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伝えたかった事。伝えたい事。
伝えたかった事。伝えたい事。10
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後悔していない。と言い切れるあたり、流石、エルフというところだろうか?
まあ、こう……スパッと言われると逆に気持ちがいいもんだ。
別に俺に好きな人が居た訳ではないし、夢って言ったら、美味しい物をお客さんに食べてもらい続ける事だったから、それはこの世界でも変わる事はない。反対に、この世界に来たからこそ出来る事も増えたし、チャレンジする事も出来ている。
もうすぐ、元の世界では無理だと思っていた、大きな店も出来る。不満に思う事は、好きだったアニメやゲーム、サッカーが観れない、やれない事。それと、両親の墓参りに行けないことくらいだろうか。
ゲームやアニメが見れない、やれない代わりにダンジョンで冒険は出来るからスリリングな生活は出来ているよな。見たことのない食材採取とかドロップアイテムとか集めるの楽しいし。墓参りの事は、女王様に頼んで、イリアに行って貰う以外はないかな……。
最初、嘘をつかれた。事について怒ってしまったけどね……。
実際、許す、許さない。どちらかと言うと、圧倒的に許す。なんだよ。イリアはずっと気にしていたのだろうけど、ヘタレな俺の事を、こんなに好きだって言ってくれているんだし。そう言われると胸にグッと来るものがあるよな。
ただ、許す、許さない。の話ではなくて、やはり胸につかえるモノがあるのは変わらない。
「イリア。昨日も言ったが、俺はお前やターニャさんの事を許しているぞ。」
「……本当ですか?」
イリアは涙目で俺を見る。
「そりゃ、最初は嘘をつかれた。とか、はめられた。とか思って腹を立てたけど、実際、自分で何であんなに怒ったのか分からないんだ。」
まあ、ゼウス様の仕業だろうけど。
それに、不安は取り除いてやらないとな。
「俺はこの世界に連れてこられた事を恨んではいないよ。好きだった人とか居なかったし、夢ならこの世界でも叶えられる。見たことも、食べた事もない食材もこの世界にはあるし、まだ、見たことない物だってあるだろ?元の世界じゃ、体験出来ない事も出来ているし、満足だよ。それに……。」
「……それに?」
そうだな。俺も本当に腹を据えないといけない時なんだろうな。俺が思っている事を伝えて。
「うん。それにな。俺の事を、こんなにも長い時間、想ってくれている人が側に居るんだ。この世界に来て、恨む事や怒る事はないよ。」
俺の言葉を聞いてイリアの綺麗な瞳は大きくなる。
「……それって……私の事……。」
そうだな。認めよう。俺はイリアの事が好きなんだ。
料理は出来ない、だらしない。まあ、目に付く欠点はいくらでもある。それは俺も同じ事だろう。
幼かった自分もイリアに恋心を抱いていただろうし、この世界に来て、一年間ずっと一緒に居て、イリアの事もよく分かった。これは、イリアだけに限ってじゃない。ララにエリにターニャさん、アリシアにも言える事だ。俺は彼女達の事が好きなのだ。
「そうだな。俺は、イリアの事が好きだ。……なんて言ったらいいか……もっと綺麗に伝えたいんだけど、上手い言葉が見つからない。」
その言葉を聞いて、イリアは口元を手で押さえ、大粒の涙を零し言う。
「……私……私……、嬉しいです。今が……今日が今まで一番嬉しい日になりました。まさか、ヤマトに好きだと言って貰える日が来るなんて……去年の今頃では思う事も出来なかったのに……。綺麗な言葉なんて、いいんです。好きだって……。」
言葉の途中で、イリアは俺に抱きついてきた。
「好きだって、言って貰える事がこんなにも嬉しい事だなんて、思いもしませんでした。」
