虹の橋 封鎖できません

瑠俱院 阿修羅

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ボロ城と猫城主

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神様がほとんど全ての物と生き物を創り7日目に休息し、リフレッシュした状態で8日目に創った生き物が猫だと私は信じている。
可愛いから何でも許すかと言ったら、ほぼその通り。
悪気さえなければ基本的に何をしてもいい。それが猫の特権だ。
「基本的に」の概要は、自分が危なくなったり健康を害する結果になったりしなければということ。
だから、階段を降りようとして片足が空中にある飼い主の脚にまとわりつくのは猫の自由。
猫側の主張: いやなら不安定な二足歩行なんかやめればいい。
家の中を歩く飼い主についてまわる子もいる。
ダルシム並みの華麗なスライディングで人間の踏みおろす足の下に滑り込んだ猫が前足を踏まれてギャーッと鳴いた場合、一〇対ゼロで人間側の過失責任になる。
そういう場合たいてい、撫でたら許してもらえるが、猫殿さまにちゅーるの献上が必要になる場合もある。
飼い主の邪魔をするのは、愛情表現。
これは光栄に思わなければならない。
開いた本の上、パソコンのキーボードの上。
飼い主が向き合っているあらゆるものの上を、通ったりその場に留まったり。
本はページが折れ曲がり、あるいはどこを読んでいたかわからなくなり、パソコンのディスプレイには怪しい暗号が表示され、あるいはカギかっこが30個くらい並ぶこともある。
束ねた新聞や雑誌を紐でくくろうとしているのにその上にのられて、猫ごとくくるかどいてくれるのを待つしかない状態にされるのもしょっちゅう。
衣替えをしていてタンスかコンテナのどちらかに隙間ができたら、それは猫にとっては自分が入るためのスペース。
もはや、飼い主の「主」の字は人間として猫殿下たちを守る立場上の便宜的なものに過ぎなくなる。
猫様は城主。飼い主は癒しの庇護のもとに暮らす臣下。
猫様の横暴は飼い主の邪魔だけに限らない。
猫にとって可動範囲にある物は全て障害物か玩具。
うかつに発泡スチロールを片付けずに置いておくと、咬みちぎりまくられて一面雪が降った後のようになる。
2階のコンクリート通路に人間の転倒事故防止にと敷いたジョイントマット
は、よほど爪のひっかかりがいいのか爪研ぎされすぎて平面の見えない削りカスの山になっている。
猫にとって入れる隙間は探検ポイント。
収納スペースに入ってしまうと、私が無計画に物を入れたせいで意図せぬ魔境
ラビリンスと化していて、自分で出てくるまで手が出せない。そして、自分で出てきた時は使用済みモップのようになっている。
開いた箱、紙袋、コンテナ、タンスの引き出しと猫たちはいろんな場所に入る。
米びつにまだ米が入っているのに新しく買ってきてしまい、段ボール箱に入れて中身がわかるようにフタを開けておいたことがあった。
あっ、箱だ!とルネが飛び込み、ん?僕より先に何かが入っているぞ、というお顔。
そして、爪とぎを始める。箱の外まで勢いよく飛び散る米。
爪とぎライスシャワー。
何かお困りごとでも?という顔でこちらを見ているルネ。
固まる飼い主。
その時、私は心に誓った。米は家にあるかないか確認してから買うこと。
そして、買った米を段ボール箱に入れたらフタをして「米」と書くことを。
猫はいろんなところで寝る。
猫にとって、自分がベッドと決めたところがベッド。
おしゃれ着洗いを終えてたたんでかごに入れた服の上で寝るのは、ひとえに寝心地がいいからで、洗濯物が毛だらけになるのが嫌ならそこに置かなければ
いいだけの事。
夏場の猫は温度の低い床に、なるべく多くの体表面積を接して寝る。
あっちにべたころりん。
こっちにべたころりん。
あんこの分量がちょっとずつ違うおはぎのようなモノクロ猫たちが、点々と落ちている。
何か手に持って運んでいる場合、そこはもはや猫の地雷原。
ルネのしっぽを間違って踏んだら「みぎゃお!」と鳴いて反射的に咬む。
モネの場合、通り過ぎる足を玩具だと思って捕縛の為に爪を立ててくる。
なので、視野の端に猫らしきものを認めたら遠回りをすることにしている。
この前うちの猫たちはさらにその難度を上げてくれた。
2階にリビングがありダイニングも兼ねている。
いつも一回分の食事が一そろい載ったトレーを階段で上へ運ぶ。
階段は、段を見ずに長年の勘だけで足を運ぶ。
猫飼いなら誰でも知っていることだが、猫は意外なくらい胴が長い。
中段あたりに猫が長々と寝そべっている階段。
もはやトライアル競技。
攻略法は、ルネの尻尾があるあたりのわずかな水平のスペースにつま先立ちすること。そこにつま先を降ろそうとしたら尻尾がパタッと動き、慌てて着地点を変えたら階段の、水平と垂直にまたがった地点に降りてグキッ。
痛かったけど足の捻挫には至らなかった。
踏まず、落ちず、捻らず。
自分の根性と身体能力を自分でほめたい。
次の尻尾の動きで体勢を立て直しほっとして登り切ろうとしたら最上段にジョルジュが。
「そういうの、いいから。ホラー映画で一件落着に見せかけてもう一波乱あるとか、そんなサービス精神要らないから」
そう言ったら、どいてくれた。
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