揚げ物、お好きですか?リメイク版

ツ~

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アリシア

アリシア2

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 「お嬢様。よろしいですか?」
 「うん!アルベダ。お願い。」
 夜を歌う虫の声より小さい声。
 魔原石灯の無い、薄暗い小さな小屋。
 その小さな窓から射し込む月明かりの下、アルベダは何時ものように、わたしを自分の膝の上に座らせ、絵本を読み聞かせてくれた。
 月夜の日にしか訪れない時。わたしはこの時間が、たまらなく好きだった。
 そして、読み聞かせてもらう絵本の名は『少年ゼセンタの物語』。
 わたしのお気に入りだ。
 何度も何度もアルベダにせがんで読んでもらっている物語。アルベダは「またですか?」と少し呆れたような顔をしていたけれど、最後はいつも優しい微笑みを浮かべ、読んでくれた。
 わたしは、優しいアルベダの声で読み上げられる物語中を幾度となく旅をした。
 太陽の情熱的な暖かさ。
 月の柔らかい光。
 季節を運ぶ風の匂い。
 数え上げればキリがない。この小さな小屋の小さな窓から少ししか感じられない景色を、この物語はわたしに教えてくれた。
 もちろん、それだけではない。
 優しさ。強さ。思いやりの心。など……これも数え上げればキリがない程に教えてもらった。
 話の内容を簡単に言ってしまえば、バンシーの少年が苦難を乗り越え、英雄となり、小さな国を一つ救う物語。そんな在り来たりな物語。
 でも、自分には特別だった。
 主人公の少年ゼセンタの境遇が今の自分と似ている。そう思った事も気に入った理由の一つだろう。しかし、自分もこうありたい。そう思わせてくれる物語だった。
 「めでたし、めでたし。……はい……おしまい。」
 アルベダは最後の一行を読み終え、そう言い、優しく本を閉じる。
 「え~。アルベダ~。もう一回、もう一回読んで~。」
 祖母以外に甘えられないわたしはアルベダに甘えた。
 自分に、もし……姉がいて、甘えていられたのなら、きっとこんな感じだっただろう。わたしは何時もそう思っていた。
 甘えちゃいけない。今の自分の境遇を考えれば簡単に分かっている事なのに、わたしは本を閉じたアルベダの両腕を掴み、ゆすりながら、せがむ事を止められなかった。
 「ふふふ。仕方ありませんね。」
 アルベダもそれが分かっていただろう。自分が、わたしに深く関わると自分の身も危なくなると……しかし、それでも、わたしの事を優先してくれていた。
 そして、何時もわたしが読み聞かせに満足すると、決まってこの事を言った。
 「お嬢様。今は、お辛いでしょうが、諦めてはいけません。」
 アルベダが何を言いたいのか、幼い自分でも分かった。でも。
 「諦めちゃ、ダメ。って言われても……、どうしたら、いいの?」
 そう。諦めてはいけない。と、毎回毎回言われても実際、小さく弱い自分には何も出来ない。抗う事も、ここから逃げ出す事も……。
 結局……自分は、かごの中の鳥と同じなのだ。いや、それよりも悪い。鳴く事も出来ないのだから。
 「それでも……です。諦めてはいけません。この物語の主人公、ゼセンタ少年と同じように、諦めてはいけないのです。諦めてなければ、道は必ず出来ます。そう、信じて下さい。この、ゼセンタ少年と同じように、信じる事を諦めないで下さい。どうかお願いです。どうか……。」
 この日のアルベダは何時もと違っていた。強い願いが込められていたように思えた。そして、悲しみも。泣いていたのだろか?語尾は震えていた。懇願……それに、近かっただろう。それくらいの迫力があった。
 「うん。……分かった。諦めない。信じる。わた……ううん。ゼセンタと同じように、今日から『ボク』っていうよ。ボクは信じる事を諦めない。何があっても、アルベダが言うように、信じて、諦めたりしない。何時か……何時か大きくなったら、ゼセンタと同じように、立派になる事をアルベダに誓うよ。」
 ボクはアルベダにそう答えた。
 その答えに、アルベダは安心したようにボクを強く抱きしめた。言葉ではなく、ボクを痛いほど強く抱きしめた。
 その意味を数日後、ボクは知る事になる。
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