じんわりとイリアの体温が俺に伝わる。
そういえば、とっさに抱きつかれた事はあったかもしれないけど、こんなにあたたかさを感じる事はなかったな。何時以来だろう。こんな気持ちになるなんて。
久し振りに愛おしいという感情が目を覚ましたような気がする。
俺は無意識にイリアを抱きしめていた。
「ふふふ。エターナが言うように、本当に嬉しくて、あたたかい気持ちになるのですね。私、心がポカポカです。こんな幸せな事があるのですね。」
嬉しい事を言ってくれるじゃないか。
俺達はお互いのぬくもりを堪能し、少し離れる。
「イリア……。」
「ヤマト……。」
そして、再び抱き合い、俺達は初めて唇を合わせた。
イリアの肩を抱き、ベンチに座ったまま少しの時間が過ぎた。
「幸せ過ぎて、少し怖いですね。」
「そうだな。確かに少し怖いな。」
二人でいると、自分が何を怖れていたのかおかしくなる。
「なあ、イリア。」
「はい?なんですか?ヤマト??」
「ずっと考えていた事なんだけど……俺って何歳くらいまで生きられるのかな?」
さっきまで、怖いと思っていた事がサラリと口から出た。不思議なものだ。
「……そうですね。それは私にも分かりません。でも、ヤマトが若い頃の体に戻っているという事は、普通の人間よりも長く生きられるようになっていると思いますよ。」
「……そうか。」
やっぱり、イリアにも分からないのか。
「ヤマトは、そんな事を悩んでいたのですか?」
「そんな事って……。」
「すみません。そんな事というのは言い過ぎたかもしれません。でも、何歳まで生きられるかなんて、私達、エルフにも分かりません。長命だと言っても、全てのエルフが1000歳まで生きられるのか?と言えばそうではないですから。それに、ヤマトは気が付きませんでしたか?」
「何をだ?」
「この世界は、子供の数も少ないですけど、お年寄りの方も少ないでしょう?」
あっ、確かにそれも思った。お年寄りの姿もあまり見ない。
「確かにあまり見ないよな。」
「そうです。エルフ自体が老化の遅い種族ではありますけど、その前に……老化する前に亡くなる方が多いのです。」
「亡くなるって……何でだ?」
「それは、色々とありますよ。事故で亡くなったり、ダンジョンで亡くなったり、野生のモンスターに襲われる事だってありますから。」
ああ、そうか。イリア達は何時も死と隣り合わせで生きてきたんだ。だから、あんまり寿命の事も考えないし、何時、死ぬか分からないから、その時に後悔しないように猪突猛進な性格なのかもな。
「でも、イリアは俺が先に居なくなっても寂しくないのか?怖くないのか?」
「それは、寂しいですし、怖いに決まっているじゃないですか!?そんなの嫌ですよ!?」
イリアは少し怒ったように言う。そして。
「誰もが、好きになった人、愛した人には、一分一秒でも自分より長く生きてもらいたい。そう思うのが普通です。ヤマトもそうじゃないんですか?」
確かにそうだ。イリア達には自分より長生きして欲しい。
「そうだな。」
「ヤマトが私より先にこの世から居なくなる。ヤマトが私の前から居なくなる。怖いに決まってます。……怖いです。考えるだけで、心臓が……締め付けられます。」
そう言い、イリアは悲し顔をし、自分の左胸の前で右手の拳を握り締める。しかし、次の瞬間、イリアの表現が一変した。
「でも!……怖いからと言って、ヤマトと一緒に歩いて行く事を、私は諦められません!諦められるくらいなら、私はヤマトをこの世の住人にしていない。私は……私は!!どんなに辛い事があったとしても、ヤマトと寄り添い歩いて行く道を選ぶ!どんなに辛い別れが待っていたとしてもヤマトと一緒に居る事を後悔しない……。私が……ヤマトと一緒に居る事、愛する事に後悔などしないのです。当たり前の事じゃないですか?」
