揚げ物、お好きですか?リメイク版

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真実は胸の中(イリア回想)

真実は胸の中7

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 それから、おおよそ一年。私はヤマトの所へ行くのをかなり控えた。ターニャと計画をねるために。
 どうしても、食べたい時は行ったけど……。
 そして、その時にヤマトの身辺調査……いわゆる、聞き込みをした。
 ヤマトに愛する人が居ない事。
 ヤマトの家族はほぼ死別している事。
 ヤマトが元の世界に失望している事。
 少し、気が晴れた気がした。ヤマト自身を殺してしまうリスクはあったが、私達の世界の住人にするのに負い目を感じる事が少なくなった。
 そして、いよいよ、決行日。
 計画はこうだ。
 この日、女王様は世界会議のため東の隣国、『ライオネット』に赴き、その帰路についている日。その帰路の途中で、ヤマトに蘇生魔法をかけてもらう。
 そのためには、入念に帰路を知る事が必要だった。私とターニャは積極的に護衛隊に志願し同行した。
 そして、一つのポイントを見つけた。
 それは、宿場町『サンポーロ』にある、高台「名所・夢見が丘」だ。
 この宿場町には、東へ外交、外遊に向かう際に必ず、女王様は立ち寄る。ここで、仕掛ける事にした。
 夢見が丘にゲートを設置し、ヤマトがゲートに入る時、崖崩れを起こす。単純な事。この宝具『ゲート』は魔法のゲートとは違い、異世界へいくのに、少々歩かねばならない。
 そう、ゲートが倒れてしまえば、ヤマトは自然に真っ逆様に落ちてしまうのだ。それだけでも、大怪我を負うでしょう。そして、あわよくば、崖崩れにも巻き込まれるでしょう。あの高さから落ちれば致命傷は避けられない。心臓はきっと止まってくれる。
 問題は、どうやって崖崩れを起こすかという事と。女王様に気が付かれない事。女王様の直感力というのは信じがたいくらいに凄い。バレないように行動を起こさねばならない。そして、今度はその直感力も利用させて頂く。崖崩れを感知すれば、自ずとヤマトの事を女王様は感知してくれるはず。女王様は私達がミスをしたと思い、急いで向かってくれるはず。そこに、私達も到着し回復魔法を使い助力する。
 崖崩れを起こすのには、極小の魔原石に爆破魔法を充填して岩などの隙間に設置し、言霊をセットし起爆させる。まあ、簡単な事です。

 そして、いよいよ計画開始。
ヤマトは何の疑いもなく、我々の計画にハマり、ゲートの前までやってきた。そして、ターニャがヤマトを押す。すると、ヤマトは真っ逆様になり落ちて行く。
 よし!ゲートもちゃんと倒れているようだ!!
 少々、浮かれ気分な私とターニャ。そして、私達も後を追うように『フライ』を唱えてゲートへ飛び降りた。
 しかし、一向に元の世界へと戻れない。というか、ヤマトがうつぶせで倒れているのが見える?どういうこと??
 「イリアお嬢様!もしや、ゲートが岩で遮られているのではありませんか?!」
 ええ?!な、なんて事でしょう!!そこまで考えていませんでした!!これでは、計画が台無しです!!ど、どうしよう!!このままでは!!ええい!!ここは、力業で切り開くしか!!
 「『ウインド・ボルケーノ!!!』」
 私は風魔法をぶっ放した。その威力で、ヤマトは岩ごと、ゲートから押しやられる。
 「ちょ!イ、イリアお嬢様!!威力が強過ぎます!!」
 焦りに焦り、魔力調整の下手さを忘れていた、私は威力を間違え、ヤマトにかなりの重傷を負わせてしまった。

