⋯甘えんぼさんだね」

「ん⋯⋯」

「何かあったのかな?」

「陽葵ちゃん。元彼が会いに来たって聞いたよ」

「あ、そういえばそうだった。うん、前にお兄ちゃんが来た時に⋯来たんだよね」


背後から抱き締めているため陽葵ちゃんが今どんな表情をしているのかは分からない。
どんな顔をしてくれているのか気になる自分もいるが、それを真正面から見るのが怖いと思う自分もいた。


「俺には教えなかった理由聞いてもいい?」

「⋯⋯もうなんとも思ってないし、ほとんど忘れてたっていうのと、元彼が会いに来てるなんて知ったらきっと理玖くん嫌だと思って。それに心配もかけちゃうだろうし」

「関さんには話すのに⋯?」

「それは⋯華乃子ちゃんは何も考えずに話せるから。理玖くん相手だといろんなこと考えちゃう。これ言って引かれないかな、面倒くさがられないかな、嫌がられないかなって」


そんな言葉を聞いて昔から陽葵ちゃんは変わってないと、どこが安心すると同時に少しだけ寂しくなった。
別れた時も溜め込んでいた感情を抱えきれなくなって自己嫌悪に陥り離れることになった俺たちだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

清楚な執事長、常駐位置が“お嬢様の隣”に確定しました

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話・後日談12話⭐︎ 清楚で完璧、屋敷の秩序そのもの——そんな執事長ユリウスの“常駐位置”が、なぜか私の隣に確定しました。 膝掛けは標準装備、角砂糖は二つ、そして「隣にいます」が口癖に。 さらに恐ろしいことに、私が小声で“要求”すると、清楚な笑顔で「承知しました」と甘く返事をしてくるのです。 社交は上品に、恋心は必死に隠したい。 なのに執事長は、恋を“業務改善”みたいに制度化して逃がしてくれない——! むっつり令嬢の乙女心臓が限界を迎える、甘々コメディ恋愛譚。 清楚な顔の執事長が、あなたの心臓まで囲い込みにきます。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

優しい雨が降る夜は

葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン 無自覚にモテる地味子に 余裕もなく翻弄されるイケメン 二人の恋は一筋縄ではいかなくて…… 雨降る夜に心に届いた 優しい恋の物語 ⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡ 風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格 雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

処理中です...