ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ

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第三章︙聖国、地下帝国編

異形なる魔物 4 レオンSIDE

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地下迷宮四十九階層。

炎の最上位精霊と古代の魔獣ヒュドラが激戦を繰り広げる遥か下。

俺は全力で屍の道を疾駆していった。


下に降りれば降りるほど、増えていく魔物の死体。
もはや地面の色が見えないほど、死体と血で溢れかえった迷宮の中を一直線に走り抜けた。


幸いにも、ヒュドラはまともに迷宮攻略をする気は無かったらしい。
所々に空いている大きな穴に沿って進んで行けば、自ずと下へと降りられる。


「それだけだったら、よかったんだけど!!」

不味い事に、白い魔獣………あの魔法都市を襲った魔獣がチラホラ見え始めてきたことだ。
今はまだ数も少なく走りながら対処できるけど、下に降りれば降りるほど少しずつ数も増えている。

こっちは時間がないからなるべく戦うことは避けて降りていく。


後のことは考えない。今目の前のことだけを見据えて何をすればいいのか最適な行動を起こすことが俺の役目だ。


「でも、聖剣なんてどこにあるんだよ………」

皆目見当がつかないこの状況で、あるとしたら……

「最下層、それか隠し部屋……か?」


最下層ならまだいい。今は白い魔獣しかいないから迷宮自体が機能していない。
問題は隠し部屋。

こればかりはもう運に賭けるしかない。


俺は下を目指して降りていくと、一つの大きな落とし穴があった。
多分七十階層辺りの階層主の部屋だと思われるけど、勿論階層主は居なくて中央にポッカリと穴が空いている。

覗き込んでみるけど下が全く見えなくて、どこまでも続いていそうな穴だ。
縁が焦げていて無理矢理開けられた事がわかるその穴は、多分ヒュドラが魔法を使って強引にこじ開けたに違いない。

「………よし、今の俺なら出来るはず」


道中で拾った短剣を片手に、俺は穴へと飛び込んだ。

すぐに短剣を壁に突き立て落下威力を殺し、止まったらまた短剣を引き抜いて下へと飛び降りていく。
腕の負荷と衝撃が半端ないけど、俺一人の体重ならなんとでもなる。

段々と早く、少しずつ降りる幅を広げて俺は迷宮の下へと進んでいった。





暫く続けて、腕の感覚が無くなってきた頃。
第一の関門がやってきた。


心を無にしてひたすら腕を酷使している俺に、現実という存在が傍観してくれるわけもなく。

バキンッと。


もう何度目かわからない程岩壁に突き刺した短剣は、遂に見事に砕け散った。

「あ……」

物凄い速度で落下していく自分の身体をぼんやりと眺めながら、俺は冷静に周りを見渡した。
人ってのは、ここまで追い詰められると逆に焦ったり慌てたりする気力すら無くなるらしい。


それでも俺は諦めきれなくて踵を壁につけてなるべく威力を落とす方法に切り替える。
といっても申し訳程度の減速で、既にだいぶ加速してしまった俺の身体は見事に足に猛烈な負荷をかけながら落下していった。


