揚げ物、お好きですか?リメイク版

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疾風の靴

疾風の靴1

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 「痛い……痛い……。止めて下さ……い。お父様……。」
 これが過去の夢だと気がつくのに時間は要らなかった。
 ボクは、数多くの大人に囲まれ、四肢をノコギリで切断された。
 夢なのに、痛みがある。その恐怖と痛さにも目覚める事は許されず、そして、景色は一変に変わる。
 これはダンジョンだ。同じように、今度は四肢を切り刻まれ、モンスターに食べられる。
 何度も何度も夢に見る光景。
 痛みと苦しみ、惨めさ。それに耐えれなくなり、目から涙が零れ落ち、それと同時に何かが音もなく剥がれ落ちいく。
 そして、意識とは別に口だけが動き、聞こえない何かを言った後、夢はそこで覚める事を許され、朝を迎える。
 ここ数ヶ月、あまり見なかった悪夢。いや、あの時、ヤマト君のからあげを食べた時から、見る事は少なくなった。それがなぜだか分からないけど……。
 しかし、今は社員旅行だと言ってお店はお休み中。ヤマト君のからあげを食べる事は出来ない。
 ……はぁ。
 溜め息だけが、自然とこぼれる。
 ヤマト君、早く帰って来ないかな……。
 
 
 
 『疾風の靴』
 魔王様からフライドトードとホクホクグマのメンチカツのお礼の品として作って頂いた、取って置きの品だ。
 言葉ではなく、俺の意志で加速魔法を発動できる優れ物。スティングが持っていたであろう、マジックアイテムと同じ感じ。
 何時間も連続で使える訳ではないけれど、加速系の魔法が込められたら魔原石を使用したマジックアイテムとしては最高の物らしい。
 魔王様曰わく。
 モンスターとの戦い……特に接近戦となると、最も重要なのは『速さ』すなわち、スピードなのだという。どんなに力があっても、どんなに凄い攻撃だろうと、スピードで凌駕してしまえば、モンスター戦は難しくない。対人戦だと駆け引きが重要になるため、そう上手くはいかないらしいが……。
 そして、俺は今、前にやられたアミッドの洞窟の主、ミノタウロスの前に居た。
 最初にミノタウロスと戦った時とは違う。あの時、俺を苦しめた炎を吐く犬っころも、使っているうちにスキルアップした『石ツブテ』とこの『疾風の靴』。愛刀『麗月』を手にした俺の敵ではなかった。
 イリア達は何時ものように後方待機。
 ミノタウロスはこの前と同じように石斧を全力で振り下ろす。
 俺は『速く!』と意志を込める。
 すると『疾風の靴』は淡い光を一瞬放つ。そして、俺はミノタウロスの攻撃を避ける為に、バックステップを踏む。
 バックステップは、自分が思っているより速く、しかも遠くにバックステップした。一気にミノタウロスの攻撃範囲外だ。
 これは思っていたよりずっと凄い。ララとの練習の際は、ララの剣が届かない範囲までバックステップしたのだが、今回はミノタウロスが放つ攻撃の爆風圏外まで逃げれた。防衛機能?本能??そんな物が付いているのだろうか?
 ミノタウロスは前回同様、地面に刺さった石斧を一生懸命に取ろうとしている。
 俺は麗月を構え意志を込めて翔る。
 そのスピードは速いという次元ではなかった、まさに疾風だろう。瞬く間にミノタウロスまで到達し、眉間を貫いた。
 ミノタウロスは声も出せずに絶命した。
 す、凄い。凄すぎる!!『疾風の靴』バンザーイ!!
 「お見事です!ヤマト様!!」
 イリア達は駆け寄ってくる。
 「ああ。ありがとう。すげぇわ!この『疾風の靴』。流石、魔王様の取って置き。」
 「……うん。凄い。でも、移動速度が上がっているだけ……。剣を振るうスピードは突進する突き以外……変わらない。だから、鍛錬は必要。後、その速さに耐えれる筋力ももっと必要。今のままだと……数回、数分が限度。鍛えればもっと長い時間使える。それにまだ速くもなれるはず……。」
 「ララは厳しいね。でも、主様。ララの言うとおりでござますよ。研鑽をお積みになる事をお忘れなく。」
 ララやエリもイリアの後に言葉を続けた。
 話は少し戻るがあの時、エカルテの洞窟に閉じ込められた時の事だが、エリが泣きじゃくった事をエリは覚えていなかった。
 魔王様宅に帰ったあと、詳しく話したのだが魔王様は考え込んで、思った事を話してはくれなかった。聞き出せたのは、薪などを置いたのは、間違いなく魔王様達ではない。という事だけだった。
 まあ、それも今考える事ではないのかもしれないな。魔王様が詳しく話さなかったのも、ただの魔王様の手違いだって事もあるだろうし。
 「ああ。分かってる。ありがとう。ララ、エリ。それじゃあ、勲章を探して帰るぞ。」
 「「「はい!」」」
 俺達はアミッドの洞窟攻略の証、勲章を灰になったミノタウロスから探し帰る事にした。

 何時ものように、ギルドでダンジョン攻略のご褒美?ささやかな祝勝会?が開かれていた。
 俺は何時ものように一人で先に帰ろうとしたが、今日はアリシアに止められた。
 「ヤマト様。本日はクラスアップのご説明がございますので、このまま少しお待ち下さいませ。」
 ん?クラスアップ??なんだそれ??レベルアップと違うのか??
 仕方ないので俺も今日は待つことにした。
 祝勝会も終わり、アリシアは説明を始める。
 「ヤマト様。クラスアップ、おめでとうございます。あなた様のパーティーは、シルバークラスへとランクアップ致しました。」
 「シルバークラス?」
 「はい。シルバークラスでございます。シルバークラス以上になられますと、ギルドからの直接クエストが依頼される事があります。一流冒険者の仲間入りでございます。他の街なら、低級なダンジョンもまだまだございますが、この王都市近郊のダンジョンはこれより先のダンジョンは難易度が更に上がります。なので他のパーティーの方と連携を取っての戦いになると……。」
 アリシアは俺以外のメンバーを見る。そして、ため息を一つ、ついた。
 「はぁ。ヤマト君のパーティーは問題ありませんね。ヤマト君自体もかなりのレベルに達したし、元・超特級王宮魔術師、元・勇者。元・王宮弓術隊総隊長……ですからね。それに、三大貴族のご令嬢……これに回復専門のヒーラーか魔術師の一人居たら、元・勇者パーティーより確実に強いでしょ?いや、イリアが居る時点で不要なのかしら?」
 なぜか投げやりになり営業トーンを忘れたアリシアは悪態をつくように言う。
 「まあ、他のパーティーと連携をとる場合は気をつけて下さい。よく声を掛け合い、やって下さい。特に、イリアです。魔力バカの行動には気をつけて下さい。以上です。あ、あと、ギルドカードの提出をお願い。」
 アリシアは態度悪く、手をぴらんぴらんと『早く寄越せ』と言わんばかりに振る。
 ララ以外、アリシアにギルドカードを渡す。なぜ不機嫌になったか分からず、俺はアリシアを見ていた。
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