そう言って最後は微笑んだイリアの笑顔はとても美しかった。
「……イリア。」
「それに……私、新しい夢が出来てしまいました。」
「夢?」
「はい。夢です。今までの夢は、ヤマトにもう一度、会う事。ヤマトと一緒に居られる事でした。でも……今は、いっぱい、い~~~~っぱい、夢が出来ました。ヤマトとの子供も欲しいですし、ヤマトとデートしたい。お店ももっと大きくしたいですし、混浴に入ってみるのもいいかもしれませんね。……。」
夢って……ほとんどやりたいことじゃないかよ……でも……、それがたまらなく愛おしかった。
「イリア……。」
俺はそう言い、真剣にイリアを見つめる。すると、俺が何をしたいのか分かったようで。
「えへへ。……ヤマト。」
イリアは照れくさそうに俺に顔を近づける。そして、お互いの唇が触れ合おうとしたその瞬間。俺とイリアの頭は止まった。
「……マスター、イリアばっかり、ずるい。」
「ハァ、ハァ。もう、ヤマト様とのファーストキスも終わっているので、私も我慢しないでいいですよね?」
ララとターニャさんだ。
ララは強引に俺の顔を、ターニャさんはイリアの顔を強引に自分達の方に向けて、その唇を奪い。
「も、もう、いいですよね?!何回やってもいいですよね?!一回も二回も同じですし。ハァ、ハァ、ハァ。三十年以上、私も待ったのです。大丈夫です。先の事は致しませんから。ハァハァハァハァ。」
ターニャさんはイリアをベンチから強奪していき。
「……グスン。主様。イリアやララだけずるいです。」
「ボクもヤマト君とイチャラブする~。」
イリアが居なくなった場所にエリは腰掛け、背後からアリシアが抱きついてきた。
どうやら、ターニャさんを含め、俺とイリア以外はベロンベロンに酔っ払っているようだ。
くそ!誰だ!こんなに酒を飲ませた挙げ句、ターニャさんにコーヒーを飲ませた犯人は!?
ララの手で首は動かない。
目で犯人を探す。
そこには、コーヒーカップと酒瓶を持った、イリアの両親がいた。
「うふふふ。上手くいったわね。あなた。」
「そうだね。上手くいき過ぎた感が否めないけどな。」
「そうね。でも、イリア達も嬉しそうだから、良いじゃない。うふふふ。」
「だな。あははは。」
何やら話している二人と目が合う。その目は実にイヤらしい目つきだった。そして、二人は不適に笑う。
やはり、犯人はあいつらか!
イリアがニコニコと隣に座った時から、怪しいと思ったんだ。最初、何か期待したように、ソワソワしてた感もあったいし、あいつら、何か吹き込んだな!
二人は、笑みを浮かべたまま、俺に手を振り、背を向けた。
あっ!クソ!!何か言わないと気が済まない。
そう思い、俺は動こうと片手を伸ばす。
「……主様。よそ見なんかいけません。次はわたくしの番です。」
そう言い、今度はエリが俺の顔を押さえ、自分の方を向かせ。
「ヤ、ヤマト!ぶわっぷ!!た、助けて!!」
「良いじゃないですか。良いじゃないですか~。イリアお嬢様。」
イリアは俺に助けを求めたが、ターニャさんに良いようにされていた。
こうして、グダグダと変な感じでアリシアの歓迎会は幕を閉じた。
まあ、イリアとじっくり話せたのは良かったのだろう。気にしていた、胸のつかえが取れたような気がした。
一歩、前に進んだような気がした。
第一部 完
まあ、こう……スパッと言われると逆に気持ちがいいもんだ。
別に俺に好きな人が居た訳ではないし、夢って言ったら、美味しい物をお客さんに食べてもらい続ける事だったから、それはこの世界でも変わる事はない。反対に、この世界に来たからこそ出来る事も増えたし、チャレンジする事も出来ている。
もうすぐ、元の世界では無理だと思っていた、大きな店も出来る。不満に思う事は、好きだったアニメやゲーム、サッカーが観れない、やれない事。それと、両親の墓参りに行けないことくらいだろうか。
