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動物病院は一大イベント
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3匹の猫たちの健康診断やワクチンは一大イベント。
2、3日前からさりげなく3個のそれぞれタイプの違うペットキャリーをその辺に置いておき、入って遊べる面白い玩具みたいに思わせておく。
3匹を同時にキャリーに納めるのは、本人(本猫?)たちの協力なしでは無理。
車に乗る時は助手席のフロアに1匹、席に1匹、後部座席に1匹。
乗る時も降りる時も、二度に分けるから引き離されて騒ぎ出す。
病院に着くと看護師さんが手伝ってくれることもある。
三にゃんのモネはいつまでもビビりの癖が治らないので、小さい筒形のボストンバッグのようなキャリーに入れていき、膝にのせて話しかけながら順番を待つ。
たまに、待合室で同じような多頭飼いの人が話しかけてくる。
「猫たちは仲がいいですか?」
「仲いいですよ。下の兄弟をもらってきたばかりの時は、上のお兄ちゃんとうちとけるまで大変でしたけど」
「うちは同居させて今、2か月なんですよ」
「まだまだですね。3か月くらいからやっと少しずつ慣れてくれます。その辺がスタートです」
言ってみれば、保護猫のママ友だ。
で、健康診断やワクチンが済んだら、帰って「おつかれちゅーる」。
これで終わり。
一大イベントと言っても、病気や怪我で行く病院に比べたら楽なものだ。
まだ弟たちが来る前、長にゃんのジョルジュが大怪我したことがあった。
あの時は本当に大変だった。
あれは7年前。愚かにも、まだ家から自由に外出させていた時の事。
よその猫とけんかになったらしく、耳の後ろをかなりざっくりやられて出血していた。
その時私は、さらに愚かなことに、ネットで調べて唯一猫にも使っていいと書いてあったマキロンを塗ってそれで済ませようとした。
実際、怪我は少しずつだが、地味に治っていくように見えた。
かさぶたが被った頃、かゆいのか、しきりに後ろ足で引っ掻く。
そして、かさぶたが取れて出血。
またかさぶたが被って引っ掻いて取れて。
そのうち膿が出るようになり、数日後。
人相が、いや、猫相が違う。何かおかしい。こんな顔じゃなかった。
頬が異様に膨れあがっていた。押しても痛がらない。
なんか、ぶにぶにしている。心配になって獣医へ連れて行った。
膿皮症と言われた。
猫の傷は、ふさがっても中で膿をもっていて、そこから細胞組織が腐っていくと恐ろしいことを聞かされた。
傷の治療をしてもらって帰るはずが、泊りがけで手術の段取りになった。
朝食を食べさせていたため、麻酔をするためには時間をおかなければならず、日帰り手術にはできなかったのだ。
帰ってから、自分でできることが何もないのでやみくもに掃除をした。
祈っているとどんどん怖い考えが浮かんでくる。
体を動かしていないと耐えられない。
そこでとにかく、帰ってきた時に歩き回りやすく飛び乗りやすく危険がないように整えておこうと思った。
何十年もの間、年末には必ず大掃除をしてきたが、あんなに掃除に集中したことはない。
家もきれいになり、黒いものが何もかもジョルジュに見え、手や足に何か触るとジョルジュだと思ってしまう症状が出始めた。
夜になるとパソコンの画面で、ジョルジュがうちに来てから撮りためた写真を午前1時まで全画面スライドショーで眺め続けた。
翌日、慣れない場所で手術に耐えたご褒美とお詫びを兼ねた七面鳥のテリーヌ入りの高級猫缶を買って、ピックアップしに行った。
病院でもエリザベスカラーをもらい、帰宅初日はそちらを着けて過ごさせていたが、翌日にははずし方のコツを覚えてしまったためアマゾンで買って取り替えた。
膿皮症。
怖い。
怪我をした時点で連れてきてくれればここまで大事にならなかったと獣医に言われた。
あれから7年。
