虹の橋 封鎖できません

瑠俱院 阿修羅

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三猫三様

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毎朝、モネの、耳元で繰り返す大音量の鳴き声で起こされる。
こういう時は早く靴下を穿いてしまわないと、布団をはぐったとたん足を前脚で抱え込んで後ろ足で猫キックされる。
猫キックはケンカや模擬ケンカのじゃれ合いなどで攻撃として行われるもの。
そう思っていたが、モネの場合、これが甘えの表現のようだ。
痛いからと咄嗟に引っ込めると引っかき傷になる。
今朝はなんとか、爪をひっかけられる前に素早く避けることができた。
同じ環境で過ごしている猫、しかも兄弟でも、猫によってそれぞれ甘え方に個性がある。
ルネは私がちょっと腰を降ろせば膝の上に来たがる。
移動するとついて来て目の前にごろんと横たわるので、踏みそうで危ない。
頭突きで押してきてその勢いのままごろんということもある。
撫でているとお尻が少しずつ上がっていくのもこの子だけの特徴。
そして時期によっては、どれだけスリッカーブラシを掛けても、撫でるたびに大量の毛が空中に舞う。
3匹いるのでマメに掛けておかないと毛玉を飲み込みすぎて起こる毛球症が怖いし、飼い主も咽喉が痛くなったり咳き込んだりする。
猫の衣替えはワイルドだ。
モネはママには甘えていても人が来ると逃げて隠れ、完全にいなくなるまでどこかに潜んでいる。
ルネは好奇心を持って知らない人を見つめる。
ジョルジュは知らない人にすり寄っていく。
膝でくつろぎきってほとんどニャン体動物と化している老猫ジョルジュを撫でながらくつろいでボーッと『ダウントンアビー』を観ていた時の事。
突然、立ち上がるジョルジュ。
これは世に言う猫の第六感で、天変地異の前触れかと身構える飼い主。
膝から飛び降りるジョルジュ。
代わりに飛び乗るルネ。
弟が来たから膝上特等席を譲ってあげたということらしい。
でも、なぜ。
優先席だったら一番の高齢猫はジョルジュなのだが。
考えてみたらジョルジュは家に来た時からずっと優しい。
「シャー」と言うのを聞いたことがない。弟が来たら膝上特等席を譲ってくれる優しいお兄ちゃん猫なのだ。
おやつも弟が欲しがって皿に近づいてきたら、譲ってやって毛づくろいしてあげることもある。
一番年上のジョルジュは兄貴肌でもあり、一番の甘えん坊のような気がする。
真正面から顔を近づけると下の兄弟2匹は目をそらして逃げるが、ジョルジュは逃げない。くっつきそうなところまでいったら鼻を舐めてくる。
すり寄ったり前脚をかけてきたりするのもジョルジュ。
眠っていても、顔を近づけるとゴロゴロのどを鳴らすし、近寄っただけで鳴らすことがある。
電気をつけ忘れていた暗い部屋に入って、中央の電灯の紐を引っ張ろうとしたら足元からゴロゴロ音が聞こえたことあった。おかげでジョルジュがいることに気づいて踏まずに済んだ。
ゴロゴロ甘えモーター音が「踏み間違い防止」の警告音になることもある。





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