「あれ……?なんか……白い?」

下の方に白く輝いている何かが見える。
俺は目を凝らすと、それは段々と大きくなっていった。

なにかわからないけど、あの色合いで岩みたいに硬いなんてあるはずかないだろう、うん。

俺は壁から足を離して真っ直ぐ白いなにかに飛び降りた。

ズボッと白い何かに突っ込んだ俺は、ブチブチと足元のの白いのを踏み潰しながら着地していく。

幸い骨折はしていないけど、足がじんじん痛む。


「って、うわ!!」


俺はすぐさま全力でその場からのけぞった。
どうやら俺がクッション代わりに使ったやつは白い魔獣………。そう、ダイキの言ってた『しろまりも』を踏み潰していたらしい。

ブチブチと踏み潰した感触が蘇りそうになったけど、素早く心の奥底に封印して取り敢えず目の前の魔獣を蹴散らしていく。

俺の腰に浸かるほど多い『しろまりも』。
でも不自然なことに俺がちょっと暴れるだけで後退していく。

こんだけ数がいて再生力もあるはずなのに、今目の前にいる魔獣は著しく弱っているような……


「あの山、なんだ?」


一際盛り上がってる『しろまりも』。まるで何かを封じ込めようと群がっているこいつらを蹴散らして、俺は中にあるものを見つけて身を見開いた。

「これが………聖剣?」


錆だらけでボロボロの長剣のそれは、今にも壊れそうなほど風化していて。

そしてその長剣を強く握り締める骸骨の人間に、辺り一面神聖な結界が張られていた。
骸骨になっても離さないその手に、骨にいくつもの傷跡が見える。
骨に傷が残るくらいだから、それは激戦を繰り広げられたことがうかがえた。

俺は結界の中に入るとボロボロになったバッグと、良く見えないけど細く細工されていたであろうペンダントが落ちていた。


錆だらけの剣に、ペンダント。
それでも真っ赤に輝くダイヤが嵌め込まれたそれは、歴史書に載る最も有名な伝説武器のひとつ。


「聖鎧ギルリア」

俺がペンダントを手にると、取り敢えず首にかけてみるけど、何も起きない。
そりゃそうか。

ダイキみたいに特別なやつならなんかあるかもしれないけど、俺だからな。『なんか』がある方が怖いね。

それで本題はこっち。

俺はボロボロの長剣を暫く見つめて、静かに手に取った。
剣の柄を掴もうとすると、骨がサラサラと砂状になって剣空手を離していくかのように崩れ去っていった。
まるで何かの役目を終えたかのように。


「これが伝説の聖剣……。こんなのでヒュドラを倒すなんて世界がひっくり返ってもできなさそうだけど……」

俺は刃に手を滑らせながらボソッと呟くと、間違って指先が切れた。

ツーっと垂れる血を見て服で拭おうとすると、俺の血がついた剣が急に光り始めた。

………まさかだけど人間の血で覚醒するとか、どんなヤバい魔剣だよと思わなくもないけど、俺はあまりの美しさに見惚れてしまった。
光の粒が収束して新品同様の剣になった聖剣は、まるで自我があるみたいに手の中で少し振動し震えていた。

「後はこれをフレイ様に渡せば…」

俺は剣を肩に担いで結界から出ようとすると、急に後ろに引っ張られた。



『おい、そなたが次代の契約者か?』

頭の中で急にガンガンと響き渡ったその声は、遠慮なんてなしに大声で俺の頭に直接語りかけてきた。

そう。俺の頭の中に直接語りかけてきた。


「………あ?」

バッと後ろを振り返るけど誰もいない。



『はぁ。少し待っておれ』


また頭の中に声が響き渡り、次の瞬間肩に担いでいた聖剣がひとりでに宙に浮き上がった。


『我は世界唯一の聖剣にして至高の武器。あらゆる悪を断ち切り正義のを齎す象徴である』

ピカッと一際光り輝き、現れたのは……


「………ちっちゃ」


幼い顔立ちをして、純白のローブを身に纏う。
背中に紋様が彫り込まれた翼がとても印象的に目に映った。
なにより極彩色の瞳には、周りの者に畏怖を抱かせるような、特別な存在感を醸し出している。



そう。目の前に現れたのは、小さな剣の『妖精』だった。






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いつも読んでくださりありがとうございます!

遂に襲来してきました、聖剣さん。
元々この聖剣さんの人物像というか設定には大きな葛藤が己の中でありまして。
構想は初期、つまり魔法都市の最初辺りでもうあったんですけど、最後のピースというか完成形?が物足りなくて、こういった登場にさせてもらいました。

これ以上言うとネタバレを口滑らせてしまいそうなのでチャックしておきます。


因みに一番登場人物の構成で悩んだのはぶっちぎりクロスです。

最後にファンタジー大賞に応募しました、皆様応援願い奉ります。
暑い中溶けそうになりながら更新してまいりますので、宜しくお願い致します



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