いまだに手術跡の皮膚からは毛が生えない。
猫の病気と怪我に自己判断は禁物。
そして、健康診断やワクチンで文句を言うのは贅沢だと反省しきり。
2、3日前からさりげなく3個のそれぞれタイプの違うペットキャリーをその辺に置いておき、入って遊べる面白い玩具みたいに思わせておく。
3匹を同時にキャリーに納めるのは、本人(本猫?)たちの協力なしでは無理。
車に乗る時は助手席のフロアに1匹、席に1匹、後部座席に1匹。
乗る時も降りる時も、二度に分けるから引き離されて騒ぎ出す。
病院に着くと看護師さんが手伝ってくれることもある。
三にゃんのモネはいつまでもビビりの癖が治らないので、小さい筒形のボストンバッグのようなキャリーに入れていき、膝にのせて話しかけながら順番を待つ。
たまに、待合室で同じような多頭飼いの人が話しかけてくる。
「猫たちは仲がいいですか?」
「仲いいですよ。下の兄弟をもらってきたばかりの時は、上のお兄ちゃんとうちとけるまで大変でしたけど」
「うちは同居させて今、2か月なんですよ」
「まだまだですね。3か月くらいからやっと少しずつ慣れてくれます。その辺がスタートです」
言ってみれば、保護猫のママ友だ。
で、健康診断やワクチンが済んだら、帰って「おつかれちゅーる」。
これで終わり。
一大イベントと言っても、病気や怪我で行く病院に比べたら楽なものだ。
まだ弟たちが来る前、長にゃんのジョルジュが大怪我したことがあった。
あの時は本当に大変だった。
あれは7年前。愚かにも、まだ家から自由に外出させていた時の事。
よその猫とけんかになったらしく、耳の後ろをかなりざっくりやられて出血していた。
その時私は、さらに愚かなことに、ネットで調べて唯一猫にも使っていいと書いてあったマキロンを塗ってそれで済ませようとした。
実際、怪我は少しずつだが、地味に治っていくように見えた。
かさぶたが被った頃、かゆいのか、しきりに後ろ足で引っ掻く。
そして、かさぶたが取れて出血。
またかさぶたが被って引っ掻いて取れて。
そのうち膿が出るようになり、数日後。
人相が、いや、猫相が違う。何かおかしい。こんな顔じゃなかった。
頬が異様に膨れあがっていた。押しても痛がらない。
なんか、ぶにぶにしている。心配になって獣医へ連れて行った。
膿皮症と言われた。
猫の傷は、ふさがっても中で膿をもっていて、そこから細胞組織が腐っていくと恐ろしいことを聞かされた。
傷の治療をしてもらって帰るはずが、泊りがけで手術の段取りになった。
朝食を食べさせていたため、麻酔をするためには時間をおかなければならず、日帰り手術にはできなかったのだ。
帰ってから、自分でできることが何もないのでやみくもに掃除をした。
祈っているとどんどん怖い考えが浮かんでくる。
体を動かしていないと耐えられない。
そこでとにかく、帰ってきた時に歩き回りやすく飛び乗りやすく危険がないように整えておこうと思った。
何十年もの間、年末には必ず大掃除をしてきたが、あんなに掃除に集中したことはない。
家もきれいになり、黒いものが何もかもジョルジュに見え、手や足に何か触るとジョルジュだと思ってしまう症状が出始めた。
夜になるとパソコンの画面で、ジョルジュがうちに来てから撮りためた写真を午前1時まで全画面スライドショーで眺め続けた。
翌日、慣れない場所で手術に耐えたご褒美とお詫びを兼ねた七面鳥のテリーヌ入りの高級猫缶を買って、ピックアップしに行った。
病院でもエリザベスカラーをもらい、帰宅初日はそちらを着けて過ごさせていたが、翌日にははずし方のコツを覚えてしまったためアマゾンで買って取り替えた。
膿皮症。
怖い。
怪我をした時点で連れてきてくれればここまで大事にならなかったと獣医に言われた。
あれから7年。
いまだに手術跡の皮膚からは毛が生えない。
猫の病気と怪我に自己判断は禁物。
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