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選挙事務所はワールドワイドの深水に
11 マスカラコントラマスカラ
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「あのさ、なんで瑠夏がいるんだ?」
俺の脳のシワは引き伸ばされて使い物になっていない。非常に率直な言葉しかでなかった。
「こっちも言いたい言葉は一緒よ。まさか貢だったなんてね。掲示板で見た時もしかしてとは思ったけど。」
瑠夏が、ショートメッセージのやつだとは、まだ脳のシワは伸びっぱなしだ。
「コーヒーでも入れる?一応ここカフェなんだよ。」
前は、雀荘だったか。業種が変わったはずなのに胡散臭さは、増している。
「前の雀荘はどうしたん?」
摘発されないように、一旦潰したとかそんな回答が来るのをわかって聞いてやった。もうヤクも、点棒もここにはなくて、つまらない場所に感じた。
「潰したのは確かだけど、あなたが思っているほど、ネガティヴな理由じゃないよ。久々にヤる??」
ヤるってのは、何かプレイするの意味でも、ファックの意味でもなく、ドラッグのことだ。
「いったいどこに持ってるんだ。」
普通、仮にも代議士目指してるやつに勧めるかよ。瑠夏の考えを汲み取るのは無理に等しい。
「カフェって食材置けるからね。」
と言いつつキッチンから激臭を放つ缶詰を取り出す。そいつに刃物を当てて開くと、さらなる刺激臭とともにマリファナが出てきた。
「ソフトドラッグかよ。シケてんな。」
オランダ、特にアムステルダム在住が好きなやつだ。世界的に見ても、一番人気のブツなのは間違いないがその保存方法と、目視でわかる質の悪さが、久々のドラッグ使用を抑制する。
「日本人には、これでいいのよ。客質と客単価は落ちたけど、しょっぴかれる危険性は減ったんだよ。」
結局、日出づる国では、簡単に大麻をやり取りできない。伝統的な神事であっても、難しいと言えるだろう。店の、客の、品の質を極限に落としてやっとやっていけるような状況なのだ。そもそも違法なのだから当たり前なんだけど。コカインとかはまだしも、タバコとかより危険性の低いであろう大麻が、違法ってこと自体おかしいんじゃねえかとも思う。とにかくこんな劣悪なマリファナは、いただけない。俺は、さりげなく自分からヤクを遠ざけて本題へ踏み込むこととした。
「なんで瑠夏が政治に興味持ってんの?俺は、寝床が欲しいだけだけど。」
瑠夏はすぐに答える。迷いなく、一個しかない選択肢を躊躇なく選ぶ。
「これに決まってるでしょ。」
ルカは、その生臭過ぎる漬物と一緒に缶詰に入った乾燥大麻を指差す。
「私は、これを臭い飯から引き離すことが目的よ。」
なるほど、瑠夏はアジアのアムステルダムでも作ろうとしているわけか。とりわけ、俺にも利のある話なわけだ。なんてったって、我が身も元々大麻と共存していたのだから。
俺は、議員宿舎、瑠夏は大麻。俺が出馬して当確をつけることで利は一致する。
ただ、瑠夏の口車に乗せられたわけだけど、こんなモチベーションの陣営で勝てるのかは甚だ疑問だ。
「でもさ、大麻の解禁を謳ってどうやって議員になるんだよ。大麻なんてカルトチックだろ?一部の熱狂的なファンがついたとしても一人一票だ。」
たとえ、若年層を取り込む戦略を組んだとしても厳しくなるのに、ドラッグ解禁を大声で叫ぶこととなるとさらに厳しくなると思う。それぐらいに、日本人のドラッグへの嫌悪は、莫大なものだ。俺や、瑠夏みたいなドラッグ狂を除いて。
「そんなにドラッグ狂は少なくないよ。この理不尽な世の中なのよ。アルコールやニコチンでなんとかごまかしている隠れドラッガーだっていっぱいいる。アンチドラッグを差し引いてもプラスになるはずだわ。」
正直、瑠夏の主張は一理ある。理不尽な世の中ってやつだ。確かに、アルコールやニコチンでは物足りないのも実感している。但し、それが選挙で足しになるとは思えない。だって、ドラッグだぜ?