 「こん!馬鹿者が!!!」
 ヤマトの治療を終え、その日の内にお城へと戻った女王様に私はこっぴどく怒られていた。
 「すみません!すみません!!」
 「どこの馬鹿が、あのような場所にゲートを設置する?!崖崩れが起こるかもしれないという事は、簡単に予測出来たじゃろうが!!!」
 「すみません!すみません!!」
 私の魔法の威力が強過ぎて、爆破魔法を充填した魔原石の痕跡も風魔法に吹き飛ばされて消え、女王様にも感づかれなかったようだ。
 「妾がたまたまあの宿場町に居ったから、良かったようなものを……おぬし、もう少し、魔力調整に精進せよ!もっと、考えて物事を進めよ!!本当におぬしは、ヤマトの事になると、特にポンコツになるのう!!」
 私はそう言われ、シュンとした。
 確かに……私が悪いのだけど……。全面的に……。でも、どうすれば良かったの?あのままだったら、何も出来ないし……。
 「……まあ、もう、過ぎてしもうた事を言っても仕方がない。」
 女王様はやれやれといった感じで、話を変える。
 「これから、ヤマトをどうするか……じゃ。あやつ、心臓がエルフの物になってしまったゆえ、人間界にはもう戻れぬ。あやつには、この世界で生きていってもらうしかなくなった。言葉や読み書きは妾が少し脳に細工をしたから大丈夫じゃが……生活面はどうする?住む場所もなければ、働く場所もない。他の者の目もあるからの……特別待遇をし過ぎて金銭を多くやる事も出来ぬ……。」
 「それならば、私がヤマトの面倒を見ます。」
 そう。これが当たり前だろう。いや、計画通り。
 「ほう……。おぬし……魔術師隊隊長の仕事はどうする?」
 当然の質問だ。
 「辞めます。私が責任を持ってヤマトの側に居ます。」
 「おいおい。おぬし……簡単に辞められるような仕事ではない事は分かっておろう?後任の引き継ぎもあるじゃろう?それだけでも、かなりの時間が掛かるぞよ。」
 そう。後任も必要だった。
 「副長のラミアが居ます。あの子には、日頃からみっちりと仕込んであります。私が居なくなっても大丈夫です。」
 そう。この計画が始まる頃から、副長のラミアにはしっかりと、それまで以上に仕事を仕込んでいた。
 「おぬし……じゃから、そんなに簡単な事ではないじゃろ?」
 「私達、エルフは好きな事には猪突猛進です!」
 私は食い下がる気がなかった。ヤマトは私が側に居る。ヤマトは私が幸せにする。ヤマトがどう思っているか分からないけど、私が幸せにすると決めた。
 そう。そして、エルフの性格は好きな事には猪突猛進なのだ。
 「……はぁ。分かった。分かった。とりあえず限定的におぬしの魔術師隊隊長の任を解いて、副長のラミアを臨時の隊長に昇格させよう。……しかしじゃ。有事の際はおぬしに招集をかけるからの。それでよいか?おぬしが居らぬでも、上手く回るようなら、正式におぬしの魔術師隊隊長の任を解こう。」
 「はい!ありがとうございます!!」
 頭を抱え、女王様はしぶしぶ、承認してくれた。やはり、猪突猛進というのが効いたのだろう。それくらい、融通が効かなくなるのだ。エルフというのは。
 
 王室を出て、うきうきした気分で、ターニャとヤマトの所へ向かう。
 「ねぇ?ターニャ。私、ヤマトとどう接したらいいと思う?」
 少し考えて、ターニャは言う。
 「そうですね……私と同じようにメイドになってはいかがでしょうか?これから、お側に居られるのですから、身の回りのお世話もしなければならないでしょう?ヤマト様は、この世界の事は、お分かりにならないてしょうし。」
 確かにそうかも……ヤマトはこの世界の事を知らない……。
 「私に出来るかな?」
 「はい。イリアお嬢様なら、完璧です。まずは、呼び方を変えてみる事から初めてはいかがですか?」
 そう?私なら、完璧なのだろうか??
 「確かに、ヤマトからしたら初対面になってしまうのよね。なんて呼べばいいのかな?」
 ヤマトは、私と幼い頃に出会った記憶は消されている。
 「簡単です。『様』をお付け下さい。それだけで、立派にメイド感は出せます。」
 え?そうなの??
 「ヤマト……様?」
 私は試しに言ってみる。
 「はい。素晴らしいです。イリアお嬢様。」
 そ、そうかしら?
 「ヤマト様。ヤマト様……ヤマト様!」
 「はい!とても素晴らしいです!!イリアお嬢様!!試しに、私の事も『様』付けでお呼び下さい!!」
 「ターニャ様!」
 「はう!!!」
 ターニャは、腰が砕けたように、その場に座り込んでしまった。
 なんと凄い威力!様付け!!これなら、ヤマトもイチコロ?!
 私は意気揚々とドアをノックして、ヤマトの寝る部屋へ入る。
 すると、ヤマトが半身を起こし何かを確認しているようだった。
 良かった……ヤマトは無事だ!
 私は安心して、ヤマトに声を掛ける。
 「良かった!お目覚めのようですね?ヤマト様!」
 
 そう。紆余曲折あったが、ヤマトは計画的に私と一緒になったのだ。
 女王様もヤマトの作った料理が食べられるから、一石二鳥でしょ?
 お咎めもないし、魔術師隊の招集も掛からないし、良いことばかりじゃない?ララやエリも一緒になるとは予想外だったけど、ヤマトと一緒に居られる。それだけで、私は幸せだ。この先、何があろうとも、私はヤマト……ヤマト様から離れないから。この事は、ずっと胸の中に仕舞っておこう。

 
 
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