揚げ物、お好きですか?リメイク版

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からあげ処『大和』?

からあげ処『大和』?1

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 女王様から王名許可証を頂き、店をひらいてから、早、二ヶ月。
 店は大繁盛だった。連日の大行列。笑いが止まらないと言うのはこの事だ!そう最初の数日は思っていた。
 揚げ物処『大和』。今は完璧に、からあげ処『大和』に変わっている。
 最初から多くを提供しても、元を取れずに潰れては意味がないので、メニューは、大ニワトリのからあげ、醤油味と塩味しか提供しないようにした。客席も勿論無く。テイクアウト専門店。女王様が入れないと言った扉。それを改築したせいで、売るスペースも狭く、問題は山積みだ。

 冒険の進展は何もないが人脈という視点では少し変化があった。
 ギルド近くの養鶏場と発酵食品店『ハッコロン』と提携を結び、魔石加工店『カッコン』と鍛冶屋などの職人軍団と冷蔵庫、冷凍庫の開発に着手した。それと、洗濯機も。
 余談ではあるが、この世界には、生活魔法というのも存在する。
 例えば洗濯魔法『ウォッシュ』である。まさに、洗濯をする魔法だ。それを唱えれば、衣服は完璧に洗濯される。エルフならば、ほとんどが使える魔法。
 しかし、俺は魔力0。そんな魔法は使えない。そして、イリアもまた似たようなものだった。手洗いで洗えばいい話なのだが、時間も洗濯用洗剤もないのだ。
 大ニワトリの件で、魔力調整が上手くなってきたとはいえ、洗濯魔法などの魔法は全然ダメだった。使えるけれど、威力が強すぎて、服は破け、色は落ち、全く使い物にならない。まあ、魔法もそれぞれに向き不向きもあるようで、仕方ないと割り切ってしまえば、思いつくのは早かった。
 あっ、ちなみに、イリアの雨を弾く魔法『レインニー』は凄かった。
 普段なら、車の撥水効果みたいになるのだが、イリアのそれは、まさに弾いていた。周りに……。
 ちょっとした、エアガンのような威力を持ち、『雨の日に 魔力バカには 近付くな』という川柳みたいなものまであった。
 本人は意に介さず、何事もないように過ごしているが、傘も必要だ。

 話は戻るが『解体』のスキルを持つ、前に出会えなかった養鶏場の女主、エミールと街の酒場で出会い、偶然そこに居合わせた『ハッコロン』店主ミネッサと呑んで意気投合した。
 養鶏場には、安定した仕入れの契約を取りつけ。不足分をダンジョンで狩ってくるので、それの解体依頼をお願いした。何気に、羽をむしるのが大変なのである。その代わりに、からあげのレシピを教えた。
 『ハッコロン』には、悪魔の生き血の安価での購入。それと、その外の欲しい商品は値引き。代わりに、新しい貯蔵蔵の建設費用の一部負担。俺の料理に使った調味料を名前入りでメニューに載せる事にした。
 同席していたイリアには、その時「レシピを教えてもよろしいのですか?」と聞かれたが、ターニャさんにも教えたし、こういう知的財産は共有するに限る。食の全く発達していないこの世界では特にだ。裾野は広がって行くし、誰かが、からあげを食べ、アレンジし、新しいレシピを開発すれば新たな発見にもなる。食はそうやって発展していく。
 エミールは商店に卸している大ニワトリの肉に、俺の教えたレシピを一緒に載せ、爆発的なヒットを生み出し、それに書いてある調味料、悪魔の生き血も同じように爆発的に売れた。大ニワトリの需要が高まり過ぎてエミールは街の外に大規模な養鶏場を新しく作り初め。ミネッサも悪魔の生き血を作るのに一生懸命になっていた。
 そして、需要が高まるに連れて、冒険は冒険の『ぼ』の字も忘れ、ただの大ニワトリ狩りになっていた。完璧に。
 俺が大ニワトリを倒し、イリアが魔石、ドロップアイテム、食材を収拾する。そんな構図。
 たまに、お気に入りになったのか、青いファイアーボールを放っていた。

