ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ

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第三章︙聖国、地下帝国編

異形なる魔獣3 レオンSIDE

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気づいた時には、辺りは静かになっていた。

シュルシュルと何匹もの蛇が這いずるような………ヒュドラが動く音がとても大きく聞こえてしまうほど、さっきの爆発などなかったかのように不自然な静けさが訪れていた。


「な……あ……」

俺は呆然と目の前に落ちていた腕輪を見つめながら、震える手を伸ばした。


………アレクさんが身に着けていた腕輪。
こんなところにあるわけがない。
ヒュドラから距離をとって俺の援護に回っていたんだから、こんな腕輪が落ちているはずがないんだ。

「………あぁ」


頭ではいくら否定しようとしても、目の前の現実が俺を離すまいと絡みついてくる。


所々欠けて傷だらけになった腕輪と。
そして、その周りに飛び散る石の欠片。


俺は馬鹿だ。
俺が調子に乗ってこんな無理な戦いをしたからいけなかったんだ。

アレクさんは早々に気づいていたに違いない。
それでも、俺を止めることはしなかった。
いつでも俺を助けられる距離に待機して、そして酷たらしく犠牲者になってしまったんだ。

俺が、正常な判断ができなかったせい。


最初から、全てをアレクさんに任せていれば、こんな被害を生むことも、こんな辛い思いをすることもなかったかもしれない。


「俺の……俺が……」

俺が弱いから。
俺は特別にはなれない。
いくら努力したところで、向こう側ダイキ達に到達することはできない。


目の前に迫りくるヒュドラに、武器もない俺はただ呆然と座り込むことしかできなかった。



「久し振りね」

俺を喰おうと巨大な口を一斉に開くヒュドラに、目にも止まらぬ速さで猛炎が叩きつけられた。

「あら、随分とくたびれたわね。私が修行をつけてやったのに、なに呆然としてるのよ。ほら、さっさと立ちなさい」


フレイ様は両手に炎を纏わせてヒュドラへと真っ直ぐ突撃していった。
ヒュドラはすぐに石化攻撃を仕掛け、目を鈍く光らせる。

フレイ様はすぐに身体を炎に変えて石化攻撃を避けると、掌をヒュドラの首元に当てた。


「取り敢えず、死になさい」


フレイ様の掌から高密度の魔力で練られた炎が爆散して、ヒュドラの一つの頭が首から砕け散った。

しかし、それ以上に早い再生力でヒュドラは瞬く間に傷を全て修復した。


「やっぱり、こんな簡単にはいかないわよねぇ」

面倒くさそうにぼやくフレイ様に、ようやく少し落ち着いた俺は慌てて瓦礫の後ろに隠れた。


「この魔物はねぇ。再生力が強すぎて私でも完全に息を止めることはできないわよ。私の最大出力をここで出したら迷宮が崩れちゃうもの」

ヒュドラと対峙したままフレイ様は俺に言い聞かせるように大きな声で言った。

「こいつの最大の強みは九つの首よ。そして、それが最大の弱点でもあるわ」

炎の剣で首のひとつを斬り飛ばしながら、淡々と大きな声で言い聞かせるように言葉を紡ぐ。


「だから私はこいつを倒せない。でも、別に倒すのは私じゃなくていい。あなたなら出来るはずよ」

「………そんなの」

思わず吐露した俺の言葉を遮るように、フレイ様は更に声を張り上げた。

「グラディウス。全てを断ち切り、勝利へと導く魔法のような剣があるでしょ。どうせ今この迷宮は機能していない。下なんてどうせ魔物を狩り尽くされてるわ」


………何を言いたいのか、何をやらせたいのかは分かる。
でも、そんなの俺には無理だ。


「できる、出来ないじゃないの。やらないと私もあなたも死ぬ。どうせ死ぬのなら……醜く抗って、どんな少ない可能性に賭けたって変わんないでしょ」

「俺には……無理です。仲間を守れなかった俺に……」


俺は目を伏せて静かに拳を握った。
ごめん、と小さく呟いた言葉は誰にも聞かれずに掻き消える。


「あー、もうやってらんないわ!!」


どれくらい経ったのか分からない。
フレイ様は突然キレ始めてヒュドラを滅多打ちにし始めた。


「あんたは無理無理言っててもね!!こちとら死ぬわけ?意味分かってる?あんたに賭けるって言ってんの!!剣のおつかい程度さっさと行きなさいよ!」

俺が驚いて目線を上げる。
口調がガラリと変わったフレイ様は、ヒュドラと魔法の攻防戦を繰り広げながら、ちらりと俺の方を振り向いた。


「戦士なら勝ち取りなさい」


俺は目を見開いて息を呑んだ。
仲間が死んでしまったから。それでも落ち込む暇なんてない。
一番悲しんでいるのはフレイ様だからこそ、あれだけ力強く言い切った。

フレイ様には勝利が見えている。
この戦いを勝ち取る気満々だ。

熱い。
このどうしようもない気持ちが。


俺はゆっくりと息を吐く。
余計な事は考えるな。ただ目の前の存在に勝つことだけを見据えればいい。



「とってくる」


俺は一言そう呟くと、戦闘によって発生した下の階層への穴を勢い良く飛び降りた。




--------------------

フレイSIDE


この目の前の魔獣を見るのは二度目。
一度目は二千年前の『大戦』の時。

当時は基本七属性の最上位精霊と精霊王が勢揃いしていた。
勿論相手は七大悪魔。

戦いは熾烈を極めた。
放たれた三匹の魔獣は、皮肉にも精霊と相性が最悪だった。

三匹どれもが精霊の広範囲殲滅攻撃に難なく耐えることができ、更にはこの目の前にいるヒュドラは攻撃されればされるほど強くなるという極悪仕様。

事前情報もなかった精霊側は、最初こそ圧倒していたものの段々と押され始めていった。



気付いたときには遅すぎたわ。
私の管轄する火の精霊達もヒュドラの強化された魔法によってその生を終えた。

私たちの攻撃が強すぎた。
それが仇となって、もう最上位精霊に互角以上の戦いが挑めてしまうほどの強さをヒュドラは手に入れてしまっていた。


あの時精霊王の規格外の強さがなければ私たち精霊は既に絶滅していたでしょうね。


今回は二度目。
私が全力を出せない上に、周りに味方はなし。
私の火の精霊達も地上に現れた魔獣の対応で精一杯。


それでも私の口元は楽しげに笑っていた。


この絶望的な状況の中でも、鮮烈に焼き付けられるあの瞳。

懐かしかったわ。あれ程までに鮮烈な輝きを持つ人間は。
だから、私はあの子に賭けることにした。
あの子ならきっとできる。


あの人の子孫であり、女神セレナーデの加護を受けた異例の存在。
あれ程までの瞳に映る輝きに、私は惚れた。
仲間を失い、それでもなお立ち上がるあの子に。


あの人にどこまでも似ているあの子なら、きっと。


「それまで、とことん付き合ってやるわよ」


こんな一度相まみえた雑魚、いくらでも食い止めてやるわ。
あの子が変わる、その時まで。



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いつも読んでくださりありがとうございます!
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