ゲームやアニメが見れない、やれない代わりにダンジョンで冒険は出来るからスリリングな生活は出来ているよな。見たことのない食材採取とかドロップアイテムとか集めるの楽しいし。墓参りの事は、女王様に頼んで、イリアに行って貰う以外はないかな……。
最初、嘘をつかれた。事について怒ってしまったけどね……。
実際、許す、許さない。どちらかと言うと、圧倒的に許す。なんだよ。イリアはずっと気にしていたのだろうけど、ヘタレな俺の事を、こんなに好きだって言ってくれているんだし。そう言われると胸にグッと来るものがあるよな。
ただ、許す、許さない。の話ではなくて、やはり胸につかえるモノがあるのは変わらない。
「イリア。昨日も言ったが、俺はお前やターニャさんの事を許しているぞ。」
「……本当ですか?」
イリアは涙目で俺を見る。
「そりゃ、最初は嘘をつかれた。とか、はめられた。とか思って腹を立てたけど、実際、自分で何であんなに怒ったのか分からないんだ。」
まあ、ゼウス様の仕業だろうけど。
それに、不安は取り除いてやらないとな。
「俺はこの世界に連れてこられた事を恨んではいないよ。好きだった人とか居なかったし、夢ならこの世界でも叶えられる。見たことも、食べた事もない食材もこの世界にはあるし、まだ、見たことない物だってあるだろ?元の世界じゃ、体験出来ない事も出来ているし、満足だよ。それに……。」
「……それに?」
そうだな。俺も本当に腹を据えないといけない時なんだろうな。俺が思っている事を伝えて。
「うん。それにな。俺の事を、こんなにも長い時間、想ってくれている人が側に居るんだ。この世界に来て、恨む事や怒る事はないよ。」
俺の言葉を聞いてイリアの綺麗な瞳は大きくなる。
「……それって……私の事……。」
そうだな。認めよう。俺はイリアの事が好きなんだ。
料理は出来ない、だらしない。まあ、目に付く欠点はいくらでもある。それは俺も同じ事だろう。
幼かった自分もイリアに恋心を抱いていただろうし、この世界に来て、一年間ずっと一緒に居て、イリアの事もよく分かった。これは、イリアだけに限ってじゃない。ララにエリにターニャさん、アリシアにも言える事だ。俺は彼女達の事が好きなのだ。
「そうだな。俺は、イリアの事が好きだ。……なんて言ったらいいか……もっと綺麗に伝えたいんだけど、上手い言葉が見つからない。」
その言葉を聞いて、イリアは口元を手で押さえ、大粒の涙を零し言う。
「……私……私……、嬉しいです。今が……今日が今まで一番嬉しい日になりました。まさか、ヤマトに好きだと言って貰える日が来るなんて……去年の今頃では思う事も出来なかったのに……。綺麗な言葉なんて、いいんです。好きだって……。」
言葉の途中で、イリアは俺に抱きついてきた。
「好きだって、言って貰える事がこんなにも嬉しい事だなんて、思いもしませんでした。」
じんわりとイリアの体温が俺に伝わる。
そういえば、とっさに抱きつかれた事はあったかもしれないけど、こんなにあたたかさを感じる事はなかったな。何時以来だろう。こんな気持ちになるなんて。
久し振りに愛おしいという感情が目を覚ましたような気がする。
俺は無意識にイリアを抱きしめていた。
「ふふふ。エターナが言うように、本当に嬉しくて、あたたかい気持ちになるのですね。私、心がポカポカです。こんな幸せな事があるのですね。」
嬉しい事を言ってくれるじゃないか。
俺達はお互いのぬくもりを堪能し、少し離れる。
「イリア……。」
「ヤマト……。」
そして、再び抱き合い、俺達は初めて唇を合わせた。
イリアの肩を抱き、ベンチに座ったまま少しの時間が過ぎた。
「幸せ過ぎて、少し怖いですね。」
「そうだな。確かに少し怖いな。」
二人でいると、自分が何を怖れていたのかおかしくなる。
