虹の橋 封鎖できません

瑠俱院 阿修羅

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殿の城抜け物語

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ドアの開閉は素早く。
これが我が家の鉄則だ。
まだジョルジュだけが家にいた頃は猫の知識が浅く、猫は自由に外を歩き回らせて本人の気が向いたら家に入れるものだと思っていた。
自由に歩き回らせていたらある日行方不明になり、4日くらい捜し回っていたら近所の人が、空き地に放置されているJRのコンテナから猫の声がすると教えてくれた。
無事に救出できたからよかったけど、猫を閉じ込めて後はどうなってもいいと考える人間がいることがわかって怖くなり、それからはリードをつけての外出になった。
猫の外出は楽しい遊びではなく縄張りのパトロール。
当時の私の役目はさしずめ、パトロール隊員の警護といったところか。
外で草を食べるところを見ているとこれは必要なものなのかもしれないと思ったし、外の世界を知っている猫を外界から遮断してしまうとストレスになると何かで読んだので、しばらく続けた。
その後、猫の知識を蓄え愛玩動物飼養管理士の資格を取り、猫は家の中にいさせることが長生きの秘訣だとわかった。
外にはノミその他の寄生虫、猫同士でうつる病原菌、そして危険運転の車もいる。
後はそれをジョルジュにわかってもらう事だった。
これがとにかく難しい。
私が外に続くドアに近づくと一緒に来て出ようとする。
開くと隙を見て脱走。
夏場などは窓の開け方にも工夫しないと窓からも出てしまう。
簡単に捕まることはまれで、たいていは持久戦になる。
呼んでも来ない。
動物の習性上後ろから走ると必ず走って逃げるので、ゆっくり近づくしかない。
まだ外にいたい時に飼い主が近づくと、人の家の敷地や畑に入る。
猫には許されるが、人間は不法侵入になる。
だから、それ以上追跡できないことを経験で学んだようだ。
外に飽きた頃を見計らってマタタビを持って少しずつ近づき、「ダンソン」の要領で捕まえるのがセオリー。
ルネとモネはもともと家の中が全世界だから、連れ戻すのも楽だ。
間違えて外に出ると怯えて家の周辺に隠れている。
遠くへは行かないのでそれはいいのだが、最初の頃は怯えてパニックになっているのか、ママだとわからず逃げ回って大変だった。
名前を呼んでいると近所の人が心配して出てくることがあり、知らない人が加わるともう完全にアウト。
その後、数時間かかる。
たどり着いた猫脱走防止策はドア前のペットゲートの設置。
人間がまたぎこせる高さが限界なので引き続き「ドアの開閉は素早く」が鉄則。
毎回ひっかかってこけそうになるが、今のところ他に有効な手段がない。
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