揚げ物、お好きですか?リメイク版

ツ~

文字の大きさ
123 / 201
ラックスター

ラックスター3

しおりを挟む
 イリア達は魔王とララから聞いたラックスターの最期に言葉を失っていた。
 「なら、ラックスターの目的は……ヤマト様の身体を奪う事?奪って、復讐を果たす……事??」
 イリアは懸念しいる言葉を口にして、絶望の淵に立たされた。
 なぜ目覚めたのか、何が目的か分からない現状で、一番考えられる事が復讐を果たす事だったからだった。
 「ま、魔王様……。ヤ、ヤマト様は……。」
 泣き崩れるイリアを見ながら、魔王も深く考え込んで、言葉を口にする。
 「それが目的だと決まった訳ではないと思う。それに、女王の事だ……ヤマト君に託したと考えた方がいいと思うんだ。何か考えがあっての事だと思うし……。」
 「魔王様。魔王様が主様の心臓を新しくするって事は出来ないのか?!」
 エリも魔王にすがるように言う。
 「……エリちゃん。それは出来ないんだ。あの術を使える神は知っているけれど、ボクはこの世界に降りてきた時に、女王にその力を分け与えて使えないんだ。エルフで使えるのは女王だけなんだ。」
 「そ、そんな……。」
 エリも力無くうなだれた。
 「それなら……もう一度、もう一度!女王様に頼めば!!」
 ターニャも魔王に食い下がる。
 「……ターニャちゃん。ターニャちゃんも分かっているだろ?あの魔法は、そんなに容易く使えるものじゃないんだよ。あれをエルフが使うには、最低でも数十年のスパンが必要になる。」
 「ですが!?……。」
 そう言い、ターニャは俯いた。
 「まだ、ラックスターの目的も分からない……だから、希望を捨てちゃダメだ!」
 魔王は希望を持つように、力を込めて言った。
 そして、ララはそれを静かに見つめていた。

 「僕は恨みなんて晴れないと思ってた。時間が解決するものでもないと思っていたんだ。女王様が何で僕を君の心臓に選んだのかも分からなかった。この目でまた世界を見るまでは。」
 ラックスターは一呼吸置いて、また口を開く。
 「千年ぶりに見た世界は……美しかった、そしてまぶしかった。ずっと暗闇の中で復讐をする事だけを考えて、ドス黒く濁りきっていた僕には、物凄く輝いて見えたんだ。……そして、この世界が愛おしく見えた。思えてしまったんだ。あれだけの苦痛を受け、愛する者を目の前で殺され、憎しみの業火に心を焼かれ続けたのに……僕はこの世界が愛おしく思えてしまった。理由なんてないんだ。ただ、それだけ。それだけだったんだ。……僕はやっぱり、この世界が好きなんだ。簡単な事さ。僕を愛してくれた人達の想いを……思い出したんだ。憎しみだけの世界じゃない。僕は恨みを晴らすだけに君として生まれ変わった訳じゃない……。」
 ラックスターの声は涙で震えていた。
 「僕は、何で女王様が僕を君の心臓に選んだか、僕を蘇らせたか、分かった気がしたんだ。君はこの世界を知らない。それなのに、偏見なんて持ってなかった。エルフを見た目で判断しない。それどころか、君は瞳の色の事を歯牙にもかけない。困っている人を助ける優しさもある。武力で事を成そうとしていない。それなのに、君はこの世界に変革をもたらそうとしている。いや、既に変革は始まっているんだ。君はこれからのこの世界には必要な人さ。」
 ラックスターは涙を拭ったのだろう。声は晴れやかな声に変わっていた。
 「……僕は君を守るよ。そして、君として僕は生きる。だから、僕の技を君に残してまた影に戻るとするよ。」
 俺は最初、復讐の為に俺の身体を乗っ取られると思っていた。でも、それは違った。ラックスターはやはり……英雄だった。
 どんなに辛かっただろう。どんなに苦しかっただろう。それは、想像を絶するモノだっただろう。それでも、人を愛し続ける事が出来たんだ。恨みの業火に心を焼かれながらも、決して焼かれる事のない優しさを持っていたんだ……。
 でも、一つ疑問に思った。何でミノタウロスの時は目覚めなかったのに、今回はラックスターは目覚めたのだろう?俺はそれを聞きたくなった。
 「何で、ミノタウロスの時は目覚めなかったのに、あなたは今回は目覚めたんだ?」
 「心臓が一度止まった事で僕が出て来れたのが一番の理由なんだけれど……笑わないで聞いてくれるかい?」
 ラックスターはなぜか照れくさそうに言う。
 「ああ。約束する。」
 ラックスターは少しの沈黙の後、口を開いた。
 「アリシア君……。彼女が僕の妻に似ているんだよ。ルックスもそうだけど、変にお姉さんぶったり、突拍子もない事をやったり……とか。それに……いや、これは彼女から聞いた方がいいね。」
 最後に何か言いかけたけど、アリシアに似ている?と言うのが可笑しすぎて、俺は思わず笑ってしまった。
 「笑わないって約束だろ?彼女はとてもチャーミングじゃないかい??」
 不服そうに、ラックスターは言うがその後、笑いながら言った。
 「君を守りたかったと言うのは、もちろんだけれど……彼女を守りたかったというのも本当さ。もうそろそろ、君が目を覚まさないと彼女達が可哀想だから、僕は引っ込むよ。もし今度、僕が出てくる時は異端審問員を見つけた時だと思う。そんな事がない事を願うけど、もし、その時、僕が暴走しないように君が僕を止めておくれよ。あっ、それと最後に、僕が殺されたもう一つの理由も教えておくよ。」
 そう言えば、もう一つ理由があるって……。
 「僕の妻は……バンシーだったんだ。カラーコンタクトで隠しはしていたけど……。僕や家族、村の人はそれを知っていたし、気にもしなかったよ。僕の時と同じように。でも、異端審問員の奴は恐れたんだ。魔力のない異端の者の僕とバンシーの妻。その二人の子供がどんな形で生まれてくるか……。想像を絶したんだろうね。だから、お腹の子を一番最初に殺したんだ。……ヤマト君。この世界はそんなに優しい世界じゃない。王都は優しく見えるけれど、他の国に行けば、いずれそんな物が見えてくる。憎む気持ちも出てくるだろう。でも、君の仲間を、家族を信じてあげてくれ。それと、これが本当の最後だ。アリシア君には特に気を掛けてあげてくれ。きっと彼女にもまた災いが降り注ぐだろうから。」
 そうと言い、ラックスターの声は聞こえなくなった。
 
しおりを挟む
感想 293

あなたにおすすめの小説

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

処理中です...