「なあ、イリア。」
「はい?なんですか?ヤマト??」
「ずっと考えていた事なんだけど……俺って何歳くらいまで生きられるのかな?」
さっきまで、怖いと思っていた事がサラリと口から出た。不思議なものだ。
「……そうですね。それは私にも分かりません。でも、ヤマトが若い頃の体に戻っているという事は、普通の人間よりも長く生きられるようになっていると思いますよ。」
「……そうか。」
やっぱり、イリアにも分からないのか。
「ヤマトは、そんな事を悩んでいたのですか?」
「そんな事って……。」
「すみません。そんな事というのは言い過ぎたかもしれません。でも、何歳まで生きられるかなんて、私達、エルフにも分かりません。長命だと言っても、全てのエルフが1000歳まで生きられるのか?と言えばそうではないですから。それに、ヤマトは気が付きませんでしたか?」
「何をだ?」
「この世界は、子供の数も少ないですけど、お年寄りの方も少ないでしょう?」
あっ、確かにそれも思った。お年寄りの姿もあまり見ない。
「確かにあまり見ないよな。」
「そうです。エルフ自体が老化の遅い種族ではありますけど、その前に……老化する前に亡くなる方が多いのです。」
「亡くなるって……何でだ?」
「それは、色々とありますよ。事故で亡くなったり、ダンジョンで亡くなったり、野生のモンスターに襲われる事だってありますから。」
ああ、そうか。イリア達は何時も死と隣り合わせで生きてきたんだ。だから、あんまり寿命の事も考えないし、何時、死ぬか分からないから、その時に後悔しないように猪突猛進な性格なのかもな。
「でも、イリアは俺が先に居なくなっても寂しくないのか?怖くないのか?」
「それは、寂しいですし、怖いに決まっているじゃないですか!?そんなの嫌ですよ!?」
イリアは少し怒ったように言う。そして。
「誰もが、好きになった人、愛した人には、一分一秒でも自分より長く生きてもらいたい。そう思うのが普通です。ヤマトもそうじゃないんですか?」
確かにそうだ。イリア達には自分より長生きして欲しい。
「そうだな。」
「ヤマトが私より先にこの世から居なくなる。ヤマトが私の前から居なくなる。怖いに決まってます。……怖いです。考えるだけで、心臓が……締め付けられます。」
そう言い、イリアは悲し顔をし、自分の左胸の前で右手の拳を握り締める。しかし、次の瞬間、イリアの表現が一変した。
「でも!……怖いからと言って、ヤマトと一緒に歩いて行く事を、私は諦められません!諦められるくらいなら、私はヤマトをこの世の住人にしていない。私は……私は!!どんなに辛い事があったとしても、ヤマトと寄り添い歩いて行く道を選ぶ!どんなに辛い別れが待っていたとしてもヤマトと一緒に居る事を後悔しない……。私が……ヤマトと一緒に居る事、愛する事に後悔などしないのです。当たり前の事じゃないですか?」
そう言って最後は微笑んだイリアの笑顔はとても美しかった。
「……イリア。」
「それに……私、新しい夢が出来てしまいました。」
「夢?」
「はい。夢です。今までの夢は、ヤマトにもう一度、会う事。ヤマトと一緒に居られる事でした。でも……今は、いっぱい、い~~~~っぱい、夢が出来ました。ヤマトとの子供も欲しいですし、ヤマトとデートしたい。お店ももっと大きくしたいですし、混浴に入ってみるのもいいかもしれませんね。……。」
夢って……ほとんどやりたいことじゃないかよ……でも……、それがたまらなく愛おしかった。
「イリア……。」
俺はそう言い、真剣にイリアを見つめる。すると、俺が何をしたいのか分かったようで。
「えへへ。……ヤマト。」
イリアは照れくさそうに俺に顔を近づける。そして、お互いの唇が触れ合おうとしたその瞬間。俺とイリアの頭は止まった。
「……マスター、イリアばっかり、ずるい。」