それでも俺は、従うほかない。瑠夏は俺のブレーンだから。軍師に従えない君主の未来なない。君主はアイコンに徹するべきだ。
「わかった。ドラッグ解禁を前面に出す。だけど、選挙で勝てるようにするのは瑠夏の持ち番だからな。」
俺は、責任分は持つふりして、責任はとらないと言っているようなことを、平気で言った。瑠夏の様子を伺うために言ったところもある。声帯を震わせる声は、いつも以上にぎこちなく不規則に往復運動を繰り返した。
「こっちもわかったわ。」
只の一言が、こちらの思惑まで全部を見抜かれた気がした。
「あなたのこと、代議士に仕立て上げるわ。そのかわりあなたも代議士らしくしなさいよ。」
ああ、やっぱり。見抜かれてる。楽してつかみ取ろうという魂胆は感じ取りやすいらしい。
代議士らしく、背筋を伸ばして、凛とした
表情を浮かべてみた。背筋をまっすぐにするだけなのに、理性に反して背筋は悲鳴をあげて痙攣していた。
引きこもりにドラッグ中毒。それが俺の自己紹介だ。背筋がやられるのもそのせいだ。そんな同類を頼りに、選挙を戦うと思うとなんだか陰鬱になってきた。それでも瑠夏の後ろ盾と、代議士になった後のことを比べると差し引きプラスになる。俺は、損得勘定で、国の代表のひとりを目指すわけだ。
ある意味健全な考え方だと自分でも思っている。そう、どんな現役代議士よりも、立候補者よりも健全だ。
「わかった。じゃあ、さっさと準備しようじゃないか。」
お頭の整理がついた。何事も一番負荷がかかるのは最初の動力だ。瑠夏が無理矢理でも俺の動力になった。あとは、駆け抜けるだけだ。
俺は、ふてぶてしく瑠夏に命じる。まさに代議士らしくしてみたわけで、それによって瑠夏の表情は、不満にも、満足にも見えるように変化した。
俺の脳のシワは引き伸ばされて使い物になっていない。非常に率直な言葉しかでなかった。
「こっちも言いたい言葉は一緒よ。まさか貢だったなんてね。掲示板で見た時もしかしてとは思ったけど。」
瑠夏が、ショートメッセージのやつだとは、まだ脳のシワは伸びっぱなしだ。
「コーヒーでも入れる?一応ここカフェなんだよ。」
前は、雀荘だったか。業種が変わったはずなのに胡散臭さは、増している。
「前の雀荘はどうしたん?」
摘発されないように、一旦潰したとかそんな回答が来るのをわかって聞いてやった。もうヤクも、点棒もここにはなくて、つまらない場所に感じた。
「潰したのは確かだけど、あなたが思っているほど、ネガティヴな理由じゃないよ。久々にヤる??」
ヤるってのは、何かプレイするの意味でも、ファックの意味でもなく、ドラッグのことだ。
「いったいどこに持ってるんだ。」
普通、仮にも代議士目指してるやつに勧めるかよ。瑠夏の考えを汲み取るのは無理に等しい。
「カフェって食材置けるからね。」
と言いつつキッチンから激臭を放つ缶詰を取り出す。そいつに刃物を当てて開くと、さらなる刺激臭とともにマリファナが出てきた。
「ソフトドラッグかよ。シケてんな。」
オランダ、特にアムステルダム在住が好きなやつだ。世界的に見ても、一番人気のブツなのは間違いないがその保存方法と、目視でわかる質の悪さが、久々のドラッグ使用を抑制する。
「日本人には、これでいいのよ。客質と客単価は落ちたけど、しょっぴかれる危険性は減ったんだよ。」
結局、日出づる国では、簡単に大麻をやり取りできない。伝統的な神事であっても、難しいと言えるだろう。店の、客の、品の質を極限に落としてやっとやっていけるような状況なのだ。そもそも違法なのだから当たり前なんだけど。コカインとかはまだしも、タバコとかより危険性の低いであろう大麻が、違法ってこと自体おかしいんじゃねえかとも思う。とにかくこんな劣悪なマリファナは、いただけない。俺は、さりげなく自分からヤクを遠ざけて本題へ踏み込むこととした。
