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気がつくと、天美寿はベッドの上に寝かされていた。
ずっと同じ姿勢でいた時の感じで、体のあちこちが痛い。
手と足が動くのを確かめてみた。
それから、翼を動かそうとして、自分で自分がおかしくなった。
天美寿が一人笑いをしていると、ドアが開いてママが入ってきた。
「天美寿」
ママ、と呼びかけてみようとしたが、涙でつまって声が出ない。
「どうしよう。こんな大切なことが何の前ぶれもなく起こるなんて。いつもと同じ朝だったのよ。何の準備もしていない。今日はまた、なんて日だろう、ああ、神様。天美寿。戻ってきてくれたのね」
天美寿は、駆けよってきてベッドの横に膝をついたママの手をしっかり握りしめた。
「阿幌に会ったよ。背の高い、すてきな男の人になってた。ママにも見せたかった。ウサギっ子がアシスタントなの。子供たちみんなを幸せにするためにできた、遠い宇宙の果ての島で暮らしてた」
「そうなの。天美寿はずっと、誰とも遊べなくて一人っきりで眠ったままでかわいそうだって、パパとよく話してたのよ。でも、楽しい夢をみていたのね。よかった」
さわぎを聞きつけたパパが部屋に入ってきて、ほ、ほお、と言ったきり、笑いが顔に貼りついた置き物みたいになってしまった。
あんまり感激して、先の言葉が出てこないのだと、すぐにわかった。
パパは前からそうだったから。
「天美寿はね、遠いところまで旅してきたんですって」
ママが言った。
「ただいま、パパ」
「おかえり」
パパはそれだけ言うと部屋を出て、そそくさとドアを閉めた。
ひとに見られる前に涙をふきに行ったな、と天美寿は思った。
だって、前からパパはそうだったから。
「ああ、そうだ。びっくりして、嬉しくてすっかり忘れてた。天美寿の目が覚めたこと、お医者様に知らせなくちゃ。すぐに戻ってくるからね。どこにもいなくなったりしないでね」
そう言いおいて、まるで、しっかり見ておかないと消えてしまうみたいに、何度も天美寿をふりかえりながら、ママは部屋を出て行った。
天美寿はまた、一人になった。
天美寿は淡いミントグリーンの天井に金糸のような細い糸で描かれた星座のもようを見ながら、ムーン・ラのことを友だちにどんなふうに話そうかと考えてみた。
みんなきっと、それをママと同じように、長い眠りの中で天美寿がみた夢だと思うだろう。
自分でも、手の中に〈銀さじの葉〉の感覚がなければ、夢だと思ったかもしれない。天美寿はそっと、〈銀さじの葉〉を窓からの光にかざしてみた。
葉脈がうっすらと銀色に光っている。
天美寿は今までのことを誰にも話さず、イクテュースになった阿幌やコネホやケンタウルスペガサスやメデューサスフィンクスを、絵に描いて残すことに決めた。
いつか生まれてくる子供にも、その子供にも絵を受け継いでもらって、地球がムーン・ラの月が見たとおりの、そして、『月のしずくの塔』の水の神子と従者たちが信じたとおりの『約束の天体』になるのを、絵の中から見守ってもらうのだ。
イクテュースとイシュアクアは、同じキャンバスに描いてあげると決めた。
窓の外には昼間の月が、欠けた輪の形にうっすらと浮かんでいた。
まるで、さっきまでいた不思議な世界への入口のように。
ずっと同じ姿勢でいた時の感じで、体のあちこちが痛い。
手と足が動くのを確かめてみた。
それから、翼を動かそうとして、自分で自分がおかしくなった。
天美寿が一人笑いをしていると、ドアが開いてママが入ってきた。
「天美寿」
ママ、と呼びかけてみようとしたが、涙でつまって声が出ない。
「どうしよう。こんな大切なことが何の前ぶれもなく起こるなんて。いつもと同じ朝だったのよ。何の準備もしていない。今日はまた、なんて日だろう、ああ、神様。天美寿。戻ってきてくれたのね」
天美寿は、駆けよってきてベッドの横に膝をついたママの手をしっかり握りしめた。
「阿幌に会ったよ。背の高い、すてきな男の人になってた。ママにも見せたかった。ウサギっ子がアシスタントなの。子供たちみんなを幸せにするためにできた、遠い宇宙の果ての島で暮らしてた」
「そうなの。天美寿はずっと、誰とも遊べなくて一人っきりで眠ったままでかわいそうだって、パパとよく話してたのよ。でも、楽しい夢をみていたのね。よかった」
さわぎを聞きつけたパパが部屋に入ってきて、ほ、ほお、と言ったきり、笑いが顔に貼りついた置き物みたいになってしまった。
あんまり感激して、先の言葉が出てこないのだと、すぐにわかった。
パパは前からそうだったから。
「天美寿はね、遠いところまで旅してきたんですって」
ママが言った。
「ただいま、パパ」
「おかえり」
パパはそれだけ言うと部屋を出て、そそくさとドアを閉めた。
ひとに見られる前に涙をふきに行ったな、と天美寿は思った。
だって、前からパパはそうだったから。
「ああ、そうだ。びっくりして、嬉しくてすっかり忘れてた。天美寿の目が覚めたこと、お医者様に知らせなくちゃ。すぐに戻ってくるからね。どこにもいなくなったりしないでね」
そう言いおいて、まるで、しっかり見ておかないと消えてしまうみたいに、何度も天美寿をふりかえりながら、ママは部屋を出て行った。
天美寿はまた、一人になった。
天美寿は淡いミントグリーンの天井に金糸のような細い糸で描かれた星座のもようを見ながら、ムーン・ラのことを友だちにどんなふうに話そうかと考えてみた。
みんなきっと、それをママと同じように、長い眠りの中で天美寿がみた夢だと思うだろう。
自分でも、手の中に〈銀さじの葉〉の感覚がなければ、夢だと思ったかもしれない。天美寿はそっと、〈銀さじの葉〉を窓からの光にかざしてみた。
葉脈がうっすらと銀色に光っている。
天美寿は今までのことを誰にも話さず、イクテュースになった阿幌やコネホやケンタウルスペガサスやメデューサスフィンクスを、絵に描いて残すことに決めた。
いつか生まれてくる子供にも、その子供にも絵を受け継いでもらって、地球がムーン・ラの月が見たとおりの、そして、『月のしずくの塔』の水の神子と従者たちが信じたとおりの『約束の天体』になるのを、絵の中から見守ってもらうのだ。
イクテュースとイシュアクアは、同じキャンバスに描いてあげると決めた。
窓の外には昼間の月が、欠けた輪の形にうっすらと浮かんでいた。
まるで、さっきまでいた不思議な世界への入口のように。
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