「ハァ、ハァ。もう、ヤマト様とのファーストキスも終わっているので、私も我慢しないでいいですよね?」
ララとターニャさんだ。
ララは強引に俺の顔を、ターニャさんはイリアの顔を強引に自分達の方に向けて、その唇を奪い。
「も、もう、いいですよね?!何回やってもいいですよね?!一回も二回も同じですし。ハァ、ハァ、ハァ。三十年以上、私も待ったのです。大丈夫です。先の事は致しませんから。ハァハァハァハァ。」
ターニャさんはイリアをベンチから強奪していき。
「……グスン。主様。イリアやララだけずるいです。」
「ボクもヤマト君とイチャラブする~。」
イリアが居なくなった場所にエリは腰掛け、背後からアリシアが抱きついてきた。
どうやら、ターニャさんを含め、俺とイリア以外はベロンベロンに酔っ払っているようだ。
くそ!誰だ!こんなに酒を飲ませた挙げ句、ターニャさんにコーヒーを飲ませた犯人は!?
ララの手で首は動かない。
目で犯人を探す。
そこには、コーヒーカップと酒瓶を持った、イリアの両親がいた。
「うふふふ。上手くいったわね。あなた。」
「そうだね。上手くいき過ぎた感が否めないけどな。」
「そうね。でも、イリア達も嬉しそうだから、良いじゃない。うふふふ。」
「だな。あははは。」
何やら話している二人と目が合う。その目は実にイヤらしい目つきだった。そして、二人は不適に笑う。
やはり、犯人はあいつらか!
イリアがニコニコと隣に座った時から、怪しいと思ったんだ。最初、何か期待したように、ソワソワしてた感もあったいし、あいつら、何か吹き込んだな!
二人は、笑みを浮かべたまま、俺に手を振り、背を向けた。
あっ!クソ!!何か言わないと気が済まない。
そう思い、俺は動こうと片手を伸ばす。
「……主様。よそ見なんかいけません。次はわたくしの番です。」
そう言い、今度はエリが俺の顔を押さえ、自分の方を向かせ。
「ヤ、ヤマト!ぶわっぷ!!た、助けて!!」
「良いじゃないですか。良いじゃないですか~。イリアお嬢様。」
イリアは俺に助けを求めたが、ターニャさんに良いようにされていた。
こうして、グダグダと変な感じでアリシアの歓迎会は幕を閉じた。
まあ、イリアとじっくり話せたのは良かったのだろう。気にしていた、胸のつかえが取れたような気がした。
一歩、前に進んだような気がした。
第一部 完
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第二部が楽しみです(*´ω`*)
ありがとうございます。二部、お待ち下さい。ファンタジー大賞用に書く作品もよろしくお願いします(*^_^*)
何時もありがとうございます(*^▽^*)
ひとまずこれでおしまいかあ。まだ未回収の伏線もあるけどとりあえずめでたしめでたしですね。もし続きや新作が出たら読ませてもらうのでよろしくお願いします!
ありがとうございます。おっしゃる通り、伏線も回収していませんし、とりあえず、一部、完です。ファンタジー大賞用のが終わったら、二部、新しいお店がオープンする所くらいから始まります。ファンタジー大賞用の作品共々、その時はよろしくお願いしますm(__)m
何時もありがとうございます(*^▽^*)
神様もドッキリを仕込むんですね。
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どうなんでしょうかね。
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はい。この世界の神はドッキリをします。イレギュラーも神々の気まぐれもドッキリに近いのかもしれませんね。
さて、ヤマトは許してくれるのでしょうか?お楽しみに(^_^)ノ
何時もありがとうございます(*^▽^*)