揚げ物、お好きですか?リメイク版

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疾風の靴

疾風の靴11

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 あれ?また、さっきと同じ浮遊感がする。
 目を覚まして、最初にそう思った。
 「お目覚めかい?」
 俺だと言う、俺の声ではない俺の声がする。
 「また、お前の声がするということは、モンスターにやられたのか?」
 「いやいや、モンスターは倒したさ。でも、ダメージが大きかったからね。少し気を失っているかな?それと少しの間、心臓を止めているよ。」
 はぁ?心臓を止めてる??そんな事して、俺、大丈夫なのか?!
 「そんな事して俺の身体は大丈夫なのか?!」
 「ああ。大丈夫だよ。直ぐに動くようになるから、それに止まっている間以外、僕が君に話し掛けられるタイミングは今のところないからね。」
 なんだ。やっぱり、俺じゃないじゃないか……。
 「お前……本当は誰なんだよ?」
 「ん~。さっきも言ったじゃないか。僕は君だ。そして、僕は君の心臓なんだよ。まあ、君の言いたいことは分かってるけど……もう少しだけ、僕の話しに付き合っておくれよ。せっかく、千年とちょっとぶりに目覚めたんだからさ。」
 ええ?!千年ちょっとぶり?!

 
 「ヤマト様!ヤマト様!!ヤマト様!!!」
 イリア達はヤマトの元へ駆け寄り、身体を揺らす。しかし、ヤマトはダラリとして全く動く気配がない。
 遅れてやってきた、アリシアはヤマトの息を確認した。
 「……い、息をしてない。」
 アリシアは涙声で言葉を零した。
 それを聞いて、イリアはヤマトのボロボロになったレザーアーマーを力任せに剥ぎ取り心音を、エリも籠手を同じように剥ぎ取り脈をとる。
 「心音が聞こえない……。ヤマト……様。」
 「脈も……ない。」
 イリアとエリは力無く、うなだれる。
 「……まだ……諦めるのは早い!!蘇生処置をおこなう!心臓が止まってそんなに経ってないはず!脳はまだ生きてる。イリア!エリ!アリシア!あなた達も王宮で習ったはず!躊躇などしている時間は無い!!蘇生処置の用意を!!!」
 ララはのほほんと穏やかな普段の表情とは違う、鬼気迫る表情でイリア達に指示を出す。
 「イリアは回復魔法をデュエルで唱えて!!アリシアはイリアの回復魔法と同時に気道確保をして人工呼吸!私は胸骨圧迫をおこなう!!エリ!エリは『隠魂障壁』は使える?!」
 「ああ!使える!!」
 「なら!それを使って!!死神からマスターの魂魄を守って!!時間がない!!」
  
 
 身体が光に包まれ、今度は重くなった。そして、激しく揺れる。
 「な、なんだ?今度は浮遊感がなくなって身体が重くなったぞ?!それに、なんだ??地震か??凄く揺れている。」
 「へぇ~。スキル『隠魂障壁』を使える子も居るんだね。君のパーティーは最強じゃないかい?君の身体が重くなったのは、身体と魂魄が一体化しようとしている証拠だよ。心臓が止まって数分は脳は生きてるらしいし、脳が死ぬと魂魄が完全に剥離するからね。ちなみに、君がこの世界に来た時に『魂魄障壁』を使ってくれたのは、ターニャ君だよ。」
 「『隠魂障壁』?」
 「ああ。文字通りのスキルさ。死神からしばらくの間、魂魄を守ってもらえるスキルだね。」
 し、死神?!
 「し、死神なんているのか?!」
 俺の驚いた声に俺の心臓は答える。
 「君は今更、何を驚いているんだい?神が居る世界だよ?死神も居るさ。それに死神は悪い存在ではないよ?亡くなった僕達を迷わないように空へと導いてくれる、ありがたい存在なんだ。まあ、今回、君は死んでないから会う事は叶わないけどね。」
 そ、そうなのか。俺、死んではないのか。……良かった。
 「ん~。どうやら、心臓を止めておくのも限界に近づいたようだ。君とこのまま話していたかったけど、今回のところは一旦諦める事にするよ。試していないけど、今晩、夢の中に行けたらそこで会おう。」
 俺の心臓はそう言い残して、俺に語り掛けなくなった。
 
 ……………。
 ………。
 ……。
 ん?誰かの声が朧気に聞こえる……泣いているのか??顔が濡れていく。
 「……も、もう、ダメだよ。私が、意地張ってダンジョンなんかに……行かなければ……。ごめんね。……ヤマト君。」
 「マ……スター。」
 アリシアとララの声か……。心臓マッサージの手が止まる。
 「くっ……主様!主様!!」
 今度はエリの絶叫と心臓マッサージとは違う揺れが俺を襲う。
 「まだ……まだです!!私は諦めたりなんかしない。私はヤマト様を失いたくない!!どいて下さい!エリ!!」
 イリアの声と同時に揺れは収まった。イリアがエリを制したのだろう。
 「……ピュアオールヒーリング!!……ロストスリーピング!!」
 そう、イリアの魔法が聞こえ、突然、目が覚めた。
 条件反射というやつだろうか?感覚とは別に、俺の上半身は勢い良く起き上がろうとして、とても固い物と頭が当たる。
 ぐぬぉぉぉ。
 痛さに悶絶していると、三方向から柔らかい物に俺は包まれた。
 「マスター!!」
 「主様……。」
 「ヤマト……君。」
 どうやら、三人に抱きつかれたようだ。
 あれ?イリアの姿が見当たらない。三人に抱きしめられて動きにくい身体を捻って辺りを見る。すると、頭を抑えて、悶絶しながらうずくまっているイリアが居た。
 どうやら、起き上がった時に当たったのはイリアの頭だったようだ。アイツ、石頭だったのか……。
 イリアは痛むてあろう、おでこを押さえながら、状況を確認したようだ。
 「ヤマト様!!良かった!本当に良かった!!」
 イリアも泣きながら、律儀に空いているスペースを探し、俺に後ろから抱きついてくる。
 こ、これは天国か??三人に抱きつかれて、ただでさえ極楽気分なのに……。イリアまで……。
 しかし、イリアの胸からは柔らかさを感じない。他の三人とは違う。ポヨ~ン。ポヨヨ~ン。ポヨヨヨ~ン。からのペッタンコ~だ。反動がデカい。
 「……柔らかくない。」
 あまりにも差がありすぎたのか、小声でぼそりと無意識で零してしまったのだろう。イリアに聞こえたらしく。近くに置いていたのであろう、木製の杖で思いっきり、頭を殴打され意識をまた無くした。

 「……やあ。ヤマト君。まさか、直ぐに話せるとは思っていなかったよ。」
 もう、だいぶ聞き慣れた俺の心臓の声が聞こえる。
 「……ああ。俺も思わなかった。俺、死んでないよな??」
 「まあ、なんとかね。でも、今回は自業自得だよ?」
 自業自得だって言ってもね……。木製の杖で、思いっきり殴る事はないよな。俺にステータスの補助が無ければ死んでいるぞ。
 「心臓は止まってないけど、話せるんだな。」
 「そうだね。どうやら、夢の中のようだけど。」
 そうか。夢の中なら安心だ。
 「そろそろ、お前の正体を教えてくれないか?」
 「そうだね。僕の元の名前はラックスター。」
 俺の心臓はようやく、自分の名前を口にした。
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