 そして、冷蔵庫、冷凍庫は只今、絶賛開発中。試作一号機が家の大半のスペースを埋め尽くしていた。でも、そのおかげで寝かせた肉で、からあげを大量に作る事が出来る。
 順風満帆。その言葉がぴったりだ。
 あっ、そうそう。塩からあげのレシピを教えたターニャさんは、あれから何回も塩からあげを揚げては、イリアに食べさせ、揚げては食べさせを繰り返している。
 そのおかげで、最初はイマイチ揚げ具合が分からなかったらしいが、今では立派な、からあげを作れるようになっていた。
 浸透していくのは良いことだ。
 本当に順風満帆。しかし、それとは別に俺は不満を覚えていた。これがきっと、元の世界ならばこのままで良かったのだろうけど……。
 正直、俺はもっと違う物も揚げたいのだ。ダンジョンには未開の食材も眠っているという。
 ただでさえ、揚げたことのない食材ばかり。せっかくこの世界に住んでいるのだから、色々と揚げたいんじゃ!美味い物を発見したいんじゃい!!
 例えば、コカトリス。
 あんなに美味い鶏肉。あれを調理してお客さんに出したい。そう思うのは料理人として、当たり前の衝動であろう。俺は冒険がしたい。違うのを揚げたい。そう思いながら、黙々と、からあげを揚げる。
 「はい。いらっしゃいませ。ご注文はいかがなさいますか?」
 そんな事を俺が考えているとも知らずに、イリアの慣れたように注文をとる声が店内に響く。
  「塩100に醤油100。お願いします。」
 ササッと量りに乗せ、袋に詰める。
 「はい。お待ち遠様でした。少しオマケしておきましたよ。600エルウォンになります。」
 イリアはウインクしてサービスをする。本当に元王宮魔術師か??と不思議に思うくらい、お客さんの心を掴むのが上手かった。
 ちなみに、ウチのからあげは両方、グラム300エルウォンだ。
 「ありがとうございました!」
 もう、イリアは完璧にからあげを売る姿が板についていた。
 からあげは、揚げれば直ぐに飛ぶように売れていく。お金は凄く貯まった。ただ、高揚感は無くなっていった。
 その日の営業時間が終わり、二人で銭湯に行き、その日の疲れを癒やして近くの酒場に行った。
 二人で何時ものように乾杯をする。
 あっ、ちなみに、この世界でお酒が飲めるのは16歳になってから。
 エルフの成長というの少し変わっていて、16歳までは人間と同じように16年で成長していくのだが、そこからは極端に成長しなくなる。アラフォーだった俺がこの世界だと18歳くらいの容姿になるらしい。ちなみに、イリアも俺と同じくらい。……40年近く生きている事になる。
 まあ、深く考えないようにしよう。人間界じゃないんだし。
 うんうん。毎日、お酒が飲めるようになったし。些細な事は気にしない。違うことを考えよう。
 
  これから、どうしようか?少し店の事を考える。
 もう、あの小さな家じゃなくて、大きな家を借りれるだろう。あそこは完全な店舗にしても良い。それに、からあげ以外のメニューも出せ、お客さんも店内で食べれるくらいの広さの新しい店を出すのも、今のまま頑張れば難しくないだろう。近い将来に必ず叶う。しかし……。
 「どうなさったのですか?ヤマト様?」
 俺の様子が変な事にイリアは気がついたのか?たずねてくる。
 「あっ……いや、何でもないよ。」
 俺はまだ自分が思っている事を伝えられずに、口ごもる。
 イリアはフォークを置いて俺を見つめて言う。  
 「ヤマト様。私に言えない事ですか?」
 「いや……。言えない事では無いけど……。」
 「なら、言って下さい。」
 エルフはこういう時に手厳しい。思った事は言うし、秘密や隠し事を嫌う。なので、こそこそ話や、ひそひそ話も目の前で堂々とやる。聞こえなくはするが。自分が何か思っていますよ。というのを相手に知らせるために。自分が正しいと思った事は曲げない。頑固者。
 もう、こうなったら、こちらが思っている事を伝えなければ、話は終わらないし続かない。
 俺は意を決して、イリアを見つめながら口を開いた。
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