「なんで瑠夏が政治に興味持ってんの?俺は、寝床が欲しいだけだけど。」
瑠夏はすぐに答える。迷いなく、一個しかない選択肢を躊躇なく選ぶ。
「これに決まってるでしょ。」
ルカは、その生臭過ぎる漬物と一緒に缶詰に入った乾燥大麻を指差す。
「私は、これを臭い飯から引き離すことが目的よ。」
なるほど、瑠夏はアジアのアムステルダムでも作ろうとしているわけか。とりわけ、俺にも利のある話なわけだ。なんてったって、我が身も元々大麻と共存していたのだから。
俺は、議員宿舎、瑠夏は大麻。俺が出馬して当確をつけることで利は一致する。
ただ、瑠夏の口車に乗せられたわけだけど、こんなモチベーションの陣営で勝てるのかは甚だ疑問だ。
「でもさ、大麻の解禁を謳ってどうやって議員になるんだよ。大麻なんてカルトチックだろ?一部の熱狂的なファンがついたとしても一人一票だ。」
たとえ、若年層を取り込む戦略を組んだとしても厳しくなるのに、ドラッグ解禁を大声で叫ぶこととなるとさらに厳しくなると思う。それぐらいに、日本人のドラッグへの嫌悪は、莫大なものだ。俺や、瑠夏みたいなドラッグ狂を除いて。
「そんなにドラッグ狂は少なくないよ。この理不尽な世の中なのよ。アルコールやニコチンでなんとかごまかしている隠れドラッガーだっていっぱいいる。アンチドラッグを差し引いてもプラスになるはずだわ。」
正直、瑠夏の主張は一理ある。理不尽な世の中ってやつだ。確かに、アルコールやニコチンでは物足りないのも実感している。但し、それが選挙で足しになるとは思えない。だって、ドラッグだぜ?
それでも俺は、従うほかない。瑠夏は俺のブレーンだから。軍師に従えない君主の未来なない。君主はアイコンに徹するべきだ。
「わかった。ドラッグ解禁を前面に出す。だけど、選挙で勝てるようにするのは瑠夏の持ち番だからな。」
俺は、責任分は持つふりして、責任はとらないと言っているようなことを、平気で言った。瑠夏の様子を伺うために言ったところもある。声帯を震わせる声は、いつも以上にぎこちなく不規則に往復運動を繰り返した。
「こっちもわかったわ。」
只の一言が、こちらの思惑まで全部を見抜かれた気がした。
「あなたのこと、代議士に仕立て上げるわ。そのかわりあなたも代議士らしくしなさいよ。」
ああ、やっぱり。見抜かれてる。楽してつかみ取ろうという魂胆は感じ取りやすいらしい。
代議士らしく、背筋を伸ばして、凛とした
表情を浮かべてみた。背筋をまっすぐにするだけなのに、理性に反して背筋は悲鳴をあげて痙攣していた。
引きこもりにドラッグ中毒。それが俺の自己紹介だ。背筋がやられるのもそのせいだ。そんな同類を頼りに、選挙を戦うと思うとなんだか陰鬱になってきた。それでも瑠夏の後ろ盾と、代議士になった後のことを比べると差し引きプラスになる。俺は、損得勘定で、国の代表のひとりを目指すわけだ。
ある意味健全な考え方だと自分でも思っている。そう、どんな現役代議士よりも、立候補者よりも健全だ。
「わかった。じゃあ、さっさと準備しようじゃないか。」
お頭の整理がついた。何事も一番負荷がかかるのは最初の動力だ。瑠夏が無理矢理でも俺の動力になった。あとは、駆け抜けるだけだ。
俺は、ふてぶてしく瑠夏に命じる。まさに代議士らしくしてみたわけで、それによって瑠夏の表情は、不満にも、満足にも見えるように変化した。
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